大東市女子大生殺害事件 /窓からの侵入は要注意
2021年4月28日の午前7時頃、マンションの3階の一室から女性の泣き叫ぶ声が響きました。「お母さん助けて」という悲鳴に異変を感じた隣の部屋の住人が、110番通報します。警察官が駆けつけると、ベッドの脇に十数箇所の切り傷と頭部を鈍器で殴られた女性が倒れていました。そしてマンションの2階から火の手が上がります。
犯行の手口
マンションの2階に住むK(48歳)は、4月28日の朝にYさん宅の前に行き、ドアストッパーを取り付けて内側からドアが開かないようにしています。さらに自室に戻ると、自室のバルコニーからハシゴを掛けて、上階のYさん(21歳女性)のバルコニーに侵入しています。その後、準備したバールと棒の先にワイヤーで包丁を縛りつけた自作の槍のようなものを持って侵入し、Yさんを殺害しました。十数箇所(一説には120箇所)を刺されたYさんは失血死しています。その後、Kはハシゴを使って自室に戻ると、灯油で自室に火を放ちました。Kは一酸化炭素中毒で死亡しています。
犯行の動機
Kが死亡したため、動機はよくわかっていません。以前Kは「上の階の人に見張られている」と話しているそうです。またKが別のマンションに住んでいた際にも「隣人に見張られている」と日記に書いています。しかし警察の捜査で、被害にあったYさんがKを監視していた事実は見つからず、大学生のYさんがKを監視する理由も見当たりませんでした。
この事件が発生する少し前に、Kは隣の部屋をドアをドンドン叩き、それに恐怖した隣人は事件の直前に引っ越しています。またネットではYさんのインスタグラムの写真から、友人を部屋に集めて騒いでいたと流布されていますが、隣人の証言ではYさんの部屋が騒がしいことはなかったとしています。そして逆にYさんが友人らに「マンション内で怒鳴り声がして怖い」と話していたことも報じられています。またK自身が大声を上げたり壁やドアをドンドンと叩いていたという証言もあり、騒音問題はKが起こしていたのではないかとも言われています。そのため警察は、Kが一方的な被害妄想を抱き、Yさんに落ち度はなかったと見ていたそうです。
バルコニーから侵入できるのか
バルコニーの形状にもよりますが、かなり難しいと言えます。転落の危険性が高く、ここから侵入しようという泥棒は少ないでしょう。このことから、この事件は絶対に犯行を実施するという強い意思を感じます。それは予め逃げられないように、ドアストッパーを取り付けていることからも伺えます。Kはこれらの道具を事前にホームセンターで購入しており、執念じみたものを感じてしまいます。
バルコニーに設置された避難ハッチから侵入が可能だという意見もありますが、あれは上の階からではないとハシゴを出すことができません。そのため上の階から下の階に行くのは可能ですが、下の階から上の階に行くことはできません。またハシゴを出す際に結構な音が出ますので、こっそり侵入するのは不向きだと言えます。
窓の鍵は掛けられていたのか
私がこの事件で気になったのは、バルコニー側の窓の鍵は掛けられていただろうかということです。マンションの3階となると、鍵を掛けずに過ごす人が多いと思います。2階ぐらいまでなら泥棒の侵入に気をつける人も多いのですが、3階以上になると鍵を掛けない人が多いのです。以下は、令和2年の刑法犯に関する統計資料の空き巣の侵入手口を表にしたものです。
これを見ると、3階以下の共同住宅では窓からの侵入が最も多くなっています。しかもその窓は「無締まり」、すなわち施錠されていない鍵からの侵入が813件でトップになっています。多くの人が窓の鍵を掛けておらず、被害にあっているのです。つまり鍵を掛けるだけで、被害を減らすことが可能だと考えられます。
次に多いのがガラス破りになっていますが、これには窓に設置する補助錠が有効になります。サッシの上部に取り付けることで、クレセント近辺のガラスを割っただけでは開けられないので、侵入するのにとても手間がかかるようになります。侵入に手間がかかるところに泥棒は入りにくいですし、今回のように絶対に殺すと決めてやって来る凶悪犯でも、侵入までに時間を稼ぐことができます。
先に、私はバルコニーからバルコニーにハシゴで侵入する人は少ないだろうと書きました。しかしマンションの構造によっては、外階段や外廊下から少し頑張れば侵入できるようなバルコニーがあったりします。このような場所では窓からの侵入リスクが高くなるので、窓の鍵は掛けるようにしましょう。
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この補助錠は、バルコニーからの子供の転落防止に役立つと書いたことがありますが、防犯性を考えるうえでも有効な道具になります。ぜひ使ってみることをお勧めします。
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まとめ
この事件はKが一方的に被害妄想を抱いて、上階のYさんを殺害したと考えられています。なんの落ち度もないのに一方的に狙われるのは不条理ですが、世間ではこのような事件が起こりがちです。この事件から私がお伝えしたいのは、とにかく窓の鍵は閉めることです。就寝中はもちろん、起きている時でも窓を開けないなら鍵を閉めることを習慣にしましょう。そして補助錠の設置をお勧めします。補助錠は防犯には有効ですし、ホームセンターなどで安価に売られています。最初は少し面倒だと感じるかもしれませんが、ぜひ試してみてください。