3%を惜しんで30%多く払った人々/ 消費税と大規模修繕工事

マンションで最も大きな出費になるのは大規模修繕工事です。そのため多くの管理組合は、大規模修繕工事の出費を少しでも減らしたいと考えます。しかしその減らし方を間違えたため、3%多く払うことを嫌がって30%も多く支払うことになった管理組合が多くいました。なぜこんなことになってしまったのかを書いていこうと思います。

大規模修繕工事とは

マンションの経年劣化による劣化にともない、維持管理のために計画的に行うまとまった修繕工事を大規模修繕工事といいます。大規模修繕工事の時期は長期修繕計画に書かれていますが、概ね12年周期なのが一般的です。そしてマンション住民が毎月支払っている修繕積立金の多くは、この大規模修繕工事に使われています。

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消費税の税率アップ

1989年に消費税が始まった頃、税率は3%でした。しかし1994年に自民・社会・さきがけの連立内閣だった村山内閣が5%に増税することを決め、97年の橋本内閣の時に5%になりました。そして2012年8月に民主党の野田政権で、2014年に8%に増税し2015年に10%にすることが決まります。しかしその4ヶ月後の2012年12月6日に行われた衆議院議員総選挙で民主党は野党に下野し、自民党の安倍政権が誕生します。

消費税増税は安倍政権の仕事となったのですが、世間では消費税増税は予定通りに行われないのではないかと言われていました。2008年に起こったリーマンショックは日本にも大きなダメージを与えていて、2013年はようやく景気回復の兆しが見えてきた頃でした。ここで増税したら景気回復にブレーキがかかり、再び景気が低迷すると考えられたからです。そのため自民党にも慎重な意見が多く、2014年4月1日に予定通り増税するのかが紙面を賑わせました。

そして迎えた2013年10月1日、安倍内閣は予定通り来年の4月1日に消費税を8%に増税することを閣議決定しました。これにより半年後に増税することが確定し、駆け込み需要が発生します。国土交通省が発表している新設住宅着工戸数を見ると、2013年は前年比で11%も着工戸数が増えています。

駆け込み需要が発生した理由

野田政権が消費税増税を決めたのが2012年8月10日で、増税する時期が2014年4月1日です。わずか1年8ヶ月弱しか猶予がなかったため、住宅の購入など高額で時間がかかるものに関しては多くの人が慌てて動き出したのです。これはマンションの大規模修繕工事も例外ではありません。業者が調査し、見積書を検討し、総会に上程して可決してから着工が可能になるので、2年ぐらい前から準備する管理組合が多くあります。1年8ヶ月では急ピッチで行わなくてはなりません。

大規模修繕工事において、消費税が5%か8%かは大きな問題です。工事発注額が1億円なら、5%の場合は500万円ですが8%なら800万円になります。300万円の差というのは無視できない額で、ましてや修繕積立金が不足気味の管理組合にとっては大きくのし掛かります。そのため消費税増税が決まってから、多くの管理組合が急ピッチで大規模修繕工事の準備を始めていきました。

発注が増えすぎて工事金額が高騰

消費税増税まで1年8ヶ月弱と決まってから、大規模修繕工事の発注が一気に増えました。しかし業者の数は限られているので、受注できる数が限られています。そのため大規模修繕業者は無理な数を受注することになり、工事のために応援を集めなくてはならなくなります。応援を集めて工事をすると費用が高くなります。

また受注ができない場合、いきなり断るのは失礼だと考えて、高額な見積もりを提出することもあります。受注するつもりがないので工夫して安くするように考えてはおらず、言い方は悪いですが何も考えていない見積書なので、どうしても高額になってしまうのです。しかし2012年から2013年にかけては、このような高額な見積書を提出しても工事を請けて欲しいと言う管理組合が多かったそうです。

こうして工事金額は高騰していきました。工事金額は東京では1戸あたり100万円程度でした。しかし2012年から2014年4月1日の消費税増税時期にかけて、1戸あたり120万円から130万円になりました。20%から30%の値上げで、消費税の3%を節約するために30%高く支払ってしまった管理組合が多くいたのです。あまりに勿体無いのですが、この時はとにかく消費税増税前に大規模修繕工事を行った方がお得だという考えに支配されていたのです。

まとめ

大規模修繕工事は、必要な箇所を必要な時期に修繕するべきです。消費税が増税するからとか、長期修繕計画に書かれているからといったことで時期を決定するべきではありません。2013年頃は、消費税の増税ばかりに目を向けて、本質的なことを見落としてしまう管理組合が多くありました。このようなことにならないためにも、大規模修繕工事をどのように行うべきか専門家の意見も聞きながらじっくり考えていただければと思います。

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