猪口邦子議員の自宅火災 /マンション住民が気をつけるべきこと

2024年11月27日、東京都文京区にある猪口邦子参議院議員の自宅で火災が発生しました。この日は風が強いこともあって消火活動が難航し、火は8時間に渡って燃え広がりました。火災現場からは2体のご遺体が見つかっており、猪口邦子議員の夫で政治学者の猪口孝氏と娘さんの死亡が確認されました。

火災現場となったマンション

文京区の住宅街にある、築30年近くになるマンションです。地上6階建で総戸数9戸の小規模マンションで、販売時は140㎡の4LDKが中心のファミリー向けだったようです。火災現場になったのは最上階のペントハウスで、メゾネットになっています。かなりの高級物件ですね。

最寄りの駅が後楽園駅ということもあり、ショッピングモールのラクーアをはじめとする商業施設が多く、病院やコンビニ、居酒屋なども豊富にある地域です。電車の本数も多いので移動にも便利で、多くの人が憧れる文京区のマンションの1つと言えるでしょう。このような住宅街で激しい火事が起こったため、近隣の方々の動揺も激しかったようです。

※後楽園駅周辺の地図

火災現場の疑問

火災時の映像を見ると、火が住宅全体に回っていて、あちこちの窓から激しい火の手が確認できました。赤々と燃え上がる大きな炎が目視で確認でき、素人の私が見ても消火活動が困難なのがわかりました。マンション火災でこれほど大きな火の手が上がることは珍しく、まるで戸建ての火災を見ているようでした。火災現場の映像を見て、私は何が燃えているのかが不思議でした。

マンション火災は燃え上がりにくい

マンション火災の多くは、外から見ると炎より煙の方が見えます。それは建材の多くが不燃材や難燃材だからで、炎が出るよりも燻って煙が多く見えることがほとんどです。

(1)マンションの構造体

マンションの構造体は、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートでできています。コンクリートで鉄筋や鉄骨を包んだ柱や結果、梁や壁で構成されているので、火災が起こっても燃え上がることはありません。このように鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで作られる建物を耐火構造と呼びます。

(2)マンションの内装

多くのマンションは、法律により内装制限を受けています。内装制限とは、火災時に建物に住んでいる人や財産を守るためのもので、避難経路などの壁や天井を燃焼しにくい材料で作るように定めたものです。建物の規模や構造により制限が変わり、場合によっては下地にも制限が加わることもあります。

この内装制限を詳しく語るには建築基準法を読み解く必要があるのですが、マンションで内装制限を受けるのは高さ31m(10階建程度)以上で、住戸の面積が100㎡を超えている場合になります。つまり今回の火災が起こったマンションは6階建のため、内装制限を緩和されていると考えられます。

(3)低層マンションは火災に弱い?

上記のように内装制限を解説すると、低層マンションは火災に弱いと誤解する方もいるかもしれません。しかしマンションの天井や壁は、低層であれ高層であれ石膏ボードを下地に使用しています。石膏ボードは不燃材(加熱開始から20分燃焼しない)が準不燃材(加熱開始から10分燃焼しない)なので、低層マンションであっても燃え上がりにくくなっています。

マンションの壁や天井はビニールクロスを石膏ボードかコンクリートに直張りしているので、ビニールクロス自体が燃えにくいことに加えて下地も燃えにくくなっているのです。さらに構造体がコンクリートのため、マンション火災では炎がメラメラと燃え上がることも少ないのです。低層マンションだからといって、火災に弱いという理由にはなりません。

何が燃えていたのか

それでは今回の火災では、燃えにくいマンションの部屋で何が燃えていたのかが疑問になります。SNSではガソリンが撒かれたのではないかという憶測も多く見られましたが、これまで書いたようなマンションの建材の知識がある人ほど、あの大量の炎に疑問を持ったようです。

この記事を執筆中も、まだ出火原因など正式な発表は行われていません。そのためここからの記載は全て憶測になりるのでご注意ください。後に正式な発表があれば、補足したいと思います。

現時点でわかっているのは、油などが撒かれた形跡はなく、事件性はないということです。失火の可能性が高く、電気火災の可能性も示唆されています。そうなると住宅内に置かれた家具が、大量の炎の原因になった可能性が高まります。固定家具や扉を除くと、家具には消防の制限はありません。木の無垢材を使った家具でも問題なく使用できます。

そして以前に猪口邦子議員が自宅内で取材を受けた映像を見ると、本棚に大量の本が置かれていることが確認できます。猪口邦子議員は、元は上智大学の教授で国際政治を専門とする学者でした。夫の猪口孝氏も国際政治を専門とする学者で、学者同士の夫婦らしく書籍などの文献が大量にあったことは容易に想像できます。それらに引火した結果、あのような大きな炎が生まれたのではないかと思います。

マンション住民が注意すること

消防法では高さ31mを超える高層マンションでは、防炎カーテンや防炎カーペットの使用を義務付けています。これは高さ31mを超えるマンションなら、1階に住んでいても同様に義務があります。しかしこの法律を知る人は少なく、防炎物品性能試験をクリアした防炎マークが付いていない製品を使用している人も多いのが現状です。11階以上のマンションに住んでいる方は、カーペットやカーテンを買う際には防炎マークがついているものを選ぶようにしましょう。この件は、以下の記事でも書いています。

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また本棚の背後にコンセントを隠して、そこでタコ足配線を行うケースも少なくないでしょう。本棚の裏は埃が溜まりやすく、電気火災が起こった場合に発火しやすく、さらに本棚があることで大きな出火に繋がりやすい条件が整っています。タコ足配線だけでも危険なのに、さらにリスクを跳ね上げることをしている家も少なくないと思います。近年、電気火災が増えているそうです。電気コードも定期的に買い替えるなどして、電気火災の対策も行いましょう。

東京消防庁によると、都内のマンション火災の出火場所で最も多いのは台所だそうです。調理器具の使用に気をつけるだけでなく、ゴミを溜め込んだりするのはとても危険です。また溜まったゴミをバルコニーに置いて、そこでタバコを吸って引火したなんてこともあるそうで、ゴミは溜めずに決まった日に捨てることを心がける必要があると思います。火災の対策は部屋に物を溜め込まないことです。年末の大掃除で、不要なものを捨ててしまうのも火災対策になります。

まとめ

猪口邦子議員の自宅火災は本当に悲劇であり、心からお悔やみを申し上げたいと思います。私たちにできることは、このような出来事から教訓を学び、それを実生活に活かすことではないでしょうか。これを機に自宅をチェックして、火災につながるような場所や生活習慣がないか確認してみましょう。

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