マンション内の新型コロナウイルス対策5つのポイント

新型コロナウイルスの流行により、自粛生活が続く方が多いと思います。そんな中でマンション内のコロナウイルス対策について質問を受けることが増えてきました。そこで今回は、マンション内の新型コロナウイルス対策5つのポイントを書いてみたいと思います。注意するべきは、多数の人が触れる場所です。

新型コロナウイルスのおさらい

コロナウイルスは脊椎動物を宿主とするウイルスの仲間で、いわゆる風邪の病原体の1つです。風邪と呼ばれる症状の原因は多岐に渡りますが、10%から20%はコロナウイルスが原因とされています。現在大流行している新型コロナウイルスはCOVID-19と名付けられていて、2002年から2003年に流行したSARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)を引き起こしたSARS-CoVの仲間だそうです。

新型コロナウイルスは2019年11月に中国の武漢で発見され、12月の末にWHO(世界保健機関)に報告されました。年末から2020年にかけて武漢で大規模感染を引き起こすと、ヒトからヒトへの感染も確認されました。その後、中国全土に感染が拡大すると、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸でも感染が確認されるようになり、世界的な流行となりました。4月の頭には全世界の感染者数が100万人を超え、短期間での世界的流行が確認されています。

感染が広がった背景には、重症化する患者が少なく症状が現れない人(無症状病原体保有者)が多いので、感染した人が無自覚に他の人に感染させていることが挙げられています。感染者の8割に症状が現れないとも言われていて、既に多くの人が感染していると考えられます。そのため新型コロナウイルスの予防措置として、世界各国で外出するのを控えるような措置がとられることになりました。

新型コロナウイルスの感染経路

主に飛沫感染と接触感染が挙げられています。空気感染の可能性も否定はできないとされているので、可能性がゼロというわけではないようです。しかし感染の大半は飛沫と接触が原因と考えられているので、ここでも主に飛沫感染と接触感染の可能性について考えていきたいと思います。

飛沫感染とは感染症患者の咳やくしゃみの飛沫を浴びたり吸い込むことによって感染することです。飛沫感染の代表的なものはインフルエンザや風疹、おたふく風邪などです。飛沫感染予防には感染者がマスクをすることが有効で、病原体を含んだ咳やくしゃみを拡散しないようにしなくてはなりません。

接触感染は感染者から出たウイルスを含む唾液や体液に触る事によって起こります。直接触れるだけでなく物を介して触れることでも起こるため、手で顔の粘膜(口、鼻、目)を触らないことや手洗いが感染予防になるとされています。接触感染で有名なのはノロウイルスで、保育園などでノロウイルスが集団感染するのは玩具などを通じて接触感染するからだと言われています。

新型コロナウイルスの予防には飛沫感染と接触感染を避けることが推奨されていて、言ってみれば従来の感染症対策と大きく変わることはありません。咳やくしゃみが出る人はマスクを着用し、手で口や鼻を覆って咳などをしてはいけません。指先にウイルスが付着して、あちこち触る度にウイルスが拡散するからです。マスクがない時には腕で口を覆うなどして、ウイルスが拡散しにくいように努める必要があります。また指で目をこする、鼻をほじる、指を口に入れるなどの行為を避けて、小まめに手洗いをすることが重要になります。

2003年の香港で起きたマンション内SARS感染

マンションでの新型コロナウイルス対策を考えるとき、2003年に香港のマンションで発生したSARSの集団感染が例に挙げられます。香港の九龍地区にあるマンション「アモイガーデンズ」で1000人を超える住人がSARSに感染し、88人が死亡しました。複数の棟で構成されるアモイガーデンズは、19ブロックに分かれており総戸数4896戸の大規模マンションです。そして住民の総数は1万人を超えます。

※アモイガーデンズ

この時の原因として考えられたのは、浴室の排水口での封水切れでした。浴室の床の排水口にはUトラップが設置してあり、中に溜まった水(封水)によって下水管からの悪臭が出てくるのを防ぐ仕組みになっていました。ところが多くの住民は床をモップ掛けで掃除するに留めていたため、封水が蒸発してなくなっていました。そのため下水管からウイルスを含んだ空気が浴室内に逆流したと報じられました。

この感染経路で感染したならSARSが空気感染したことになります。そのため異論も出ているのですが、それ以外に集団感染する要素が見当たらなかったため、排水口からの感染が主な原因とされています。日本ではお風呂かシャワーを毎日使う人がほとんどで、洗い場まで含めてお風呂を水洗いする人がほとんどなので、排水口の封水が切れることは考えにくいです。長期間外出していた時には封水が切れることがありますが、自宅で自粛するように言われている現在では封水切れはほとんどないでしょう。そのためあまり参考になるとは思えません。

多数の人が触れる部分に注意する

マンションでの新型コロナウイルス対策を考えるときに、多くの人が触れる部分からの接触感染に注意することが第一だと思います。そこでマンションの共用部にある大勢の人が接触する部分を考えてみたいと思います。

①ゴミ置き場のドア

最近のマンションのゴミ置き場は、臭いが周囲に漏れないように独立した部屋になっているケースが多くあります。入り口には大抵の場合はドアがついていて、鍵を使って開けるタイプが多いでしょう。またタッチ式の自動ドアになっているマンションもあります。このドアノブやタッチセンサーは多くの人が触る部分になります。

②宅配ボックス

今では多くのマンションに宅配ボックスが設置されています。宅配ボックスの操作パネルは宅配業者の方が触り、荷受けするマンション住民が触るので、不特定多数の人が触れる場所になります。またロッカー部分の取っ手なども、荷受けする人が触る部分になるので多くの人の手に触れています。

※(株)ナスタのwebサイトより

③手摺り

階段や廊下に手摺りが設置されているマンションが増えました。怪我をしている人、体が悪い人、高齢者など多数の人が触れています。バリアフリーの考え方がマンションに持ち込まれてから、共用部の多数の部分に手摺りが設置されているので、これらの手摺りはマンションに遊びに来た人も含めて不特定多数の人が触れていると考えて良いと思います。

④エレベーター

エレベーターでの空気感染を心配する人もいますが、エレベーターのカゴ内は絶えず換気されています。乗り合わせた病原体保有者の咳やくしゃみを直接浴びない限り、さほど心配することはないと思います。一方で操作パネルは不特定多数の人が触っています。特に開閉ボタンは、目的の階数に関係なく誰もが触る場所になります。

地震などが起こって不運にも閉じ込められたとしても、数十分で救出してもらえるはずです。複数人数で閉じ込められたら感染が心配という方もいると思いますが、その際には極力会話をしないなどの配慮が必要かもしれません。

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⑤自動販売機

マンションの共用部分には、自動販売機が設置されていることがあります。自動販売機のボタンも中身を入れ替える業者さんも含めると、かなり大勢の人が触っている部分だと思います。

これらの場所をアルコール消毒するというのも一手ですが、自分が触る直前に病原体保有者が触っていたら、自分の手に病原体が付着する可能性があります。そこで、これらの場所を触ったら手洗いを行うのが効果的だと思います。もちろんこれらの場所を触った後に、目を擦ったり鼻をほじったりしては意味がありません。よく言われているように、手洗いの徹底に務めて顔を触らないようにしましょう。

また、これらの場所を触る際に、直接指で触れないという手もあります。そこでハンカチで押す、手袋を使うなどの対策をとっている人もいるようです。手洗いの徹底が基本ですが、こういう方法を併用するのもありだと思います。

24時間換気システムの再チェック

多くのマンションには24時間換気設備が設置されています。室内の換気をよくすることも感染症対策には有効とされているので、この際に24時間換気を再チェックしましょう。マンションの24時間換気システムの多くは、浴室と洗面所にある換気扇を使って部屋全体の空気を循環させています。換気扇は排気をしているので、排気する量と同じ量の空気を吸気しなくては十分な換気ができないことになります。

※国土交通省webサイトより

吸気をしているのは、壁に設置された吸気口です。この吸気口を風が入ってきて寒いからという理由で閉めたままにしている人もいます。しかし閉めたままでは十分に換気ができないので、この機会にチェックしてみましょう。十分な空気を取り入れることで、新型コロナウイルス対策だけでなく部屋の臭いやカビなどの予防にもなるので、ぜひ確認してみてください。それから稀に24時間換気システムのスイッチを切ってしまっている人もいますが、家に閉じこもりの生活をしているなら、ぜひオンにしましょう。

ストレスを溜めない

自粛生活が長期間になることで、ストレスを溜めている人が多いようです。それに加えて住んでいるマンションでもウイルス対策をするとなると、神経質な方なら気が滅入ってしまうかもしれません。しかしストレスは自己免疫機能に悪い影響を与えることが知られており、ストレスを上手に逃がすことが病気予防にとっても重要になります。

あまり神経質になりすぎることなく、適切な対応をとっていくことが長期的な隔離生活の知恵ではないでしょうか。ここに挙げた部位は多くの人が触れる場所ですが、ここに触ったら感染するというわけではありません。普段より少し気をつけたり、手袋を使うなどのちょっとした工夫で感染対策を行って下さい。そして何より手を洗い、手の皮膚が荒れている方はケアをしましょう。それが最も効果的だそうです。極力ストレスを溜めずに対策を行って、ウイルスの流行が落ち着くのを待ちましょう。

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