事例 新築マンションに発生したゴキブリ
マンションが竣工し、購入者の入居が始まりました。すると入居開始日にクレームの連絡がありました。「ゴキブリが出た。新築なのにどういうことだ」とお怒りの様子です。なぜ新築なのにゴキブリが出たのか?これはマンションの建築に携わる人ならすぐに原因がわかります。なぜゴキブリが出たのか原因は明確なのに、説明が難しいのです。今回は新築マンションに発生したゴキブリの話です。
ゴキブリの一生
ゴキブリには沢山の種類がいますが、主に住宅で見かけるのはクロゴキブリやチャバネゴキブリでしょう。卵として生まれたゴキブリは、1ヶ月前後かけてふ化し、数ヶ月から1年ぐらいの期間を幼虫として過ごし脱皮を繰り返します。そして成虫になると数ヶ月で死んでしまいます。全国的に広く見られるクロゴキブリは、成虫になると500個ほどの卵を産むので、1匹のゴキブリの侵入が家の中をゴキブリだらけにしてしまうのです。
クロゴキブリなどは寒さに強く、冬眠して越冬します。そのため成虫になったゴキブリの成虫は、200日くらい生き続けるようです。チャバネゴキブリの成虫も150日くらいは生き続けますが冬眠はせず、1年で二世代以上は増殖するようです。
ゴキブリの巣はどこにあるか
ゴキブリにはハチやアリのような、形成された巣はありません。ゴキブリの糞にはフェロモンがあり、糞があるところにゴキブリが集まってきます。こうしてゴキブリが集団生活をする場所ができるので、これを名目上は巣と呼んでいるのです。巣になりやすい場所は、多くの統計からわかっています。条件としては以下のものが挙げられます。
・直射日光が当たらないが暖かい場所
・湿気がある場所
・水とエサがある場所
これらの条件に合致する台所が、最もゴキブリの巣になりやすいのです。冷蔵庫の裏や生ゴミを入れるゴミ箱、キッチンの収納内部などがゴキブリの巣となっていることが多く見られます。逆に言うと、これらの条件を無くしてしまえば家の中でのゴキブリの繁殖は抑えられることになります。
ゴキブリの活動時間
基本的にゴキブリは夜に活動するので、基本的に昼間は見かけません。そのため自宅にゴキブリがいるにも関わらず、それを知らない住人は大勢います。人が寝静まって真っ暗になってから、ゴキブリが活動を開始するのです。しかし昼間にゴキブリを見たという経験のある方も多いと思います。夜に活動するはずのゴキブリが昼間にも活動しているのは、ゴキブリの数が増えたからです。
ライバルが増えるとエサの確保や交尾のパートナーの獲得が難しくなります。そこで昼間もエサを求めて活動するようになるのです。また巣が大所帯になると居心地が悪いと感じるゴキブリもいるようで、他の巣を求めて移動を始めます。昼間にゴキブリを見かけるようになると、かなりの数のゴキブリがいると考えられるのです。
工事現場にゴキブリはいない
上記の巣の条件を考えると、工事現場にゴキブリが住み着くのは困難です。まずエサがありません。さらに暖房も使わないので工事現場は底冷えがします。 躯体 工事の間は水がありますが、内装工事が終わると中には水すらありません。ゴキブリが住むには最も適していない条件が揃ってしまうのです。そのため施工業者が食べ物を散らかすようなバカなことがあったとしても、ゴキブリが住み着くことは難しいのです。基本的に工事現場にゴキブリはいません。
なぜ新築マンションに?
なぜ新築マンションに引っ越したその日に、ゴキブリが発生するのでしょうか?これはほとんどの場合、引っ越した人が持って来た家具の中にゴキブリがいたからです。持って来たタンスやソファ、キッチンに置く収納棚などにゴキブリが潜んでいて、マンションに持ち込まれているケースがほとんどなのです。そのため「ゴキブリが出た。新築なのにどういうことだ」というクレームは、本当に対応に気をつかいます。
「あなたがゴキブリを連れてきました」と説明するのに苦労し、ゴキブリに妙に詳しい人が デベロッパー には何人かいたりします。私も説明するためにゴキブリの勉強をして、客観的な事実を並べて説明していました。ゴキブリは夜に活動するため自宅でゴキブリを見たことがないという人も多いので、自分がゴキブリを連れてきたとは思わない人が多いのです。
まとめ
新築マンションに引っ越した日にゴキブリが出たら、持って来た家具にゴキブリがついてきた可能性が高いです。せっかく家具を動かすのですから、家具の裏にゴキブリの糞がついてないかを確認してみましょう。ゴキブリは夜間の活動が多いので、自宅にゴキブリがいないと思っていても案外いることがあります。新築のマンションや戸建てに引っ越して、すぐにゴキブリが出ても落ち着いて対応してください。