マンションとアパートは何が違うのか
何気ない会話の中から「マンションとアパートって何が違うの?」と質問されました。アパートは賃貸でマンションは購入すもの?いえいえマンションにも賃貸はあります。アパートは小規模でマンションは大規模?いえいえマンションにも6戸ほどの小規模物件もあります。ではアパートとマンションの違いは何でしょうか。実は違うのは名前だけで、この2つには区別がないのが正解でなんです。
初期のマンションの名前は
日本にマンションができはじめた頃は、さまざまな名前がついていました。1926年に同潤会が建てた賃貸マンションは「中ノ郷アパートメント」でした。同潤会は以後も「アパートメント」の名前を使い続けます。また1953年に東京都が分譲したマンションは「宮益坂アパートメント」でした。アパートメントは英語のapartmentの日本語読みで、集合住宅を意味します。
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日本初の民間分譲マンションは「四谷コーポラス」です。コーポラスは共同住宅を直訳したcorporate houseから作られた言葉で、今でも「コーポ」と略して使われています。
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1960年代から70年代にかけて、黒川建設が建てたマンションは「シャトー三田」以降、シャトーシリーズとして人気でした。シャトーはフランス語のchâteauが語源で、王侯貴族の住まいや田舎の大邸宅を意味します。またフランスのボルドーでシャトーと言えば、ワインのブドウ農園を指します。
1960年代から始まったビラシリーズと呼ばれるマンションは、「ビラ・ビアンカ」が初のデザイナーズマンションと言われています。ビラは英語のvillaの意味で、上流階級のカントリーハウスの意味です。現在は別荘の意味でも使われます。
現在でもヴィンテージマンションとして人気が高い秀和レジデンスシリーズは、ほとんどの物件にレジデンスがついています。英語のResidenceからきた言葉で、邸宅や官邸を意味します。特に立派な住宅を表す言葉です。
このように日本のマンションにはさまざまな言葉が使われていました。しかしいつ頃からか、マンションという名前が定着していきます。これには諸説あるようで、大京のライオンズマンションシリーズが大ヒットしたからマンションと呼ぶようになったという人もいれば、それ以前からマンションと呼んでいたという人もいて、私も調べきれませんでした。
日本のマンションと海外のマンションの違い
マンションというのは英語のmansionから来た和製英語です。大邸宅という意味で、集合住宅という意味はありません。mansionをGoogle画像検索すると、以下のような写真が出てきます。大金持ちが住む大邸宅ですね。
日本語のマンションにあたる英語はapartmentかcondominiumになります。日本語では「アパート」「コンドミニアム」と書かれたりしますね。condominiumはcondoと略して話される事が多く「私はマンションに住んでいます」を英語で言うと”I live in a condo”になります。もし”I live in a mansion”と言うと、どんな金持ちかと驚かれてしまいます。
イギリスで集合住宅はflatと言うのが一般的です。このapartmentやflatは部屋を示すので、建物全体を言う際にはapartment buildingやblock of flatsと言ったりします。
なぜ日本では集合住宅にアパート以外の多くの名前を採用したのかという理由については、集合住宅は分譲よりも賃貸の方が先に広まったのが原因と言われています。安い家賃の集合住宅がアパートと呼ばれるようになったため、高価な分譲住宅にアパートはイメージが悪いと思われたようです。
マンションとアパートの違い
マンションとアパートの違いはありません。どちらも公的な文書には集合住宅と書かれています。マンション本来の意味は大邸宅や豪邸を意味する言葉で、集合住宅とはなんら関係がないのですが、日本ではマンションと呼ぶことが一般的になっています。
1960年代から日本では、民間業者が分譲マンションの販売を行うようになります。その時の最大のライバルは、革新的な設備や間取りを取り入れ、日本の集合住宅をリードする日本住宅公団でした。
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民間業者は日本住宅公団を上回る高級性を打ち出し、その過程で豪華さを意識するネーミングが採用されるようになります。そしていつしか大邸宅を意味するマンションが、分譲集合住宅の代名詞となったのです。日本の集合住宅の歴史は100年を超えますが、マンションという呼称にも歴史を感じてしまいます。