なぜ理事会と住民の対立は生まれるのか /理事になりたくない人が増える理由

マンションの総会で理事会と住民の対立が起こったり、総会でなくとも普段から理事会と住民が対立することを時々見かけます。これは理事会や住民が横暴な態度をとったり、自分勝手な主張を押し付けようとする際にも発生しますが、両者の想いがすれ違っているために起こる場合もあります。これは残念でもったいないことです。そこで今回は私が何度も見てきた、両者の想いがすれ違って対立に発展した例を見ていきたいと思います。

マンション理事会は時間がない

多くのマンションでは理事会は月に1回程度のペースで開催されています。月に1回というのは決して少ない回数ではなく、マンションによっては2ヶ月に1回なんてことも珍しくありません。ほとんどの理事が仕事をしていて家庭もあるのですから、休みの日を理事会に使うのは大変なことなのです。人によっては休みの日は家族サービスに徹しなくてはならないこともありますし、休みの日も仕事が入ることが珍しくないなんて人も多いでしょう。

誰もが余裕を持って理事会に参加できるわけではなく、理事会に参加するために開催時間を調整したり家族に我慢をしてもらったり、仕事を早めに切り上げたりして参加している理事が多くいるのです。そんな状態に加えて、理事会は単にその日のその時間に参加すれば良いというわけではありません。理事会で宿題が出てしまうこともありますし、理事会の日以外でも何かとやることが発生する場合があります。そもそもほとんどの理事はマンション管理に詳しくない人が多いので、管理会社に手伝ってもらっているとはいえ何かと勉強しなくてはならなくなったり、決断に時間がかかることがあります。

マンションによって状況はかなり違いますが、問題が多いマンションではやることが多くなりがちです。以前は管理会社がなんでもやってくれていましたが、最近は管理会社が契約範囲外のことは断ることが増えています。トラブルが多いマンションほど理事の負担が増えやすい傾向にあるといえます。

理事会と住民の対立事例

以下に理事会と住民の想いがすれ違い、対立に発展してしまった実例を2つ挙げていきます。

ケース1:マンションロータリーのオブジェの撤去

一部の住民から、マンションのエントランス前にあるロータリーの中心に設置してあるオブジェを撤去して欲しいという要望がありました。築20年を過ぎてみすぼらしさが目立つうえに、マンションに入ってくる車がロータリーにいる車から見えにくいというのが理由でした。しかしこのマンションではロータリーで自動車を使う人が少なかったので、この意見にピンとくる人は少数派だったようです。

理事会としてはこの問題を無視するつもりは全くなかったのですが、この時もっとも早急に取り組まなくてはならなかったのは設備漏水事故でした。補償問題で事故発生源になった部屋と被害を受けた下階の住民がトラブルになったうえ、排水管の老朽化が原因とされていたため調査と補修工事を全面的に行う必要があったのです。理事会はこの問題にほとんどの時間をとられ、なんとか補修工事に漕ぎ着いたところで役員の任期が終了になりました。

1年間が過ぎてロータリーのオブジェ撤去の議論さえ行われなかったため、総会ではオブジェの撤去を求める意見が出されました。理事会は前向きに検討することを約束したのですが、今度は機械式駐車場のトラブルが相次ぎます。結局、この年の理事会もオブジェの議論をすることなく総会を迎えることになり、一部の住民から不満の声が噴出することになりました。理事らは時間がない中で優先課題をこなすのに精一杯で、あれもこれも全部できるわけではないと憤っています。

ケース2:マンション内の清掃

多くの住民からマンション内の清掃が行き届いておらず、理事長から管理会社に指導して欲しいという手紙が管理組合の郵便受けに届いていました。確かに清掃が行き届いていないのは理事らの目にも明らかですが、これには事情がありました。昨年、管理会社から人件費の高騰を理由に管理費の値上げ要求がありました。しかし住民説明会で多くの住民が値上げに反対し、管理会社は値上げを呑んでもらえないなら管理を継続できないと言って紛糾しました。

板挟みになった理事会は管理会社と話し合いを重ね、清掃の範囲と頻度を大幅に減らすことで値上げなしでの契約の更新を実現しました。総会では清掃範囲と頻度が大幅に減ることを住民に説明しましたが、管理費の値上げがないなら問題ないとして議案は承認されています。しかし総会から半年ぐらいが過ぎると、マンション内のあちこちが汚いとクレームが出るようになったのです。理事会はこれまでの経緯を踏まえ、住民の合意で清掃を減らしたことを説明しますが、クレームを入れる人の多くは総会に出席しておらず委任状を提出した人でした。また一部には総会に出席した人の中からも「ここまで汚くなるとは思わなかった」とクレームが出ていました。

そして理事会が管理会社の言いなりになって安易な契約を結ぶから、掃除すらまともにできないマンションになってしまったという不満が噴出しています。これでは資産価値が落ちてしまうと怒っている人もいて、これには理事達も憤慨して険悪な雰囲気になってしまいました。

何が原因なのか

理事会と住民の対立と言っても人同士の感情のもつれですから、その原因は言い方や聞く時の態度なども含めると原因は多岐に渡ります。しかし最も大きな原因は、住民と理事の意思疎通にあると思います。多くの住民は理事が忙しい中で総会の議案をまとめたり、多くの問題を処理していることを知りません。また理事は多くの問題を処理する中で住民のクレームや問題提起を受け取るため、問題提起した住民にとっては喫緊の課題であっても理事会からすると多くの問題の一つになってしまうのです。互いのことを知らないから問題になってしまうわけです。

さらに互いの立場を軽んじるような発言が、互いを苛立たせます。理事会が遊んでいるような住民の言葉と、口だけで何もしないような理事の言葉が銃弾のように飛び交うようになると、喧嘩になるか対話をすることを諦めるかになってしまいます。こうなると住民と理事の関係修復は難しいものになってしまいます。

コンサルタントが入っても改善しにくい

大抵の場合、私のようなコンサルタントが介入するのはトラブルになってからです。問題が大きくなってどうしようもなくなってから、外部の人の客観的な意見を聞きたいということになって呼ばれるのです。しかし問題が大きくなってからでは、両者の感情がこじれてしまっているので、何を話しても聞かない状態になっていることが少なくありません。こういう時こそコンサルタントが必要と言う方もいるのですが、こじれた人間関係は誰が入っても簡単には解決しません。むしろそんな状態で、部外者がやってくると気分を害する人もいるので簡単には解決しないのです。

住民同士の対立は資産価値を低下させる

意外と見過ごされがちですが、住民同士が対立しているマンションは資産価値を下げることになりかねません。マンションの資産価値というのは、売却する際にいくらで売れるかが重要になります。では売却する際に売却を依頼された不動産屋はどこに営業を行うしょうか。最初に営業するのは同じマンションの住民です。ポストに○○号室が売り出し中というチラシが入っているのを見たことがある人もいると思います。同じマンションに住んでいる人なら、そのマンションのメリットもデメリットも理解しています。子供に近くに住んで欲しいと思う親や、高齢の親を呼び寄せたい子供などがいれば契約は容易に進みます。

次に営業するのはマンション周辺の住民になります。これも近くに親や子を呼びたい人がいれば、契約になりやすいのです。それでも買い手が見つからなければ、ネットに掲載するなどして広い範囲で買い手を探すことになります。こうなると高値の販売は厳しくなり、値下げをしながら売却先を探すことになってしまいます。ここで考えて頂きたいのですが、住民同士が険悪な状態になっている時に、親や子供に自分が住むマンションの購入を勧めるでしょうか。トラブルが多いマンションではお金があれば出ていきたいと思う人も多く、誰かに購入を勧めることはしないでしょう。住民同士のトラブルは、マンションの資産価値を下げることにも繋がるのです。

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まとめ

理事会には理事会の想いがあり、住民には住民の想いがあります。互いの想いや考えに至らずに互いの都合や想いだけをぶつけるとトラブルの火種になりがちです。互いの意見だけでなく互いの事情や想いに考えを巡らせる必要があるのです。マンション内で住民同士が対立すると、資産価値を下げることにも繋がります。互いを尊重し、トラブルの発生を未然に防ぐことが最も重要だと思います。

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