バルコニーとベランダは何が違うのか /言葉の違いだけなのか
不動産の間取り図を見ると、バルコニーと書いてあったりベランダと書いてあったりします。バルコニーとベランダの違いをご存じでしょうか。バルコニーもベランダも、窓から外に出るスペースです。マンションでは大抵はバルコニーと表記されていますが、戸建にはベランダと表記されているケースが多くあります。この二つは何が違うのでしょうか?現在の日本ではほとんど同じ意味で使われていますが、厳密には少し意味が違うのです。今回はバルコニーとベランダは何が違うのかを考えてみます。
言語が違う
バルコニーはイタリア語で、ベランダはポルトガル語です。言語が違うということは、国によって建築文化も違うのでバルコニーとベランダは異なるものだとわかります。イタリアといえばオペラですが、オペラ座にはバルコニー席が存在します。劇場の高い位置にある座席は日本では桟敷(さじき)と呼ばれるものがありますが、バルコニーは桟敷ともちょっと違いますね。桟敷は古代祭祀における神招ぎの場(おぎのば)とされた「さずき」と呼ばれるスペースがありました。それが平安時代に入ると貴族の祭り見物のために仮設される見物席の称に用いられるようになります。やがてそれが興行時の高級な観客席として定着したものです。
またバルコニーは日本語では露台と書かれていることもあります。バルコニーやベランダを日本語に当てはめたもので、俳句の季語にもなっています。しかしこれがベランダなのかバルコニーなのか曖昧な場合がほとんどで、バルコニーでもベランダでも露台で通じるようです。そもそも日本語では、バルコニーとベランダを分けて考えていなかったのかもしれません。
世界一有名なバルコニー
イタリアのヴェローナには、世界一有名なバルコニーがあります。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台になったバルコニーで、ジュリエットがロミオに聞かれているとも知らず「おお、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」と独り言を言っていたのが、このバルコニーです。もっとも元々この家にはバルコニーはなく、観光客の要望に応えてバルコニーを造ったそうです。そのため観光客用のバルコニーとも言えます。
今でも人気の観光スポットで、バルコニーに立ち入ることも可能です。ここでジュリエットの真似をする観光客が沢山いるようですが、当然ながらロミオの真似をしてバルコニーによじ登るのは禁止されています。この写真のようにバルコニーとは、屋外に突き出た部分で、屋根がないのが特徴です。
ベランダとは
こちらは長崎県のグラバー園にある旧三菱第2ドックハウスの写真です。長崎はポルトガルとの貿易を長年行っていたので、ポルトガル風の建築物が多くあります。この建物は三菱の長崎造船所の第2ドックの側にあり、船員などの宿舎として使われていました。こちらの2階の外部に面している部分がベランダになります。。バルコニーとの違いは、屋根が付いていることです。日本建築に例えるなら、縁側のような存在と言う人もいます。ちなみに1階部分はベランダではなくテラスと呼ばれています。
屋根があるかないかの違いだが
厳密に言うと屋根があればバルコニー、屋根がなければベランダということになります。しかし現在の日本では、この使い分けはほとんど意味がなく、バルコニーもベランダも同じ意味になっています。建築基準法施行令では「バルコニー又はベランダ(以下「バルコニー等」という。)」と書かれており、区別して呼ぶ必要はないと思います。ちなみにマンションにはルーフバルコニーと呼ばれる部分がありますが、ルーフ(屋根)に作られたバルコニーという意味です。そのためルーフバルコニーの下は住戸になっています。
まとめ
バルコニーはイタリアから、ベランダはポルトガルからやってきた言葉で、異なる文化背景があります。屋根がないのがバルコニー、屋根があるのがベランダですが、現在の日本では明確な使い分けはされていません。あまり気にせずに使っていけばいいと思います。