家具に合わせてリフォームするという考え方
新築の家やマンションを買ったり、リフォームした時に新しい家具を選ぶ人は多いと思います。ほとんどの方が部屋に合った家具を選ぶと思いますが、リフォームの際にはお気に入りの家具に合わせて内装を選ぶことができます。家具と建築は別々に考えられがちですが、かつて家具は建築家がデザインしていました。今回は内装と家具について考えてみたいと思います。
家具は内装の一部
なぜ家具に合わせてリフォームをするのかというと、家具は内装の一部だからです。多くの方がリフォームをしてから家具を選びますが、家具の色やデザインが良くても、微妙にサイズが合わないから見送るなんてことがよくあります。そんなことになるなら、家具に合わせてリフォームをすれば良いのです。多くの場合、部屋にピッタリ合うサイズの家具を見つけるのは難しいので、フルリフォームをするなら先に家具を選びましょう。
建築家が作った家具の名品
時代を超えて家具の定番となった作品の多くは、建築家によってデザインされています。かつて家具は建築の一部で、内装をデザインする際に家具の設計も行われていました。以前は家具と内装を切り離して考える方が珍しかったのです。ここでは代表的な建築家と家具を紹介してみたいと思います。
①ル・コルビュジエ
20世紀前半に活躍したモダニズム建築の巨匠として、建築史を学ぶと必ず登場する建築家です。ル・コルビュジエの代表的な家具はいくつもありますが、ソファのLC2は誰もが見たことがあると思います。
②マルセル・ブロイヤー
同じく20世紀前半に活躍した建築家で、自宅の「ブロイヤー邸I」や「ブロイヤー邸II」は、後の建築に多大な影響を与えました。マルセル・ブロイヤーの代表的な家具はワシリーチェアです。当時としては金属を大胆に使った家具として、画期的な作品でした。
③ミース・ファン・デル・ローエ
近代建築の三大巨匠として知られるミース・ファン・デル・ローエは、Less is more(少ないことは豊かなこと)、God is in the details(神は細部に宿る)の言葉で知られる徹底的なシンプルさが特徴の建築家です。バルセロナ万博で国王夫妻が座るために作ったバルセロナ・チェアは、現在も多くの場所で使われています。
映画の中の家具
①映画「ホーム・アゲイン」のYチェア
2017年に公開された「ホーム・アゲイン」のダイニングルームには、デンマークのハンス・J・ヴェグナーが1950年に設計したYチェアが置かれています。素朴な雰囲気ながら、座り心地の良さと飽きのこないデザインで、今でも多くの人に支持されている椅子です。
座面が木ではなくペーパーコードのため、お尻が痛くならず長時間座っていられます。少し前に北欧モダンが流行りましたが、そのような流行とは関係なく売れ続けている椅子です。
②映画「君への誓い」のネイビー・チェア
2012年に公開されたこの映画では、個性的なアパートの部屋が何度も登場します。目を引く家具はいくつもありますが、今回はダイニングセットに使われているネイビー・チェアに着目しました。
1944年にアメリカ海軍の依頼によって製作された、オールアルミの椅子です。艦船での使用を想定していたため安定性と堅牢性、そして軽量さが求められました。この椅子は多くの映画やドラマで使われています。
③映画「ナインハーフ」の家具
86年に公開された映画「ナインハーフ」では、ミッキー・ローク演じる謎めいた男の部屋には名作家具があちこちに配置されています。シンプルですがゴージャスな雰囲気で、壁紙は白、家具は黒を基調としています。
こちらのダイニングセットは、建築家リチャード・マイヤーの作品です。
またこの部屋には、上記のマルセル・ブロイヤーのワシリーチェアやチャールズ・レニー・マッキントッシュの椅子も置いてあります。
インテリアのスタイルを考えよう
インテリアを考えるとき、自分が作りたい部屋のイメージがあると家具や内装材を選ぶのが簡単になります。インテリアにはさまざまなスタイルがあるので、インテリア雑誌などを見ながらイメージを固めていきましょう。
例えば2000年代に世界的ブームになった北欧モダン(スカンジナビア・モダン)というスタイルがあります。スカンジナビア半島の三カ国、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドにはゆったりとした雰囲気の独自のインテリアスタイルがあります。北欧には世界的な家具のデザイナーも多く、素朴で暖かみのある家具やインテリアは、今も多くの人を引きつけています。
また以前ミッドセンチュリー・モダンというスタイルも流行し、今では定番のインテリアスタイルの1つになりました。ミッドセンチュリーとは世紀の真ん中という意味で、1940年代から70年代ぐらいまでのアメリカのインテリアをイメージしたものです。
アメリカのデザイナー、イームズの家具などを中心に多くのファンを生んでいます。また日本ではカリモク家具がカリモク60というブランドを展開し、日本のミッドセンチュリーな家具を展開しています。このように自分好みのインテリアスタイルを見つけておくとアイデアも膨らみ、家具選びやリフォームが楽しくなると思います。
まとめ
リフォームをしてから家具を選ぶのではなく、家具を選んでからリフォームを行う発想の転換をお勧めします。そうすることで部屋全体のイメージがまとまりやすく、気に入った家具がわずかな寸法の差で入らないということもなくなります。工務店に勧められた内装材を選び、リフォームが終わった部屋を見てから家具屋さんで家具を選ぶというのは、実は無駄が多いのです。リフォームの予定がある方は、ぜひ検討してみてください。