マンションの獣害被害 /動物が現れたらどうすれば良いのか

近年、東京で野生動物の目撃が増えています。以前から多摩地区などの西部では野生動物の目撃情報が多くありましたが、近年では東京東部でも増えているようです。先日、江戸川区の保健所の方から話をお伺いしたので、東京の獣害とマンションでの対策について書いてみたいと思います。

東京の獣害の実態

東京都の獣害の実態は、令和3年2月に東京都産業労働局農林水産部が発表した「第5次東京都農林業獣害対策基本計画」に、詳しく出ています。被害は平成24年以降は緩やかな上昇傾向で、平成14年からハクビシン、平成15年からアライグマの被害が確認されているそうです。また都市的地域も、ハクビシン、アライグマ、タヌキ、ネズミ等による被害が発生しているそうです。

以下のグラフを見ると、農作物の被害面積は減っていますが、被害金額が近年に上昇していることがわかります。

第5次東京都農林業獣害対策基本計画より

また被害を与えている動物の種類を見ると、このグラフからも平成14年頃からハクビシンの被害が急速に増えていることがわかります。そして近年になって、アライグマの被害が徐々に増えています。

第5次東京都農林業獣害対策基本計画より

ハクビシン

ハクビシンの特徴

中国大陸を中心に、マレーシアやインドネシアに多く生息している体長50cmから70cm程度のジャコウネコ科の動物です。雑食でイチジクやみかんなどの果実と、小動物や昆虫を食べます。夜行性で昼間の活動は少なく、餌を求めて夜間に行動します。餌を見つけると、同じ道を辿って餌を確保するため獣道ができます。農作物を食べることで獣害被害が発生していますが、住宅内に侵入して家具を食べられたケースもあるようです。

被害増加の理由

ハクビシンは古くは江戸時代から日本にいたという説もありますが、明確な記録に残っているのは1943年の静岡県浜名郡に残る狩猟記録だそうです。明治時代には毛皮用として中国や台湾から持ち込まれたとする説が有力だそうですが、明確にはわかっていません。そのため2005年の外来生物法の特定外来生物に指定されていません。

ハクビシンは郊外の雑木林などに住んでいましたが、餌を求めて電線を伝って住宅街に現れるようになりました。そのため個体の数が増えたというより、住宅街に現れるハクビシンが増えたということだと思われます。また狭いところにも簡単に侵入できるので、住宅の屋根裏などで繁殖するケースも増えているようです。住宅街で繁殖したハクビシンは、住宅街で餌を求めるので目撃が増えています。

アライグマ

アライグマの特徴

メキシコ、アメリカ、カナダ、エルサルバドルに生息する、アライグマ科の動物です。1930年代にはヨーロッパに輸出され、毛皮獣として珍重されました。体長は40cmから60cm程度で、夜行性の動物です。雑食で爬虫類や両生類、鳥類、魚類、哺乳類、昆虫類、甲殻類など幅広い肉食と、果実や穀類などの植物も食べます。動物の死骸を食べる姿や、生ゴミを漁る姿も目撃されていますし、スナック菓子などを人の目を盗んで食べることもあるようです。

被害増加の理由

さほど日本に馴染みのなかったアライグマが日本に浸透したのは、1977年にフジテレビで放送が始まったアニメ「あらいぐまラスカル」です。ほぼ1年間にわたり日曜日の夜に放送され、52話をもって最終回を迎えました。原作はアメリカの作家スターリング・ノースの自伝的小説で、主人公の11歳のスターリングと、アライグマの「ラスカル」との交流を描いたものです。このアニメは劇場版を制作されるなど人気で、現在でもラスカルは人気キャラとして定着しています。

このラスカル人気で、アライグマをペットで飼う人が増えていきました。日本に輸入されるアライグマが急増したのですが、アニメと違いアライグマは気性が荒く凶暴で、ペットには向いていませんでした。そのため持て余す人も多く、飼育を諦めて野に放すことも多かったようです。そういったアライグマが野生化し、日本のあちこちに生息するようになったようです。

マンションでの被害

これまで、東京都は農作物の被害や戸建への被害を中心に対策してきました。しかしマンション施設内に野生動物が出没するケースが増えていて、ゴミ置き場でゴミを漁っていたり、1階のバルコニーや専用庭で目撃される例が出てきているようです。都内での獣の被害が増加しているため、マンションでも目撃情報も増えているようです。アライグマなどは凶暴なので噛み付くこともあり、目撃しても近づかないようにしましょう。

保健所の対応

以下は江戸川区の保健所の方にお聞きした、保健所の対応です。獣害被害が発生した場合、保健所は現地調査を行って足跡や獣道などを探し、罠を設置します。罠は今ではホームセンターなどでも売られている檻のようになっているタイプです。罠の管理は住民が行い、定期的に罠を確認します。動物がかかっていたら指定された番号に電話をし、業者が動物を回収してくれます。

以下は江戸川区保健所が配布しているリーフレットです。

分譲マンションの場合

分譲マンションで獣害は発生した場合、まずは管理会社に連絡しましょう。保健所に直接電話しても良いですが、マンション共用部に勝手に罠を仕掛けることができないうえに、「有害鳥獣捕獲依頼書」の申請者には管理組合理事長の名前を書く必要があります。そのためマンション内に罠を設置するには、住民1人の申し込みではなく、理事会で話し合うことが必要になってくるのです。

理事長を知っているなら理事長に相談するのも良いと思いますが、理事長を知らなければ管理会社に電話して、理事会の議題にしてもらうのが良いでしょう。その際に、動物の目撃情報や被害が発生していれば、その状況などを説明すると良いと思います。被害状況の写真などがあれば、それを合わせて送るとなお良いと思います。

まとめ

都内に動物が出没することが増えており、獣害の被害も拡大しています。そのため保健所では対策事業を始めてい流ので、困っている方は相談することをお勧めします。しかしマンションの場合は、共用部に勝手に罠を設置することはできませんので、管理会社に連絡して理事会で話し合ってもらうことをお勧めします。

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