住宅選びで妥協しないたった1つの方法 /ビル・ゲイツの住宅から住宅選びを考える
住宅選びは妥協の連続だと思っていませんか?気に入った住宅があっても金額が高すぎたり、思い描いていた間取りの物件があっても欲しい場所になかったりで、何かを諦めなくてはならないことが多くあります。しかし住宅選びは妥協の連続ではなく、何を優先するかが重要です。今回は住宅選びに関して世界的な大富豪でマイクソフト社の創業者ビル・ゲイツの住宅から住宅選びを考えてみたいと思います。
ビル・ゲイツの邸宅「ザナドゥ2.0」
ワシントン州メディナにビル・ゲイツの自宅はあります。敷地面積は20,841平方メートル、建築面積だけで6,100平方メートルだそうです。ゲイツはこの土地を購入すると、70億円以上の建築費と7年の月日を費やして自宅を完成させました。古典的名作映画「市民ケーン」で、新聞王のチャールズ・フォスター・ケーンの自宅がザナドゥと呼ばれており、それにちなんでゲイツの自宅はザナドゥ2.0と呼ばれています。
自宅はハイテクが満載で、最新鋭のセキュリティが施されているようです。自宅内にはフィットネスジム、サウナ、トランポリンルーム、シアタールーム、図書館などが存在し、さすが世界一の金持ちの家だと思わされます。また人工の川を作ることで各棟のプライバシーを守るように設計されており、住宅設計というより都市開発のような勢いで建設されました。
全長18mのプールもあります。水中には音楽が流れているそうで、プールを潜って屋外テラスに出ることも可能だそうです。
シアタールームは客席が20あり、ポップコーン製造器も完備しているそうです。以前、ゲイツは自分の子供が「ファインディング・ニモ」を好きだと言っていましたね。「誰が作ったか知らないが、あれは良い映画だ」と言ってスティーブ・ジョブズを苦笑いさせていました。
図書館の目玉は、レオナルド・ダヴィンチのノートが展示されていることです。94年のオークションで30億円以上かけて落札しています。さらにこの図書館にはバーなどに通じる秘密の隠し扉が2つあると言われています。
この家は建築中から、工事が進まないことが話題になっていました。作っては壊し、作り直しては壊していたようで、ビル・ゲイツの妻メリンダ・ゲイツのこだわりで工事が進まないなどとゴシップ紙に書かれたこともありました。本当にメリンダ・ゲイツが勝手気ままに作り直しを依頼していたのかは不明ですが、作った直後に壊して作り直したことはあったようで、さらに今でもこの家は工事を行っています。ビル・ゲイツの家は未完の豪邸と呼ばれ、定期的に工事が行われているようです。
ちなみにこういう家のことを英語でmansion(マンション)と呼ぶんですね。本来のマンションは、豪邸とか大邸宅という意味になります。
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100%満足する家などない
ビル・ゲイツの家は70億円以上かけて建設されましたが、この額は彼の資産の0.01%に過ぎません。700万円持っている人が7000円を使う程度の金額です。ザナドゥ2.0は、これほどの資産を持つゲイツでも100%満足する家を建てることはできないことを物語っていると思います。これからもゲイツは好きなだけ、自宅を改修することができるでしょう。しかし70億円かけても満足できないなら、これからどれほど改修しようとも100%満足することはないと思います。
住宅を買うときに、多くの人があれこれ妥協しなくてはならないことを嘆きますが、ビル・ゲイツでさえ満足していないのですから資金力が劣る我々庶民が妥協するのは当然のことなのです。問題は何を妥協して、何を妥協しないかです。住宅を買ってから後悔するのは、妥協したからではなく妥協するポイントを間違えたからです。
優先順位を決めることが重要
住宅購入希望者に住宅に何を望むかを質問すると「部屋の広さ」「交通の便」「学区」「日当たり」「近隣環境の良さ」など、さまざまなものが出てきます。それら望むものを書き出して、優先順位をつける作業を行って下さい。特に家族の場合は夫婦間で、時間をかけて何度も話し合う必要があります。
大抵の場合、ご主人と奥様では最優先事項が違います。また子供の環境を重視する夫婦でも、重視するポイントが違う事があります。ですからじっくり話し合って、自分たちがどのような生活を望むのかを考えましょう。話し合いを何度も行うことで、お互いの将来設計を理解し合い、家族にとって何を優先すべきか考えるのです。
どんなにお金があっても、全てを満足できる住宅は手に入りません。それはザナドゥ2.0を見れば明らかです。家族にとって何が一番大事で、何が我慢できるのかを徹底的に話し合いましょう。優先順位が決まってから住宅探しを始めます。
もう1つ忘れてはいけないのは、最初に決めた優先順位に縛られる必要がないということです。住宅を見ていくうちに現実を知り、考えが変わることもあるでしょう。また日当たりを重視するから東南向きの部屋を探しているうちに、必ずしも東南向きではなくても日当たりが良い部屋があることに気がつくかもしれません。そういう時は、何度でも話し合いを繰り返してください。大事なのは夫婦、家族で話し合って納得して決めたということなのです。
住宅をなかなか買えない人の特徴
マンション営業をやっていると、来場者の中にマンション評論家が混じっていることに気づきます。この人達は当初はマンションを買うためにあちこちのモデルルームを見ていたのですが、あらゆるマンションのデメリットばかりに気を取られてしまったのです。
「日当たりは良いけど、買い物に不便」「駅から近いけど、駐車場が少ない」「価格は手ごろだけど、内装が安っぽい」「リビングは広いけど、寝室が少し狭い」などなどデメリットばかりに目が向いてしまい、あちこち見に行ったマンションの良い部分だけをくっつけて頭の中で理想の物件を作ってしまうのです。そんな理想的な物件はどこにもないので、何件見て回っても不満ばかりが募るのです。
何が欲しいかわからない人は何も手に入れられません。多くの物件を見て知識ばかりが増えていき、住宅を見続けて評価をするだけの人になってしまいます。こういう人は何年掛けても住宅を買うことはできず、ありもしない理想の住宅を探し続けているのです。それを避けるためにも優先順位を決めて、自分はどんな住宅が欲しいのかを明確にしましょう。
おまけ(増殖し続けた家)
アメリカのカリフォルニア州サンタクララに、サラ・ウィンチェスターという女性の未完の豪邸があります。彼女は銃器メーカー、ウィンチェスター社の2代目社長の妻で、夫や子供に先立たれたのを機に霊媒師に相談しました。霊媒師はウィンチェスターの銃で死んだ人達の呪いが一家にかかっていると言い、亡くなった人のために家を建てるようにアドバイスします。
1884年、サラは農場を買い取ると家を建設しました。そして彼女が亡くなるまで、その家は増築を繰り返します。サラは夫の財産を相続し、配当だけで1日あたり300万円近くの収入があったので、ふんだんに資金をつぎ込んで増築を続けていきました。最大時には7階建て、160の客室を有するまでに膨張しましたが、1906年の地震以降は4階建てになっています。この家は「ウィンチェスター・ミステリーハウス」と呼ばれ、現在は観光名所になっています。
この家が奇妙なのは、悪霊が入りにくく出て行きやすい構造を狙ったためか、行き止まりになる階段や廊下、開けても壁しかないドア、床がない部屋などが多く存在しているため、さながら迷路のようになっていることです。階段は不吉な数13を意識して13段になっているものが多く、そのため階段ごとに段差が大きく違うようです。
サラ・ウィンチェスターは満足できないから作り直しているわけではなく、増築のための増築を繰り返していたわけですが、この奇妙な家は建物をいじりすぎるとおかしなことになってしまう典型のように思えます。