雨漏れ修繕業者の見分け方 /危険な業者の4つの特徴を解説
マンションでも戸建てでも同じですが、雨漏れが起こったら業者を呼んで修理を行います。マンションなら個人で呼ぶのではなく管理会社を通じて呼ぶことが多いでしょう。また雨漏りは屋上などの共用部で発生していることが多いため、管理組合の理事会が対応することになります。そして業者がやってくるのですが、何度工事をやっても雨漏りが止まらないケースも多く、そういった相談を受けることがよくあります。腕の悪い業者に任せてしまったと嘆くケースが多いので、今回は雨漏れ業者の見分け方をお話ししたいと思います。
頼りにならない業者の特徴
あまり良くない業者の特徴を4つに分けて書いていきたいと思います。このような業者に修理を依頼するのではなく、他を探した方が良いと思います。
①すぐに漏水原因を突き止める
雨漏れしている場所を見て、すぐに原因を断言する業者は危険です。「屋上にひび割れがあって、そこから雨が入っています」とか「サッシとコンクリートの間から雨が入っています」みたいな感じで漏水箇所や原因を、現場を見てすぐに突き止めてくれる業者さんがいます。というか、こんな風にその日に原因を突き止めてくれる業者が大多数なのですが、これは要注意です。
なぜなら1時間やそこらで漏水箇所を見ただけで原因を突き止める事は、ほとんどの場合は不可能だからです。マンションは複雑な構造になっていることが多く、雨漏れしている箇所のすぐ近くにひび割れがあってもそこが原因かはわかりません。私は何百件も雨漏れを見てきていますが、1度見ただけで原因を断言できたのはごくわずかです。雨漏れの原因は、多くのプロが悩みに悩む問題で、1度見ただけで漏水原因を断言する人の9割以上は、漏水についてよくわかってない人だと思って良いでしょう。そういう業者が見積書を持って来ても、発注しない方が良いと私は考えます。大抵の場合は、改善せずに業者の言い訳を聞くとになります。
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②設計図書を見ない業者
ほとんどのマンションには、竣工図書という名前で設計図書が保管されています。驚くべきことに、設計図書を見ないで雨漏れの現場だけを見て判断する業者がいます。設計図書を見ないで雨漏れ箇所を見るだけでは、あまりにも情報が足りません。
完成した建物は内部がどうなっているか分からないので、外から眺めてもどのように水がまわっているかわかりません。そこで設計図書が必要になります。どのようにして建物が造られているかを知れば、どうやって雨が侵入してどこを伝わり、どうやって部屋まで侵入してきたか想像がつきます。
残念なことに設計図書通りに建物が造られていないケースがあるのも事実で、だから図面を見ても意味がないという業者もいます。しかし設計図書が情報の塊なのは間違いない事実で、それを見ないというのは調査としてあり得ないのです。図面を見ない人には2種類います。漏水調査の仕方がわかってない人か、設計図書を読めない人です。どちらも漏水工事を任せるべきではありません。
③すぐに散水試験をしたがる
散水試験は雨が侵入していると思われる場所に水を掛けてみて、そこから水が侵入しているか確認する検査です。わかっていない人に限って、すぐに散水試験をやりたがります。私は数百件の漏水現場を見てきましたが、散水試験を行なったのは1割ぐらいです。散水試験をしなくても原因を突き止める事は可能ですし、散水試験が有効ではないケースも多くあります。そもそも散水試験はやり方をよく吟味しないと、その結果からは何もわからないのです。
例えば壁にひび割れがあり、そこから雨が侵入しているか確認するために散水試験を行うとします。ひび割れに掛けた水は飛び散り、あちこちを濡らし、ルーフバルコニーの床などに溜まって排水口に流れていきます。これでは部屋の中に水が染みてきても、壁から雨が入ってきたのか床から入ってきたのかわからないのです。また壁にしてもあちこちに水がはねるので、ひび割れ部分なのか近くのサッシからなのかわかりにくくなります。
散水試験は有効な試験ですが、ただやれば原因がわかるというものではありません。設計図書も見ずに漏水箇所だけを見て、散水試験を提案する人はほとんど漏水調査のことをわかってない人です。つまり、こんな人にどれだけ時間を与えても、漏水が止まるかどうかは運任せになってしまうのです。現場を見て水が出ている出口から、どのように水が回っているか可能性を吟味し、設計図書を読んで最も可能性が高い漏水箇所を設定し、それを実証するために散水試験を行うのです。いきなり散水試験をしても、何もわかりません。
④入口ではなく出口を工事する
例えばマンションの最上階の部屋の天井に、水の染みができたとします。業者がやって来て、あちこちを調査して、部屋の天井裏のコンクリート部分のひび割れから雨が垂れて来ているのを見つけました。そこで業者はひび割れ部分を塞いで工事を完了しました。
これが最もダメな止水工事の典型例です。コンクリート内に侵入した雨水の出口を塞ぐと、今度は別の道を伝わって他の場所から出てきます。漏水工事の基本は、水の入り口を塞ぐことです。漏水調査では水の入口を探すために、出口の位置は参考にするだけです。もちろん対処療法的に出口を塞ぐことはあります。しかしあくまで一時凌ぎであって、これで工事は終わりではないのです。
例外:一度見ただけで漏水原因がわかった人
漏水があったマンションに、施工した ゼネコン の所長がやって来ました。所長は設計図書を見ることもなく、漏水箇所を一目見ただけで原因を特定して、対策工事の提案をしました。私は全く信用せずに、なぜ原因がわかるのかを問い詰めました。しかし「経験上、こういう漏水はわかるんですよ」と惚けていました。
そこで私は漏水の可能性を3つほど挙げて、なぜそれらが原因ではないと言い切れるのかを問いました。最初は「いや、そんなことはありえない」と否定していたのですが、徐々に歯切れが悪くなってきたので「知ってたんでしょう?」と尋ねると渋々認めました。つまりこの所長は、工事の際にミスがあったことに気づいたのですが、工事中にやり直すことも十分な対策も取れなかったのです。だから雨漏れがあったと聞いて、そこが原因ではないかとピンときていたのです。ミスの詳細を書くと長くなるので割愛しますが、雨漏れが起こっていたのは妻側の小窓で、コンクリートの庇を忘れて後打ちしたと書けば、建築に詳しい方ならわかっていただけると思います。
説明を聞いてもダメ業者は見抜けない
残念なことに漏水に関してわかっていないのに、漏水工事を行う業者はたくさんいます。また本人がわかっていないことをわかってない業者も多く、自信満々でおかしなことを始める業者は少なくありません。私はこれまでに立派な建設会社に何十年も勤めたけど全く漏水をわかっていない人や、防水業者として何十年も経験を積んだにも関わらず全くわかっていない人に何人も会ってきました。
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その手の業者は工事を行い、また雨漏りが起こっても「今度は別のところから雨が入ったようです」と開き直り、また新たに工事を行うのです。わからないまま仕事をしている業者の多くはトラブルを回避するために口だけは上手いので、専門用語を駆使して煙に巻いてしまいます。専門知識を持たないマンション理事会の方々が、口先で騙されてしまう事も珍しくはないのです。
じゃあ、どんな人なら安心なの?
5年前に雨漏りが始まり、何度も修理してもらっているけど全く雨漏れが止まらず、7回も雨漏れ被害に遭ったというマンションにお邪魔したことがあります。また、入居以来8年間も同じ箇所から雨漏れが続いているというマンションにお邪魔したこともあります。こういうケースは決して珍しくはありません。
調査に来た業者が、設計図書を見ることなく漏水箇所を見ただけで原因を特定したり、散水試験を提案したら、他の業者に変えた方が無難です。ではどういう業者さんに任せたら良いのでしょうか。次回は私がどのように調査をしているか解説しますので、業者選びの参考にしていただけたらと思います。
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