有名人が住むマンションは敬遠される /静かに暮らしたい人々と押しかけるマスコミ

人気の芸能人が身につけているアクセサリーや洋服、使っているグッズに人気が集まることがあります。そのため有名人に使ってもらおうとプレゼントしていた時代もありますし、今では広告料を払って身につけてもらうことが当たり前になっています。しかしマンションの場合はその逆で、有名人が住んでいるマンションを購入したくないと考える人が多いのです。特に芸能人が同じマンションに住むことを嫌がる人は多くいます。有名人が住むマンションは敬遠される理由と、過去にマンションで起こった事件を紹介したいと思います。

芸能人が住むマンションが嫌われる理由

最近はやや自粛傾向にありますが、芸能人がスキャンダルを起こすと取材のためメディアが自宅マンションに殺到するのが当たり前の時代がありました。早朝でも夜間でも関係なく取材が行われ、他の住民が夜も寝られないということになります。例えば85年に起こった豊田商事社長襲撃事件の際には、報道陣が社長の永野一男が住むマンションに報道陣が詰めかけていました。報道陣は永野一男の部屋の前の共用廊下に集まり、人が通れないほど混雑して、襲撃犯が「ちょっと通してください」と言いながらやって来る映像が残っています。この頃はオートロックも一般的ではなかったので、取材関係者だけでなく、これから永野一男を殺害しようとする襲撃犯までマンション内に堂々と入っていたのです。

※マンションの共用廊下に集まった報道陣(中央の人物は襲撃犯)

この写真の後、中央の男は一緒に来たもう1人の男と一緒に窓ガラスを割って室内に侵入し、豊田商事社長の永田一男を殺害します。テレビ放送中に起こった殺人事件として、日本中を震撼させることになります。

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やがてこうしたマンション内に押しかける取材は、不法侵入として取り締まられるようになり、その後はマンションの敷地外の入り口付近に取材陣が集まるようになりました。スキャンダルを起こした芸能人は深夜にこっそり帰宅することが多いため報道陣は深夜まで張り込みを行い、ひとたびターゲットの芸能人が現れれば怒号が飛び交う取材合戦を展開していました。これではマンション住民が落ち着いた生活ができません。そのため有名人、中でも取材合戦が起こりそうな芸能人が、同じマンションに住むことを嫌がる人は多いのです。

また怒号が飛び交うような取材合戦がなくとも、同じ住民というだけで取材を受けることがあります。以前は小学生までテレビレポーターにつかまり、芸能人の普段の生活をあれこれ質問されていました。またマンションの前の道路や向かいのアパートに報道陣が陣取り、四六時中マンションを監視するなんてこともありました。同じマンションに住む有名人が事件を起こすだけでなく、結婚や離婚の噂が出るだけで騒動になるのですから、他の住民に嫌がられるのも当然なのです。

報道でバレた女優のマンション

もう何年も前のことですが、ある女優さんの夫がスキャンダルを起こしました。朝の情報番組では、自宅から出てくる女優さんを報道陣が囲んで取材をしている映像が何度も放送されていました。当時は物件名がわからないように配慮されて映されていたものの、現在のように建物全体をモザイクで隠すことまではしておらず、エントランス周辺などは普通に映っていました。このマンションは私が務めていた デベロッパー のマンションで、この女優さんが購入したことは一部の社員の間では有名でした。

その日の午後、某大手不動産デベロッパーの方と打合せをするために出向くと、「今日は朝から御社のマンションがずーっとテレビに出てますね」と言われました。何のことでしょうかと惚けてみましたが、エントランスの雰囲気やタイルの色、建物の造りからどのデベロッパーが建てたマンションかは大体の予想がついてしまうのです。デベロッパーごとに特徴があるので見る人が見ればすぐにわかってしまい、この時も惚ける私を無視して「管理会社は大変なんでしょうね」と言われてしまいました。このようにして気がつく人は気がつき、芸能人がどこのマンションに住んでいるかはすぐに広まってしまうことがあります。そして案の定、ネットにはこのマンションの住所とマンション名が書き込まれていました。そのためこの女優さんを一目見ようと、野次馬も集まるようになっていました。

※JR福知山線の事故でも建物の特色からどこのマンションかすぐにわかりました。

また最近は野次馬がネットで「○○マンションにマスコミの人が押しかけてきた」などと投稿するので、あっという間にマンションが特定されてしまいます。静かに落ち着いて生活したい人からすると、これはあまり歓迎できることではありません。有名人がいるというだけで、生活が一変してしまうことがあるのです。

高級マンションのジレンマ

有名人・芸能人の方で成功している人は、プライバシーに神経をとがらせています。そのためプライバシーが守られる高級マンションを選びます。これは賃貸マンションでも分譲マンションでも同様です。オートロックがあり管理人やコンシェルジュが常駐して、誰もが簡単に入れないような高級マンションが選ばれるのですが、そのようなマンションは有名人でなくても静かに暮らしたい一般人の富裕層にも好まれます。

そうやって高いお金を払っている一般の富裕層からすると、スキャンダルを起こして報道陣が詰めかける可能性があるマンションには住みたくないと考えます。そのため分譲マンションでは、そのような芸能人が買ったという販売の現場に出ると「歌手の○○が、このマンションを買ったって聞いたんですけど本当ですか?」といった質問をする人が多くいます。購入者を明かすわけにはいかないので、良識のある営業マンは「お答えできません」としか言わないのですが、このように探りを入れる人は多くいるのです。そして良識のない営業マンが「そうですよ」などと答えようものなら、あっという間に噂が広がってしまいます。

芸能人が住む賃貸マンションは多くない

このような事情のため、芸能人は賃貸マンションを借りるのも大変です。大家さんの中には芸能人には貸したくないと考える人も多いので、芸能人が住めるマンションには限りがあります。そのため同じマンションに何人もの芸能人が住んでいることがあり、誰かが出て行くと再び芸能人が入居することも珍しくありません。

場所や物件名は言えませんが、都内某所の有名な賃貸マンションは一見すると普通のマンションですが、政治家の家族や後援会の人の賃借人が多いのが特徴になっています。例えば与党の大物政治家と野党議員が差しで話をしたい時に、それぞれ時間をずらしてマンションに入って、同じ部屋で会っていたりするそうです。メディア対策として賃貸マンションを利用している訳ですが、以前はこのような密会は料亭で行われていました。しかし昨今は政治家が料亭を使うとバッシングが起こるので、マンションの一室を使っているのです。

このマンションには仕事で何度か伺いましたが、元プロ野球選手や俳優も住んでいて、プライバシーを守りたい人には人気のようでした。このマンションでは管理人が知らない顔の人が出入りする際には必ず声を掛けるだけでなく、清掃員も声を掛けてきます。私は仕事で伺って共用部の写真を撮っていたので、管理人以外にもいろいろな人に声を掛けられました。こういうセキュリティ意識の高いマンションで、オーナーが有名人でも関係なく貸すマンションには有名人が多く集まります。

まとめ

マンションに関しては、芸能人や有名人が住むことを嫌がる人は案外多くいます。静かに暮らしたい人にとって、スキャンダルを起こしてマンションにまで報道陣が詰めかけるのを心配しているからです。洋服やアクセサリーは芸能人が使うことで人気になったりしますが、マンションは正反対のことが起こっています。そのため芸能人の方は住まい選びには苦労することが多いようで、1つの賃貸マンションに芸能人が何人も住んでいるなんてことも珍しくありません。

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