建物検査に使う道具を紹介します /7つ道具の紹介
長期修繕計画の見直しや、大規模修繕工事の準備でマンションを訪れることが増えてきました。その時に建物検査をするのですが、私がどのような道具を使ってどんな検査を行っているのかを紹介したいと思います。今回は、身につけている道具を中心に7つ紹介したいと思います。細かいことを言えば他にもいろいろあるのですが、あまり細かいことを書くとマニアックになっていくので、代表的な道具を書いていきます。
①打診棒
タイルの浮きを検査する際に使うのが打診棒です。タイルの表面をこれでなぞることで、タイルが浮いているかどうかがすぐにわかります。タイルがコンクリートに付着している場合はカラカラと硬い音がするのですが、浮いていると木琴を叩いたような音や軽い音がします。以下の動画を見ていただければ、その違いがすぐにわかると思います。
私が使っているのは先端が丸いタイプですが、異形のカボチャ玉と呼ばれるものやニンニク玉と呼ばれるものもあります。こちらの方が音の違いを聞き取りやすいと評判なので、次に買うときはそちらにしようかと思っていますが、なかなか壊れることもないので長年これを使っています。その他、タイル検査以外にも、写真を撮る際にどの部分が悪いのか指し示す棒としても使っています。ちなみにこの打診棒は、土牛産業のものです。
②フラッシュライト
地下ピットや天井の中を見る際に、懐中電灯が必要になってきます。しかし光が弱いと奥の方まで見渡せないことがあるので、少し明るめのフラッシュライトを持ち歩いています。私が使っているのは、ストリームライト社のプロタック1L-1AAというライトで、明るさが最大350lm(ルーメン)のモデルです。
手のひらに収まるサイズですし、軽いところが気に入っています。一応の防水性もあり、IPX7(1mの深さに30分沈めても浸水しない)となっているので、雨の日や水が溜まったピット内でも気にせず使っています。このちょっと明るめのライトは出番は少ないのですが、忘れた頃に役立つので必ず持っていくようにしています。
③クラックスケール
コンクリートのひび割れを測る道具です。樹脂製やアルミ製などがあり、数百円でホームセンターでも購入可能です。樹脂とアルミとどちらが良いかはその人の使い方や状況で変わるのでなんとも言えません。ひび割れの幅によって補修方法が変わってくるので、コンクリートの幅を知っておくことは重要になってきます。
④デプスゲージ
主に目地の深さを測るために持ち歩いています。目地に針をさして、深さを確認します。見た目にはきちんと目地が入っているのに、適切な深さをとっていない見せかけの目地があります。特にタイル面の誘発目地は、実際には目地を入れていないのにタイルの間隔を広げて目地を入れたように見せかけているだけのケースがあります。
また耐震スリットが入っていないにも関わらず、表面だけシール材を打って誤魔化しているケースもあります。そういった見せかけの目地を見つけるのに、デプスゲージは役に立っています。
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⑤点検鏡
これを持ち歩いていると、必ずスカートの中を覗く道具だと言われるのですが、これは点検鏡という名前で販売されている立派な検査ツールです。鏡の先端にライトがついているタイプもありますが、私の用途ではそこまでは必要ないので最もシンプルな点検鏡を持ち歩いています。
よく使うのが、パラペットのアゴ下の目地の確認です。しゃがんで覗き込むことで、すぐに確認できるのですが、検査の時は他でもしゃがんだり立ったりすることが多く、足腰への負担が激しいのです。ですから、なるべくしゃがまなくて良い点検鏡は重宝します。
⑥コンベックス
メジャーと言った方がわかりやすいと思います。私は5.5mの長さで、ロック機能があるものを使っています。コンベックスにはいろいろな長さのものがあるのですが、目地の間隔などを測ることもあるので、最低でも5.5mは欲しいと思っています。
コンベックスはゼンマイバネが内蔵されていて、巻尺部分は手を離すと巻き取られてしまいます。しかしロック機能があるタイプだと、手を離しても巻き取られないのです。またこれらの機能に加えて、落下防止機能がついたタイプを使っています。これはポケットやベルトに挟んでいると、しゃがんだり立ったりする時に落とすことがあるからです。もし落としたのが足場の上だと、数メートル下まで落下して事故に繋がる可能性があります。ですから落下防止機能も必要なのです。
それともう一つ、保護カバーがついたタイプであることも重要です。これは万が一落下させた時に、床を傷つけないために保護カバーが必要なのです。特にフローリングの床になっている集会室などに入って検査する場合は、床を傷つけないか気を使うので、保護カバーがあると安心できます。このコンベックスはTAJIMAのものです。
⑦芯ホルダー
芯ホルダーは直径2mmの芯を使うシャープペンシルです。鉛筆の芯と同じ太さなので鉛筆のように使えますが、鉛筆と違って芯が短くなっても軸を削る必要がありません。芯ホルダーはメモをする際にも使っていますが、建物内で寸法を測る時にコンクリートなどに目印を書く際に使っています。目立たないですし、後で消すのも簡単なんです。
現場監督をやっていた頃、最初は鉛筆を使っていました。しかしカッターナイフでしょっちゅう鉛筆を削ることになるので、芯ホルダーを使うようになりました。写真の2本はかなり前から使っているもので、青い軸の方はドイツのステッドラー、茶色の軸は三菱鉛筆です。どちらも製図などでは定番の芯ホルダーです。
番外編:カメラ
以前はデジカメを持ち歩いていましたが、今はスマホで撮影しています。スマホで撮影するのはプロっぽくないと言われたことがあるのですが、(株)ルクレが出している「蔵衛門工事黒板」というアプリが便利なので、これを使うためにスマホを使用しています。工事写真を撮る際にはどの部分のどの写真なのかを黒板に書いて、一緒に写真を写すのが一般的です。そのため現場監督は、黒板とチョーク、そしてカメラを持ち歩いていたのですが、このアプリは黒板を持ち歩かなくても黒板を写真に写すことができます。
私が行う検査では黒板を使わなくても良いのですが、後で写真を整理する時にどこで撮った写真かわからなくなることがあります。そこでアプリで黒板に記入して撮影することで、どこで撮影したか後からもわかるようにしています。とても便利な機能なので、今のところスマホ以外で撮影しようとは思っていません。
まとめ
以上が、現時点で検査の時に使っている道具です。今後、もっと良いものがあれば差し替えていくと思いますし、追加することもあるかもしれません。中身が入れ替わることがあれば、また紹介したいと思います。