ワンルームマンション投資をする人はバカなのか?

ワンルームマンション投資を勧められているという方から、メールを頂きました。よくわからなかったので会社の同僚などに相談すると「ワンルームマンション投資をする人はバカ」と言われたそうです。またネットで調べると、堀江貴文氏などが同じことを言っていたそうですが、営業マンの言葉にも説得力があり悩んでいると書いてありました。ワンルームマンション投資をする人は、本当にバカなのでしょうか。今回は投資について書いてみたいと思います。

ワンルームマンション投資とは何か

賃貸向けのワンルームマンションを購入する投資術です。利益の出し方は複数あり、さまざまな利益の上げ方があります。共通して言えるのは、現金を銀行に預けても利息がほとんどつかない現状を鑑みて、銀行に預けるよりも利益が大きくリスクが少ないと言われることが多いようです。多くの場合は以下に挙げる3つのうちのどれか、または組み合わせることを勧められます。

①売却益で利益を出す

1000万円でワンルームを購入し、5年後や10年後に売却して利益を出す方法です。1200万円で売れれば200万円の利益になります。これは地価が上昇している時代には有効で、例えばバブル景気の頃に多くみられました。「土地転がし」「マンション転がし」と呼ばれ、購入しては売却を繰り返して巨額の利益を得ることがバブル景気の頃にはできたのです。

現在ではバブル景気の頃のような急激な地価上昇はありませんが、それでもリーマンショック前など地価が上昇している時には売却益を出すことができました。1000万円を銀行に預けたところでほとんど利息は付きませんから、10年で100万円、いや50万円でも利益が出ればかなり効率の良い投資ということになります。

②運用益で利益を出す

購入したワンルームマンションを賃貸に出し、家賃収入で利益を得る方法です。1000万円で購入したワンルームマンションが、家賃8.5万円/月で貸せるとします。年間の家賃収入は102万円になり、10年で初期投資の1000万円を回収できます。これ以降の家賃は利益となり、貸し続けている限りは利益を生み続けます。

仮に1000万円をローンで借りたとしても、金利2.5%の20年ローンなら、月々の支払いは5.3万円程度になります。5万円のローンを払って8.5万円の収入があるのですから、毎月3.2万円の利益を生むことになります。20年でローンを完済してしまえば、以降の家賃は全て利益になります。

③損益通算で利益を出す

購入したワンルームマンションを賃貸にだすと、毎月8.5万円の家賃収入を得ることができるとします。しかしローンは毎月10万円で、毎月1.5万円の赤字になります。年間なら18万円の損失です。しかしサラリーマンなら給与所得とマンション経営の収入を合算することが可能で、所得が減るので所得税を取り戻すことができます。

一定の年収がある人(払っている所得税が多い人)なら投資効果が高く、複数のワンルームマンションを経営している人もいます。80年代から90年代にかけてサラリーマンの間で流行り、ちょっとしたブームになりました。

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マンション投資の根本的な疑問

ワンルームマンションの投資は、新築を扱う会社と中古物件を扱う会社があります。新築の場合で考えると、不動産業者は土地を探すことから始めます。駅の近くにマンションに良さそうな土地があったとします。価格が1億円でした。この土地に3億円でワンルームマンションを建設することにします。

土地代と建設費を合わせて4億円を出して、この会社はマンションを建設しました。総戸数は50戸で、各部屋を1000万円で販売することにしました。完売した時の売上は5億円で、1億円の利益が出ます。販売時には上記②の運用益で利益が出せるとして営業活動をしました。

1000万円を20年のアパートローン(金利2.5%程度)を組むと、月々の支払いは5.3万円程度です。家賃収入は8.5万円程度ですから、毎月3.2万円の利益が見込めるのです。年間38.4万円の利益です。管理費、修繕積立金、固定資産税を払っても十分に利益が出るうえに、20年でローンが払い終われば家賃は全て収益になります。

ここで疑問が生じます。なぜこの不動産屋は、これほど旨味のあるマンションを自分で運用せずに他人に売ってしまうのでしょうか。8.5万円の家賃が見込めるなら50戸で、毎月425万円、年間5100万円の収入があります。4億円の初期投資を、わずか8年で取り戻すことができます。高い確率で利益が出せると宣伝するならば、不動産のプロである自分達が運用する方が遥かに利益が出せるのです。しかしワンルームマンション投資を勧める会社が、ワンルームマンションを所持しているケースはあまり聞きません。なぜでしょう。

ここに新築ワンルームマンション投資の弱点が垣間見えます。この業者は、所有するより売却する方が利益が出ると判断したから販売しているのです。不動産のプロが売却した方が利益が出ると判断した物件を、不動産に疎い人が購入して運用するのですから、儲からなくても当然だと言えるでしょう。

見えない出口戦略

全ての投資に言えることですが、売却して利益が確定するまでは成功とは言えません。1000円で買った株が1万円になっても成功とは言えず、1万円で売却して9000円の利益が確定してはじめて成功と言えるのです。ワンルームマンションで上記②の運用益がいくら出ていても、最終的にマンションを売却しないと儲かったかどうかはわかりません。しかし運用益が出ているだけで「マンション投資は儲かる」と言う人が多くいます。

今は運用益が出ていても、賃借人がつかない期間が数ヶ月あれば損を出します。賃借人がつかないので家賃を下げれば、さらに利益が減って損が大きくなります。今の段階で儲かっていると言っても来年はわかりませんし、売却しなくてはならなくなった時に値が下がっている可能性もあります。経験者が今儲かっているという話をしていても、最終的に儲かるかは誰にもわかりません。

投資は常に出口戦略を考えなくてはならないのですが、ワンルームマンション投資の営業や実際に経営している人の話を聞いても出口がハッキリしないことが多く、本当に大丈夫なのだろうかと思うことがよくあります。株と違いマンションはクリック1つで売却できるわけではなく、不動産屋に売却を依頼して広告を出して反応があるのを待ちます。手間も時間もかかるのです。いつどうやって利益を出すのかわからないなら、それは投資ではなく道楽になってしまいます。

投資を始めるには勉強が必要

「キャピタルゲイン」「インカムゲイン」「減価償却」「利回り」などの基本的な投資用語を知らないという人は、投資に関する知識が全くない状態なので、マンション投資は待った方が良いでしょう。プロがついているから大丈夫と言う人もいますが、そのお金が他人任せにしても構わないようなお金ならそれでも良いでしょう。しかしサラリーマンがローンまで組んで投資を行うなら、他人任せにせずに自分で判断できるようにするべきです。

しかしワンルームマンション投資では、プロに任せておけば大丈夫だと営業マンの言うことを鵜呑みにしている人を多く見かけます。そのため損をしている人が多いのも当然で、他人任せの投資が上手くいくのはマグレに期待するようなものです。大金を動かすのですから、自分が何をやっているのか理解しなければ損をするのは当たり前なのです。

素人がプロボクサーに挑戦するか?

不動産や投資の知識が皆無の人がワンルームマンション投資をするのは、ボクシング経験が全くない人がプロボクサーに挑戦するようなものです。勝てるはずがないだけでなく、大怪我をします。しかし営業マンは甘い言葉でささやいてくるのです。

「相手は世界チャンピオンと言っても体重50kgのチビですよ。ボクシングは階級制のスポーツだから、彼らは自分より大きな人と試合をしないんです。あなたの方が体が大きいから、一発当たれば吹っ飛びますよ。私が教える通りにすれば、必ず勝てますから」

すっかりその気になって試合をすると、ちょっと練習しただけの素人のパンチが世界チャンピオンに当たるはずもなく、ただ一方的にサンドバッグのように殴られるだけになります。自分が甘かったと気づいた時には逃げることすらできず、これは本当に人の拳か?と思うほど硬くて強いパンチを倒れるまで浴び続けることになってしまうのです。

マンション投資では、これと同じような光景をよく見かけます。不動産価格や家賃相場の動向は、それを本業にしている人でさえ予想が難しいのです。それを不動産に詳しくない人が、人に言われて初めても勝ち目はほとんどないと言って良いでしょう。ワンルームマンション投資に関しては国土交通省も問題視していて、webサイトで注意喚起を促しています。

国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください

儲かっている人がいるのも事実

ワンルームマンション投資で儲かっている人もいます。不動産投資を勉強したうえで注意深く物件を選び、売り時を見極めた人の中には利益をあげた人もいますし、単に運が良くて儲かった人もいます。先のボクシングの例でいうと、たまたまボクサーがお腹を壊した日に試合ができた人です。大勢の人がワンルームマンション投資を行っているので、中には幸運に恵まれて運よく利益を出した人は少なからずいるのです。成功した人の背後には大勢の失敗者がいるのですが、成功した人だけが広告に取り上げられ、しかも運よく利益を出した人なので「投資は簡単」「任せておけば大丈夫」と言ったメッセージが流されることになります。

しかし実態としては、損をしている人の方が圧倒的に多いようです。先に書いたように、本当に儲かるなら不動産屋が自ら運用すれば良いのです。しかし自ら運用しないのは、ワンルームマンションの運用には多くのリスクがあり、本当に利益が出るか見込めないからです。私の周囲で利益をあげている人は、中古の安い物件の中から厳選して運用を行っていて、みんな口を揃えて物件の選定が全ての鍵だと言っています。誰かに勧められたから買うのではなく、自分で手間をかけて精査しているのです。

まとめ

ワンルームマンション投資をする人はバカなのか?と問われれば、決してそんなことはないと言えます。不動産や投資を勉強して、利益をあげている人もいるからです。しかしワンルームマンション投資が安易に儲かると思ったら大間違いで、多くの人が最終的に手出しの方が上回ってしまい赤字になっています。営業マンに勧められるがままに購入しようとしている人は、もう一度立ち止まって考えるべきでしょう。不動産や投資の知識もなく、ローンまで組んで購入するのは賢い選択と言えないのは間違いありません。投資は慎重に行うべきだと思います。

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