マンションと無理やり託児 /穏便に済ませることは難しい

先日、マンションの修繕に関する相談を受けてマンション理事会にお邪魔したのですが、そこでマンション内に無理やり子供を預ける人がいるという話が出ました。理事会として注意して欲しいという話が議題に上がっており、本来は私が意見するところではなかったのですが、思わず意見を述べることになりました。

託児の状況

託児されているのは理事の1人Aさんで、託児しているのはマンション内の住民Bさんです。Bさんが入居してきたのは10ヶ月ほど前で、旦那さんと3歳児の3人で住んでいるそうです。そのBさんとは特別親しかった訳ではないのに半年ほど前から「仕事があるけど託児所に空きがない」と、たびたびAさんに預けるようになったのだそうです。Aさんは夫婦2人で生活していて共働きですが、Aさんはリモートワークが多いので在宅していることが多いので、Bさんに頼られたのだろうとご本人が言っていました。

託児の依頼が始まった頃は、数週間に1回程度だったそうです。しかし最近では毎週のようにやって来るようになり、2日続けて預けることもあるようです。預ける理由は「仕事があるから」というありがちなものから、「実家に行かなくてはいけないから」「風邪を引いているから」「買い物に行くから」などの謎の理由が増えているそうです。Aさんは見るからに優しそうで、ご本人も頼まれると断れない性格と言っていました。

しかしあまりの頻度の多さに、自宅での仕事にも影響が出始めており、断ることにしたそうです。しかしBさんは「大丈夫だから」とよくわからない理由を言って押し付けるようになります。Aさんがご主人に相談すると「玄関を開けてはダメ」と言われたので、インターホンで対応しました。しかしBさんは「玄関前にいるからよろしくね」と去っていき、本当に玄関前に子供を置いていたそうです。

理事会での議論

迷惑しているにも託児を続けているのは理事会としても看過できないということになり、Bさんを呼んで事情を聞こうという話になりました。Aさんが迷惑しているため、Aさんだけでなく他人に無理な託児をするのを止めるようにお願いし、託児所などの利用を勧めることになりました。また経済的な事情などで託児所を利用できないケースもあるため、どうしようもない場合は理事の家庭でも協力するという話になりました。

私は修繕のコメントを求められて理事会に出席していたのですが、あまりの危機意識の希薄さに、ここで思わず口を挟んでしまいました。昔は他人のお子さんを預かることもよくあったと思いますが、現在ではさまざまなリスクが潜んでいて、大きなトラブルに発展することが珍しくないのです。

託児のリスク

他人の子供、ましてやそれほど親しくない人の子供を預かるのは、さまざまなリスクがあります。親切心だけで預かると、思わぬ落とし穴が待っていることがあります。

①子供のアレルギー・持病

食物アレルギーを持っている子供は多くいます。Aさんが最初に預かった時に、食事を与えようとして好き嫌いがないか質問したそうです。その時にバナナにアレルギーがあるから食べられないと言われました。バナナ以外のアレルギーはないと言っていたそうですが、3歳児が自分の全てのアレルゲンを知っているとは限りません。事前に親に確認しておかないと、安易に食べ物を渡すのは危険です。

しかも小さな子供は、親も知らないアレルギーが発症する可能性があります。万が一、子供が救急車で搬送されるようなことになったら大変です。ましてや今回のようにBさんとは特別親しくないAさんが預かるのは、子供に何かあった場合にトラブルの火種になりやすいのです。また持病を持っている子供は、どういう症状が現れ、その場合はどう対処するかを事前に知っておかないと、初期対応のミスで重症化することもあるので、トラブルになりがちですし、最悪の場合は子供の命を危険に晒します。

②子供の怪我

1日中、張り付いて子供の様子を見ることができるならともかく、Aさんのように在宅で仕事をしながら子供を見ていると、どうしても目を離す時間が増えていきます。子供によっては他所の家の物珍しさから、あちこちを見て回りたがり触りたがります。また家の中の段差などにも気がつかないことがあります。そのためどこで怪我をしても不思議ではありません。

ましてや今回のAさんは、子供のいない家庭です。小さな子供がいる家庭では、ガラスコップなどの壊れて怪我をしやすいものは子供の手が届かないところに置いてあります。そういう配慮は子供のいない家庭では気づかないことが多いですし、突発的に動き出す子供の行動は予想外の結果に繋がりやすいのです。

③部屋の器物破損

子供は悪気なく物を壊すことがあり、それによって預かっている部屋に損害が出ることがあります。私の友人の子供は、ビデオデッキにビデオテープではなく煎餅を差し込んで壊しました。本人はビデオデッキにも煎餅を食べさせたいと思ったのだそうです。このように子供は予想外の行動で、家電屋何やらを壊してしまうことがあるのです。

他人の子供を預かって、その子供が家の中の何かを壊してしまった場合、その責任をどうするかが問題になります。安価な物ならまだしも、パソコンなどの高価なものだった場合にはどのように対処するかが面倒です。何かを壊されたら相手方に弁償してもらうと考える方もいるでしょうが、そもそも嫌がる相手に無理やり子供預けるような人に、真っ当な話が通じるでしょうか。話がこじれる可能性があります。

④緊急連絡先の確保

子供に何かあった場合、親に連絡する必要があります。怪我をした場合、発熱した場合、アナフィラキシーショックが出た場合など、緊急で連絡しなくてはなりません。そのため相手の連絡先を知らないのは論外ですが、携帯電話の番号を交換するだけでは不十分なことがあります。接客業など仕事中は携帯電話に出られない人もいますし、事務職でも会議中などは電話に出られない場合があります。

一刻を争う必要があるときに、必ず繋がる連絡先が必要になります。そのため夫婦両方の緊急連絡先が必要ですし、携帯だけでなく会社の電話番号なども必要になります。子供に万が一のことが起こった場合の連絡先なので、複数の連絡先を交換して確実に連絡が着くようにしておかなくてはなりません。緊急時に連絡が行かなければ、これもトラブルの火種になります。

⑤家庭内トラブルに巻き込まれる

なぜ相手が嫌がっているのに無理やり託児を行うのでしょうか。本来は自分で面倒を見る子供を預けるのは、子供を預けて自分は何か別のことをするためです。もちろん急な仕事で子供を預けるところがなく、苦肉の策でお願いするケースもあります。しかし何度も何度も無理やり預けるのは、仕事以外の事情が潜んでいるケースがあります。

この手のケースでは、ギャンブル依存症でパチンコに行くために子供を預けたり、不倫をするために子供を預ける人もいます。そういったケースでは善意で子供預かっている人も、不倫やギャンブルの片棒を担いでいることになりかねません。安易な親切心が、相手の家庭内トラブルに巻き込まれてしまうのです。

個人でできる対応

無理やり託児を依頼された時には、ハッキリと断ることが必要です。繰り返し来る人に対しては、ボイスレコーダーを使って断っている様子を録音することも必要になります。また預かる条件として、念書を書いてもらわなければ無理だと言うのも良いと思います。念書の内容は上記に書いたリスクのことや、緊急連絡先やアレルギー、持病の有無、子供に何かあった場合には免責になることや、部屋の物を壊した際には弁償することなどを書くのです。理由をつけて念書を拒む人なら、後々面倒なことになる可能性が極めて高いと思ってください。

また断るのが苦手な人は、結婚している人なら「妻がダメだと言っている」「旦那に怒られる」と、配偶者が反対していることを言えば良いですし、単身者なら家族がちょくちょく来るからといった理由でも良いでしょう。そしてそれでも相手が粘るようなら、家族同士での話し合いを行うことになります。もし託児の目的がギャンブルや浮気なら、配偶者は託児をしていることを知らないケースがほとんどです。ですから配偶者に話をすることで、問題が解決することもあるのです。

それでも勝手に家の前に置いていかれるようなことがあれば、児相相談所や警察への連絡することになります。ここで役に立つのが、ハッキリと断っている様子を録音したボイスレコーダーです。断っているにも関わらず、無理やり子供を置いていったということは育児放棄の可能性も出てくるからです。録音は証拠になるので、児童相談所や警察が動きやすくなります。

理事会での対応

基本的には理事会で対応する案件ではありません。管理組合は共用部の管理を行うので、その代表者が集まる理事会は各家庭同士の問題を取り上げることはないのです。もし託児する人があちこちの家庭に依頼し、被害が拡大しているのであれば理事会で取り上げることも可能でしょう。しかしそうでなければ理事会で取り上げる必要はないのです。

そうは言っても、同じマンションの住民がトラブルになっているのだから助けたいと考える理事会もあるでしょう。その場合は、上記の家族同士の話し合いの立ち会いを行うのが良いと思います。理事会に呼んで話し合いをするのも良いですし、別に時間をもうけて理事が立ち会うのも良いでしょう。ただし気をつけなくてはならないのは、最終的な決定は当事者に決めさせることです。あくまでも家庭間の問題なので、理事会には何の権限もないのです。

例えば警察を呼ぶと言い出した時に、理事会が「そんな大袈裟にしなくても」などと言ったりすると、それは家庭への不当な干渉になってしまいます。問題が大きくなってしまった場合、理事会に警察に通報するのを止められたから被害が拡大したと言われかねないのです。この問題が拗れて、子供の怪我や家の中で高価なものが破損した場合、損害賠償の請求が理事会のメンバーにも及ばないとも限りません。

穏便には済まない

今後も同じマンションに住み続けるのだから、なるべく穏便に済ませたいと考えるのは普通のことです。しかし自分の子供を頻繁に預けたり、勝手に子供を置いていくような人は普通の思考ではなく、穏便な解決は難しいのが現状です。またやむに止まれぬ事情があるにしても、他人に子供を押し付けなければならない事情というのは、かなりの異常事態に陥っていることになります。どちらにしても、穏便にはいかないのです。

安易に穏便に済ませようとすると、特定の誰かに負担を押し付けることになり、その人の我慢の限界が来るまで解決を先送りにしているだけなのです。穏便に済ますことができるなら良いですが、冷静に状況を考えて思い切った手段に出ることも必要になるのです。

まとめ

この手の問題は、あまり大袈裟にしたくないという意識が働きます。しかしお邪魔した理事会では、他人の子供を預かることを、あまりに簡単に考えていたのでここにも書いてみることにしました。特にあまり親しくない人の子供を預かると、何かあった際に責任問題が大きくなります。この手のトラブルは増えているので、理事会などに相談があった際には慎重に対応してください。

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