すぐに謝罪するアフターサービス担当は誠意がない?/良いサービスを受けるためのコツ

新築マンションを購入して入居します。ところがそのマンションに施工不良などの不具合が見つかりました。こういう場合には売主のアフターサービス担当がやってくるのですが、開口一番に「申し訳ありません」などと謝罪を口にする人が多くいます。日本では「まず謝れ」とよく言われるので、まず謝罪から入ることが多いのですが、これは誠意に欠ける行為かもしれません。

アフターサービスの目的は謝罪か?

新築マンションを購入した人が、わざわざ不具合があることを電話して担当者に来てもらったのは、謝罪してもらうことが目的でしょうか。もちろん謝罪すれば気が済むという人もいますが、多くの場合はそうではないでしょう。不具合を補修したり交換したりして、元通りにして欲しい場合の方が多いと思います。そのため謝罪されて満足していてはダメです。どうして欲しいのか、自分の希望を明確に伝えなければなりません。

謝罪が目的ではないのに、謝罪をされてもあまり意味がありません。謝罪をされるよりも、今後どうするかを話し合うことが重要になります。しかし現実では延々と謝罪の言葉を担当者が並べ、クレームを入れた人はそれに文句を言うといった光景が見られます。一方的に文句を言っている人が優位に立っているように見えますが、実はこれがクレーム担当者の作戦だったりします。

曖昧な指示を受けてやって来る担当者

アフターサービスの現場では、クレームが会社に入ると上司から「とりあえず謝ってこい」と言われて、とりあえず謝りに担当者が現れることがよくあります。何を指示されたわけでもなく、どうするべきかもわからず「とりあえず」謝りに来るのです。この場合、上司の意図は「お金をかけずに、なんとか相手を納得させろ」か「まずは謝罪して、相手の出方を見ろ」です。どちらも費用をかけないで、クレームを処理したいという意思があります。

こういった背景があるので、クレーム担当者は最初に謝罪をします。開口一番に「この度は、ご迷惑をおかけし申し訳ございません」といった決まり文句を発して、なんとか穏便に(お金をかけずに)終わらせたいのです。ここに誠意があるかというと、あまりありません。そもそも目の前で謝罪している人は、単なるアフターサービスの担当者に過ぎません。その人がミスを犯したわけでもなく、単に担当だから頭を下げているに過ぎないのです。

そもそも謝罪するべきなのか?

アフターサービスの現場では、謝罪が必要になる場合もあります。しかし最初に会ってすぐに謝罪が必要なケースは、あまりありません。そもそも何が起こっているのかわからないので、謝罪のしようがない場合がほとんどなのです。

ガスが使えないというクレームで行ってみれば、ガスを開栓する手続きを行っていなかったり、洗面所が水浸しになったというクレームで行ってみれば、洗濯機の排水の繋ぎ方が悪くて漏れていたりなど、売主や施工会社の責任ではないことも珍しくありません。初めての住まいですから、勝手がわからずトラブルを自ら引き起こすケースもたくさんあるのです。

何が悪いかわからない状況で「申し訳ありません」と言うのは、何に対して謝っているのでしょうか?何に対しても謝っていないのです。「とりあえず謝ればいいんでしょ?」という開き直りすら感じる無責任な行為でしかありません。しかしなぜかとりあえず謝れば場が落ち着くこともあるので、とりあえず謝っているわけです。この時点でクレームを入れた人も、アフターサービスの担当者も問題を解決するという当初の目的から逸れてしまっているのです。

謝罪より必要なもの

クレームが発生したのは、顧客にトラブルが起こったからです。そのためアフターサービスとは、顧客が抱える問題を解決することになります。問題を解決するために最も重要なのは、事実確認になります。何が起こっているのか、なぜそれが起こったのかを明らかにしなければ、何も解決できません。

そのため本気で問題を解決しようとする担当者は、意味のない謝罪などせずに、すぐに何が起こっているのかを確認します。そして原因の追求を始めます。顧客が抱える問題を解決するためにやって来た担当者にとって、最も重要なのは「何が起こっているか」であり「なぜそれが起こったのか」だからです。

事態を真剣に考え、解決をしようとしている担当者ほど安易な謝罪をしません。何を謝るべきかもわからない時から謝罪の言葉を並べるのは時間を無駄にするだけですし、誠意ある行動でもなんでもないからです。

アフター担当者から見る謝罪の問題

とりあえず謝らないと怒り出す人も多いので、何を謝れば良いかわからないけど謝っておこうと考えるアフター担当者は多くあります。しかしこれが事態をややこしくすることがあります。これはアフターサービスではないですが、スクールゾーンに侵入してしまう自動車を自治会で注意しようとしたケースがあります。

最初はドライバーに「すみません」と声を掛けていました。しかし多くのドライバーは呼びかけを無視したり、注意されると文句を言う人もいました。そこで声の掛け方を「すみません」から「おはようございます」に変えました。すると無視されたり文句を言われたりすることが減ったのです。これは「すみません」と謝ったことで、ドライバーと自治会の間に上下関係ができてしまったからです。

目下の人が何かを言ってきているのですから無視できますし、注意をされると腹が立ちます。しかし「おはようございます」では対等な関係なので、無視するのは失礼になるからです。このように下手に出すぎることで上下関係を作ってしまい、その後の話し合いに支障をきたす場合があります。アフター担当者が謝罪のためではなく、本来の問題を解決するためにいるのであれば上下関係などはないはずです。相手の言いなりになってしまい、いつまでも問題を引きずることに繋がりやすいのです。

損なクレームの入れ方をする人

①謝罪にこだわる

トラブルが発生してアフターサービス担当がやって来ると「まず謝れ」と謝罪に固執する人は、案外多いものです。これまでに書いてきたように、これは時間を無駄にするだけですし、謝ったとしてもその謝罪に誠意はありません。要求されたから謝っているだけです。そんな謝罪をさせて、なんの利益があるでしょうか。

また謝罪の後にも怒鳴り散らしたり、文句を延々と言い続ける人がいますが、これも時間の無駄です。これまでの対応に不満があるなら、整理して説明しないと怒鳴りつけるだけでは話がまとまりません。これらの人の多くは自分のイライラをアフターサービス担当にぶつけて解消しているだけで、問題の解決を遅らせてしまいがちです。担当者に問題のある箇所を速やかに見せて、困っている内容を具体的に説明することが重要です。

②説明をしない

「プロなんだから説明しなくてわかるだろ」みたいな態度の人がいますが、これも悪手です。問題を解決するには、なるべく多くの情報が必要です。情報が少なければ少ないほど、考えられる原因の可能性が多くなっていきます。そのためそれぞれを検証するのに時間がかかるのです。以前、体重計が騒音の原因だった件を書いたことがありますが、情報の提供が多いほど可能性を絞り込むことができます。

腹を立ててアフター担当者と口をききたくないという心情はわからなくもないですが、せっかく時間を作っているのですから解決に向けて前進した方が建設的です。何が起こっているのか、いつから起こっているのか、決まった時間に起こっているのかなど、アフター担当者にとって有意義な情報を持っているのはクレームを入れた人なのです。

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③具体的な要求をしない

クレームが発生し、アフターサービスの担当者が来たら、自分の要求を早めに伝えることが重要です。補修工事をして欲しいのか、部品を新品に交換して欲しいのか、迷惑料や慰謝料が欲しいのか、マンションそのものを買い取って欲しいのかなどです。希望通りになるかはわかりませんが、自分の要望を伝えておかないと問題の解決を遅らせることになりかねません。時々「誠意を見せろ」と曖昧なことを言う人がいますが、これは典型的な解決を長引かせる悪手の一つです。

こういう例があります。オプションの作り棚のサイズが間違っていたというトラブルで、デベ側は50万円かけて改修することを決めました。アフター担当者が50万円の稟議書を書いて社内で合意が得られたのです。しかし工事の日程を決める時になって、棚が小さいために置けない荷物をレンタル倉庫に入れているので、その費用も負担して欲しいという要望が出ました。2万円程度ですが、アフター担当者は再び稟議書を書くことになります。

レンタル倉庫の費用も社内合意が得られて、ようやく工事を開始しようとすると、今度は迷惑料を求められました。こうなるとデベロッパーでは、最初から審議をやり直すことになります。当初は担当者が50万円で問題を解決できると言うから、上司は了承したのです。迷惑料の話が出てくると、これは全く別の議論が必要になります。最初からレンタル倉庫料の負担や迷惑料の話が出ていれば、デベロッパーも早くから審議できたのですが、後から要求を小出しにされると、その度に話し合いが必要になって解決が遅れるのです。

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まとめ

クレームを入れた際に、確実に相手が悪いとわかっていれば謝罪があっても良いとは思います。しかし何が原因かもわからない時に謝罪をするようなことがあれば、何に対して謝罪をしているのか尋ねてみるのも良いでしょう。日本ではよく言われる「まず謝れ」という言葉ですが、これに拘っても問題解決にはなりません。むしろ拘ることにより、問題解決を遅らせることの方が多いと思います。何が起こっているのか、どうして欲しいのかを正確に伝えて、より良いサービスを受けることに注力しましょう。

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