水が消えていく謎の噴水 /原因は意外なものでした
共用部に噴水がついているマンションがあります。パースを描く時に見せ場となるので、販売時のインパクトが大きく豪華に見えることから一時期流行りました。今回は、噴水が設置されているマンションから受けた相談の話です。水が減っていく謎の噴水で、水が減ってしまう原因を調査しました。
水が消えている
マンションのエントランスの横に、噴水が設置されていました。人工の池と噴水はヨーロッパの観光名所のような雰囲気で、このマンションの特色になっています。池の水は絶えず循環し、濾過器を通って噴水として吹き上げられていました。つまり1度水を入れると、水は循環するだけで減らないようになっていました。
しかし毎月の共用部の水道使用料が5万円を超えており、絶えず水がどこかに流れているのは明らかでした。施工会社が池のどこからか漏水していると考え、水を抜いて調査を行ったそうですが、漏水している場所は見つかりませんでした。そこで池の底全て ウレタン防水 材で防水しましたが、やはり1ヶ月に5万円ほどの水道使用料が発生していました。
調査を開始
設計図書を見るとコンクリートで作られた池で、特別なことは何もありませんでした。角を鋭角にしないように工夫されていて、現地を見ても図面と同じように施工されています。 ゼネコン の調査記録を見ると、かなり緻密な調査を行っており、その調査は信頼できるように思いました。
噴水の池はウレタン防水が塗られていました。水に手を入れてウレタン防水部分を触ってみると、かなり弾力があるので必要な塗膜厚さも維持しているようです。ウレタン防水で処理されているのに水が漏れる場合、大抵は塗膜厚さが不足しているのです。しかし違いました。半日かけてあちこち見て行きましたが、水が漏れそうな箇所は発見できません。そこでゼネコンの担当者にヒアリングすることにしました。
意外な盲点
ゼネコンの担当者に話を聞くと、ほとんどお手上げという感じでした。ウレタン防水を行うのに、コンクリートの継ぎ目にはメッシュを入れて防水材の断裂を防いでいました。これは図面には記載されておらず、ゼネコンが独自の判断で仕様をグレードアップしたそうです。このように気を使っているのに、水が漏れていることに担当者は納得いかない様子でした。
2人であれこれチェックしていると、噴水が高く噴き上がりました。普段は30cmぐらいの高さしか出てないのですが、30分おきに60cmぐらいの高さまで噴き、1時間に1回は3箇所の噴き出し口から一斉に60cmの高さまで噴き出すのです。噴水で時間が解るようになっていました。その3箇所から噴水が噴き出した時に、私たち2人は霧状の水が全身にかかり濡れてしまいました。
まさかと思い、私たちの後方にある中木を見にいくと、びしょ濡れになっていて、一部の木が腐りかけていました。水は漏れているのではなく吹き上げられて霧状になり、池の外に逃げていたのです。
対策を講じる
池の周囲に新聞紙を並べてみると、少しでも風がある時に水が噴き出すと、霧状の水滴が池の外に大量に出ていることがわかりました。周囲が石やコンクリートならすぐに気がついたでしょうが、芝生なので見た目にはわからなかったのです。そこで常に30cm程度しか噴水が出ないようにして、1ヶ月待ってみることにしました。すると水道の使用料は激減していました。これが原因だったのです。
30分、1時間おきに噴水が高く噴くのを止める。風が強い日は、噴水の吹き出しを最弱にしておくという対策で、水道代が余計にかかることがなくなりました。
まとめ
これから1年もしないうちに、ここのマンションでは噴水と池の水を抜いてしまいました。水道代に注目が集まり、水景全体にかかる維持費にも注目が集まると、あまりに高額な維持費に批判が出て水を止めることにしたそうです。水がなくなった噴水は廃墟のような雰囲気になってしまったので、それをどうするかが課題になっていました。
今回は施工したゼネコンが、丁寧な施工をやっていたので漏水以外に目を向けることができました。トラブルの原因は思わぬところに潜んでいることが多く、早期に解決できたのは運が良かったと思います。