ほとんどのマンションでお金が足りなくなる7つの理由

ほとんどのマンションで修繕積立金が不足し、将来的に修繕ができなくなると考えられます。「大手の管理会社に任せているから大丈夫」「長期修繕計画の通りにやっているから心配ない」と考えている方もいるでしょうが、実際には修繕積立金が安く設定されているため、将来的に足りなくなるマンションが多くあるのです。今回はなぜマンションの修繕積立金が不足してしまうのかを解説します。

毎月徴収される修繕積立金

マンションに住むと、管理費と修繕積立金が毎月徴収されます。この2つはまとめて引き落とされるため、それぞれいくらか把握している人は少ないのですが、ぜひ管理費と修繕積立金がそれぞれいくら払っているかを知っておきましょう。マンションの資産性を保つうえで、この2つの支出が適正なのか、それぞれ慎重に考えていかなけえればならないからです。

修繕積立金は、マンションの修繕や維持管理に使われるお金です。その大部分はおよそ12年ごとに行う大規模修繕工事に使われます。管理費は管理会社に払うお金ですが、修繕積立金はマンション管理組合の口座に貯められる住民全員の貯金です。つまり修繕積立金は、全住人の資産といえます。

しかしマンション購入者にしてみれば、ローンに加えて毎月これらを払わなくてはいけません。さらに自動車を持っている人は駐車場代も加算されるので、ローン以外に何万円ものお金を毎月払うのは負担になりがちです。ですから、誰もが安く抑えたいと思います。ところが修繕積立金は、将来的に安くなるどころ値上がりするようになっているのです。ほとんどのマンションでお金が足りなくなると書きましたが、その足りなくなるお金は修繕積立金です。ではなぜ修繕積立金が不足するのか、その7つの理由を解説したいと思います。

理由1:設定金額が安すぎる

上記のように、ローン以外に支払う金額が多いということは、購入者にとって大きな負担になります。そこでマンションを販売する デベロッパー は、販売しやすいように修繕積立金を低めに設定します。本来は管理費も低く設定したいところですが、多くのマンション・デベロッパーはグループ会社に管理会社も持っているので、管理費をあまり低くすると同グループの管理会社の収益が悪くなってしまいます。そのため修繕積立金ばかりが低めに設定されることになるのです。

低めに設定された修繕積立金を貯め続ければ、いつか足りなくなるのは当然のことです。しかしいつか足りなくなるのがわかっているのですから、修繕積立金が安すぎたとわかる日が必ず来ます。それなのに、なぜデベロッパーは低めに設定してしまうのでしょうか。それは修繕積立金が安すぎたとわかるのが、10年も20年も先だからです。銀行に借金をしてマンションを建設し、完売しなければ利益が出ないマンション事業を行うデベロッパーにとっては、10年も20年も先のことよりも工事を始めるマンションが来年の竣工までに完売できるかの方が遙かに重要なのです。ですから多くのマンションでは、修繕積立金が低めに設定されてしまいまうのです。

理由2:修繕項目が怪しい

修繕積立金の算出は、長期修繕計画というマンションを維持管理するための計画表を作成するところから始まります。管理会社のほとんどは長期修繕計画表の標準フォーマットを持っており、それにマンションのさまざまな数値を当てはめることで作成しています。この標準フォーマットには、さまざまな項目が書かれているのですが、マンションごとにその項目を削ったり足したりすることになります。そこでミスが起こることがあります。

私はいくつものマンションの長期修繕計画を見てきましたが、マンションには存在しない項目が書かれていたり、逆にマンションにあるのに長期修繕計画表には書かれていないものを見つけることがよくあります。例えば長期修繕計画表には「発電機」と書かれているのに、マンションには発電機がないなんてことは珍しくありません。酷いケースでは、長期修繕計画表にはエレベーターが4基と書かれているのに、マンションには3基しかないこともありました。

このように項目が違う長期修繕計画表を元に修繕積立金を集めていれば、実際のマンションの維持管理にお金が足りないという事態が起こってしまいます。そのため管理組合は早い段階で、長期修繕計画がの項目が実際のマンションと合っているかをチェックする必要があります。万が一違っていれば、毎月支払っている修繕積立金の額は全く意味がないものになってしまいます。

では設計図で全ての数量を拾うことが可能でしょうか?残念ながら不可能です。設計図には描かれていない部分が沢山あり、工事をしながら決める部分が多々あるからです。そのためタイルの数量などが、少なめに算出されていることは珍しくありません。長期修繕計画そのものが少ない情報を元に作成されているため、修繕積立金が低く設定されている可能性があるのです。

理由3:修繕項目の数量が怪しい

修繕積立金は、長期修繕計画表を元に算出されると書きました。その長期修繕計画表はマンションの図面を元に作成されます。まだ工事が着工していない時点で長期修繕計画表を作成するのですから、図面以外に頼れるものがないからです。そのため、正確な情報が詳しく描かれていない図面を元にしていたら、正確な長期修繕計画を作ることができなくなってしまいます。

マンションを建設するには、何種類もの図面が作成されます。まず最初に作成されるのが「確認申請図」です。これは 建築確認 を申請するための図面で、建築基準法などに適合していることを示すための図面です。そのため建築基準追うで規制されない部分は描かれていないか、描かれていても後から変更されることがよくあります。例えば外壁の仕上げ材は法律で指定されません。そのため確認申請図には外壁の仕上げ材が塗装なのかタイルなのかは描かれていないことがありますし、仮に塗装と描いてあっても後でタイルに変更することはよくあるのです。

建築確認が下付されると、次に「実施設計図」を描きます。これは確認申請図よりも詳細な図面で、仕上げ材なども細かく描かれています。この実施設計図で ゼネコン と請負契約を結びマンションが建設されることになります。そしてゼネコンは実施設計図を元に「施工図」を描きます。これは実施設計図では実際に職人が工事をするには不明な点が多いため、より詳細で具体的な図面を描く必要があるからです。こうして複数の図面が作られることになるのですが、図面に記載されている情報量は以下の順に多くなります。

確認申請図 < 実施設計図 < 施工図

管理会社が長期修繕計画を作成するのに使う図面は、多くの場合は実施設計図になります。マンションの販売は着工と同時に始まることがほとんどのため、実施設計図で行うしかないのです。しかし実施設計図はゼネコンが躯耐図を描く過程で不整合が見つかったり、変更が起こったり、そもそも全ての部位を描いているわけではないので、工事を進めながら施工図で描き足すことがよくあります。マンション工事が終わる頃には実施設計図は赤ペンで大量の書き込みが行われ、それを元に竣工図が作成されて管理組合に引き渡されることになります。

※マンション外壁のタイル

つまり実施設計図は完成したマンションとは異なる部分が多く、実施設計図を元に拾った数量は決して正確とは言えないのです。そのためゼネコンがタイルを張るために発注した数量と、長期修繕計画に書かれている数量では20%も違ったことがありました。長期修繕計画表に書かれている数量は、実際のマンションとは大きく異なる場合があるのです。

理由4:30年目以降の工事項目がない

長期修繕計画は最低でも30年間のスパンで作ることになっています。しかしエレベーター、機械式駐車場の交換は30年以上過ぎてから行うことが多いですし、お風呂や洗面台の流しの排水に使われる排水管の交換は40年以上過ぎてから行われるケースがほとんどです。こういった交換工事は30年の長期修繕計画に盛り込まれていない場合が多く、これらのお金が不足することがあるのです。

長期修繕計画を細かく見ると、これら30年目以降の項目が欄外に書かれていて、修繕の金額もきちんと算出されている例もあります。しかしこれらの項目が全く書かれていなかったり、項目は書かれていても金額が出されていない場合があります。築30年を過ぎてから、これらの費用を貯めることは困難です。修繕積立金の大幅な値上げが必要になりますし、その頃は住民の多くが年老いているので値上げをしたくても支払い能力がない場合が多いのです。

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理由5:3回目以降の大規模修繕が高額になる

ほとんどの長期修繕計画は30年の期間で作られており、大規模修繕は12年ごとに行われます。上記の理由4「30年目以降の工事項目がない」と関連することですが、、長期修繕計画に大規模修繕が2回しか含まれおらず、3回目以降の記載がないのです。そして本当にお金がかかってくるのは、3回目や4回目の大規模修繕工事です。自動車もそうですが、最初の車検よりも2回目、3回目の方が車検費用がかかります。古くなった分だけ費用がかかるのは当然で、マンションも古くなればなるほど費用が掛かるようになっていきます。

何にお金がかかるかというと、30年過ぎた頃にやってくるエレベーターや機械式駐車場の交換、給水管・排水管の交換、電気ケーブル等の交換などです。長期修繕計画表の中には、これらが全く記載されていないケースもあり、築30年を過ぎてから多額の修繕積立金が必要になることが多く、気がついた時には資金が足りないということになりかねません。

理由6:12年周期で大規模修繕を行う

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインに、大規模修繕が12年周期で書かれています。90年代は10年周期で書かれていましたが、2000年頃から12年周期で書かれるようになりました。これを理由に「大規模修繕工事は12年ごとに行うように国が言っています」と言う方もいますが、ガイドラインに書かれた12年周期は目安の期間に過ぎません。屋上の防水は10年で保証が切れるので、そこから2年ぐらいしてから防水層の補修を行うというのは、ある意味妥当な年数でもあります。しかし大規模修繕を、必ず12年で行わなければならないというわけではないのです。

12年周期で大規模修繕工事を行うと言うことは、36年で3回行うことになります。仮に18年周期で大規模修繕工事を行えば、36年で2回で済みます。この1回の差は大きく、修繕積立金を大きく節約することが可能になります。もちろん18年周期で行うには、防水を15年保証のものにするなど、さまざまな工夫が必要になりますが、すでに一部の管理会社は18年周期で大規模修繕工事を行う動きが出ており、野村不動産パートナーズはre:Rremium(リ・プレミアム)の名前でサービスを始めています。

世の中には賃貸マンションを1棟所有している人もいますが、12年で大規模修繕工事を行うのは稀です。15年や20年経ってから行う人だっています。公共建築物(市役所や学校)に足場をかけて大規模修繕工事を行うのは、20年ぐらいが多いと言われています。しかしなぜか分譲マンションだけが、12年という短い周期で大規模修繕工事を行っています。

では12年周期で大規模修繕工事を行うのがダメかというと、そんなことはありません。短いスパンでどんどん補修していくのは、建物の保全を考えると効果が高いのです。しかしこのやり方では、大きな費用がかかることになります。

理由7:大規模修繕業者の談合

国土交通省も警告しているように、施工会社の談合が横行しています。管理組合から仕事を請け負ったコンサル会社が、自分の知っている数社に見積もりを作らせ、あたかも競争入札のように見せて実は施工会社が談合しているのです。そして施工会社が受注した工事費の10%から20%がコンサル会社に支払われています。1億円の工事発注なら、実に1000万円から2000万円がコンサル会社に流れていることになります。これは工事費に含まれるので、管理会社にとって大きな損失になります。

見積書は各社が提出するが、最初からA社が落札することが談合で決まっている。
A社は10%以上のバックマージンをキックバックする。

これだけのバックマージンをもらうコンサル会社は、コンサル料金を格安にして仕事を得ようとします。後から大金が入るなら、コンサル料はただでも利益がでるのですから、いくらでも安く設定できるのです。そのため格安のコンサル会社は要注意と言われています。国土交通省が警告を出すようになった背景には、このような悪質なコンサルタントの横行がありました。コンサルタント選びもかなり難しい時代になったと言えるでしょう。

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食い物にされる修繕積立金

修繕積立金の計算根拠になる長期修繕計画の項目も数量も怪しく、意図的に低く設定された修繕積立金は、ほとんど根拠のない金額になっている場合が多々あります。さらに12年に1度という短いスパンで大規模修繕工事を行い、コンサルタントや管理会社ににバックマージンまで取られるとなると、管理組合にいくらお金があっても足りなくなってしまいます。そのため管理組合にはなるべく早い段階で長期修繕計画の見直しを行うことをお勧めします。そして建築単価は年々変わっていくので、5年に1度くらいは見直す必要があります。

そうしなければ、20年後30年後に修繕積立金を2倍どころか3倍や4倍に増やしても足りないという事態がやって来るかもしれません。実際に1万3000円くらいだった修繕積立金を、6万5000円にしなくれはならなくなった管理組合も存在します。しかしこれほど極端な値上げは払えない住民も多く、修繕積立金が足りなくなるとわかっていても値上げができない状況に陥ってしまいます。

まとめ

修繕積立金が適正なのか、大規模修繕の費用は適切なのかは定期的にチェックする必要があります。そして最も大事なのは、住民の皆さんがマンションの将来に危機感を抱き、協力してマンション運営を行うことだと思います。理事は輪番で回ってきますが、嫌がる人が多いのが事実です。しかし皆さんの財産を守るための活動ですから、ぜひ積極的に参加してください。

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