海外マンションへの投資のカラクリ /フィリピン編

先日、知り合いからフィリピンのマンション投資の話が来ているので意見を聞かせて欲しいと連絡がありました。わずかな投資で3年後に利益を生むという話でしたが、止めておくように言いました。フィリピンのマンション投資は一時期流行りましたが、儲からない人が多いのです。なぜかというと絶対に儲からない投資マンションが存在し、投資家が喰い物にされているケースがあるからです。海外マンションへの投資は増えていますが、気をつけないと詐欺同然のものも多く含まれています。

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フィリピン不動産の過熱

ここ数年、フィリピンは建設ラッシュが続いているようです。日本でもフィリピンの不動産投資に関するセミナーが多く開催され、多くの日本人がフィリピンのマンションを購入しています。日本での投資に比べてフィリピンではマンションを安く買うことが可能で利益率が高いため、儲かった人がいるのは事実です。しかし中には必ず損をするカラクリがある場合もあり、フィリピンのマンションに投資して大失敗したという人も多くいます。そのカラクリを以下に説明したいと思います。

建設中に値上がりするマンション

フィリピンの不動産は日本と違い、建設工事が始まってから販売価格が上昇します。その値上がり幅は、およそ年10%ほど値上がりすると言われています。例えば工事が始まったばかりのフィリピンのマンションを1000万円で購入したとします。マンションが完成する3年後には1300万円になっているわけです。契約時に価格が決まっていて、その後に地価がどれほど上昇しても物件価格が契約時のままの日本では考えられない話です。

青田買い(建物が完成する前に買う)する人には安く販売して、完成してから高く売るシステムが認められているので、このような現象が起こるのです。しかし毎回そんなに上手くいくはずもありません。何年も建設ラッシュが続くフィリピンでは、ここ数年は値上がりする物件は滅多にありません。マンションが余っているのですから、むしろ値下がりする物件の方が多いのです。また日本と同様にフィリピンもエリアによって人気に大きな差がありますが、今は外国人投資家が買うからと不人気エリアにもマンションが建設されています。こういうエリアのマンションを青田買いすると、完成時には大きく価値が目減りしているのです。

販売スキーム

工事が始まったばかりの1000万円のマンションを購入したとします。手付金は300万円です。3年後の竣工時には1300万円になっているので売却して1000万円の利益を手にし、残金の700万円を払っても300万円の利益が残ると説明されます。この通りなら、本当に上手い話ですね。今や日本の銀行に300万円を預けても、利子はほとんど付かないので飛びつく人がいるのも納得できます。

もちろんマンションを持ち続けることも可能です。しかし竣工したら残金の700万円を払うかローンを組んで月々払いにし、マンションを賃貸に出して運用益を稼ぐのが主流のようです。この方法だと年利5%程度と説明して販売されることが多いようです。これも日本の銀行に預けるより遙かに利率が良い話になるので、フィリピンのマンション投資は高い人気を誇っているのだそうです。

実態はどうか?

先に述べたように、今どき年10%も値上がりするマンションはほとんどありません。1000万円で買ったマンションが竣工時に1000万円なら良い方で、マンション余りのフィリピンでは値下がりしていることもあります。ひどいケースでは500万円になっていることもあると聞きます。損切りして500万円で売却した場合、手付金を300万円払っているので利益は200万円です。しかし残金700万円の支払いが残っていますから、500万円の損が出るのです。

では売却せずに所有して賃貸に出せば良いと考えるのですが、まず残金700万円をローンで払うことは難しいのです。フィリピンの金融機関が、外国人にローンを組むケースは稀です。では現金で700万円を払って賃貸に出し、気長に回収するという手もあります。しかし建設ラッシュでマンションが余っているので、賃借人が見つかるケースは少ないのです。そもそも月収が5万円もない人が大半のフィリピンで、何万円も出してマンションを借りる人は人口の数パーセントしかいません。そんな市場で賃借人を見つけるのは至難の業なのです。そのためフィリピンでは夜になっても、灯りがつかないマンションが大量にあるようです。

売主だけが儲かる仕組み

このようにフィリピンのマンションは外国人投資家の財布をあてにして建てられるケースが多々あり、現地を1回だけ見て買う外国人投資家は鴨になっています。値下がりする前に高値で売却することで売主企業は大きな利益を得て、投資家が損をする仕組みができています。

さらに外国人投資家が損切りで打った物件を安値で買い、さらに別の外国人投資家に売る業者もいて、誰も住んでいないのに所有権がポンポン変わるマンションもあるようです。この場合はすでに建設費を改修できているので、どれほど値引きしても利益が出ます。私は東京で投資セミナーを開催している人から、フィリピンのマンションを購入する人を紹介したら紹介料を払うと言われました。紹介料は物件価格の20%で、私が紹介した人が2000万円のマンションを買ったら400万円ももらえるというのです。日本での紹介料は物件価格の3%までですから、いかに高額な紹介料かわかると思います。それだけの紹介料を払っても利益が出るマンションというのは、投資益が出るはずがありません。

まとめ

そもそもマンションを買うのに、なぜろくに行きもしないフィリピンで買うのでしょうか?自分で所有して別荘として使うならまだしも、わざわざ海外で投資用不動産を持つ理由がわかりません。物件を見に行くこともままならず、為替リスクもあるのに、ポンポン売れているのが不思議です。

もちろん物件によっては収益が出るものもありますし、ここに書いたような悪質なものばかりではありません。しかし悪質な業者かそうでないかなど、一般の人には見わけがつかないでしょう。この手の話は、常に高いリスクがつきまとうということを頭に置いておく必要があります。

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