マンションの床は何が良いか /フローリング・カーペット・畳

リフォームをする方から、マンションの床材について質問を受けることが増えました。フローリングが主流ですが、それぞれの床材にもメリットがあります。今回はフローリング・カーペット・畳、それぞれの床材の特徴を踏まえて、マンションの床は何が良いか考えてみたいと思います。

かつてマンションの床は畳だった

日本の住宅の床は、平安時代から畳でした。そのため日本のマンションの床も当初は畳から始まります。1926年(大正15年)から建築が始まった日本初の鉄筋コンクリートマンション、同潤会アパートでも、床が畳になっている部屋が多くあります。当時の日本人の生活には、畳が欠かせませんでした。同潤会アパートの内装は、小津安二郎の映画「東京物語」などで見ることができます。

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戦後のマンションは、1955年に設立された日本住宅公団が主導します。当時は最先端のマンションを公団が発表し、民間は公団を追いかける形でした。その日本住宅公団が最初に標準プランとして採用した間取りが51Cで、以下のようなものです。畳敷の個室が2つにダイニングキッチンがついています。

※日本住宅公団の標準プラン51c

ダイニングやトイレは無垢のフローリング、というより板張りといったイメージの床になっていますが、個室は畳敷です。公団の内装仕様は以下のリンク先の12ページに出ています。これを見ると個室は畳がずっと使われてきたことがわかります。

UR都市機構 `ING REPORT

マンションの床の種類

①フローリング

フローリングは木材を使った床仕上げで、無垢(単層)材と複合材に分かれます。無垢(単層)材は天然の丸太から板を削り出した1枚板でできているフローリングで、自然の風合いや質感が特徴になります。一方、複合材は何枚もの薄い板を重ねて作られたもので、無垢に比べて反りや収縮が少ないという特徴があります。使用する表面の化粧材によって「挽き板」と「突き板」、「シート」などの種類があります。

何層もの薄い板を重ねた上に、2mm程度の厚さの化粧材を貼ったものを挽き板と言い、複合フローリングの中では高級品になります。突板は挽き板と似ていますが、表面の化粧材の厚さが0.2mmから0.6mm程度の薄いものを指します。シートは化粧材が気ではなく、木目を印刷したオレフィンシートなどを貼り付けたもので、最近では最も多く使われているフローリングになります。

現在の新築マンションのほとんどがフローリング主体で、そのフローリングのほとんどが複合材です。以前のマンションでは突き板のフローリングが多く使われていましたが、最近ではシートが圧倒的に増えています。突き板では木目に関するクレームが多く、それを解決したのがシートでした。印刷物なので綺麗な木目ばかりになっています。

②カーペット

カーペットには天然繊維系のものと、化繊のものに分かれます。天然繊維の代表格はウールで、高級ホテルの廊下や居室に敷いてあるのもウール素材です。他にはコットンや、珍しいところではリネンやシルクもありますが、それらをマンションで見ることはほとんどありません。化繊はポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレンなどがあります。

一時期はマンションの床と言えばカーペットと言えるほど、多く使われた床仕上げです。フローリングは音が響きやすいという問題があり、マンションの騒音問題に繋がっていました。しかしフローリングが遮音性を高めてくると、徐々にカーペットは使われなくなっていきます。90年代くらいまでは、洋室はカーペットでリビングがフローリングでした。しかし埃が蓄積したりダニの繁殖が懸念され、今ではカーペットは人気のない仕様になっています。

地方独立行政法人 大阪府立産業技術総合研究所の実験によると、人が室内を歩く際にフローリングはカーペットの10倍ものハウスダストを巻き上げるそうです。ウールのカーペットは埃を吸着させるので、歩いてもハウスダストが舞い上がらず掃除機で吸うと掃除ができる優れものです。しかしマンションでは安い化繊のカーペット(主にナイロン)が多用されたため、この良さが伝わらないままフローリングの人気に押されてしまいました。

③畳

古くから日本で親しまれてきた床材で、現在は不人気ですが在日外国人を中心に再ブームの兆しがあります。本来の畳は高機能な床材で、断熱性と吸放湿性を持つので高温多湿になりやすい日本のマンションには適した床材です。また遮音性が高いのも特徴で、上下階の音が問題になりやすいマンションでかつては多用されたのも当然です。しかしかつてのマンションは断熱があまり施されていなかったので、天然素材ゆえにカビが発生しやすいというデメリットもありました。

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そこで畳の内部にあたる畳床に、従来の藁ではなくスタイロフォームなどを使った畳がマンションでは主流になっていきます。スタイロフォームは断熱性が高く、藁床に似た感触で軽量というメリットがありました。また定型の畳が使えないマンションでは、スタイロ畳の方が製造が容易にできるというメリットもあり、マンションの畳の主流になっていきます。その一方で、藁床に比べて吸放湿性が低いというデメリットもありました。2000年頃ぐらいまでは和室のあるマンションが多くありましたが、最近ではほとんどの新築マンションは洋室のみになりました。そのため畳の床は減っていますが、リフォームなどで畳が見直されています。

④クッションフロア(CF)

塩化ビニルでできた厚さ1.8mmから3.5mm程度の床材です。防水性が高いので、トイレや洗面所、キッチンなどに使われます。最近は木目調のCFが人気ですが、分譲マンションで居室に使われることはほとんどありません。賃貸マンションやアパートなどでは部屋全体がCFということがあります。

※素材が木に見えますが塩化ビニル製です

最大の特徴はビニール製ならではの耐水性ですが、工事が簡単で安価というのもあります。また掃除のしやすさも多いなメリットでしょう。最近では防カビ性や消臭機能などを備えたものもあります。カラーバリエーションや柄も豊富なのも魅力だと思います。デメリットは、どうしても他の床材に比べると安っぽく見えるということで、そのため新築マンションでは水回り以外にはほとんど使われていません。

洋風の暮らしを形だけ取り入れた反動

日本のマンションの歴史は、欧米の暮らしへの憧れが大きく影響しています。戦後に多く放送されたアメリカのテレビドラマの影響は大きく、そこに登場するダイニングキッチンは多くの人の憧れでした。日本住宅公団はダイニングキッチンを採用し、欧米のような生活を日本に持ち込みました。その後も欧米のような暮らし方への憧れが畳離れに繋がり、現在もフローリングが主流になっています。

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しかし欧米のような暮らしは間取りや内装仕上げや家具などの形ばかりが輸入され、ライフスタイルは日本独自のままでした。日本では畳で長らく過ごしてきたので、座るときは畳の上にあぐらをかき、時には畳の上に寝転がります。一方で欧米の多くは靴で室内に入るため、床の上に座ることはもちろん寝転がることはありません。室内で床に座ったり寝転がるのは、とても行儀の悪い行為なのです。しかし日本では床を畳からカーペットやフローリングに変えた後も、床の上に寝転がる生活が当たり前になっています。

フローリングの上は埃が舞いやすくカーペットは埃が溜まりやすいので、カーペットやフローリングは、寝転がるには全く不向きな仕上げです。またフローリングは段差などができやすく、裸足で歩くには向いていません。欧米人は室内を靴で歩き座る時は椅子を使いますし、寝転がる時はソファかカウチの上です。現在の日本の住宅事情は、欧米のライフスタイルの形だけを取り入れた住宅で、昔ながらの日本人の生活をしているためミスマッチが起こっているのです。それを感じた人達が、リフォームなどで畳に回帰しています。全面を畳にするのではなく、薄くてカーペットのように敷ける置き畳を部分的に敷く人が多いようです。

どの床材が良いのか

このようにマンションの床材には多くの種類があり、それぞれの個性があります。また形だけ洋風の暮らしを取り入れた結果、生活と内装仕様のミスマッチも起こっています。そのためどの床材がマンションに最も適しているかではなく、それぞれのライフスタイルに合った床材を選ぶことが重要だと思います。床に直接座ったり寝転がる生活をしたい方は、部屋の一部に畳を敷くと快適になるでしょう。下階への騒音が気になる人は、カーペットの方が音が響きにくいので検討しても良いかもしれません。

フローリングが良いという方は、ソファにオットマンを用意すると足を伸ばして座ることができるので良いかもしれません。またフローリングは溜まった埃がエアコンの風などで巻き上がりやすいので、こまめに掃除機をかけていく必要があります。カーペットは汚れた時などの手入れ方法を、事前に確認しておく必要があります。リフォームなどで床を変える際には、自分のライフスタイルと好みに合わせて最も良いものを選びましょう。

まとめ

マンションの床はフローリングが主流ですが、カーペットや畳など複数の種類があります。またフローリングには無垢と複合材、カーペットには天然素材系、化繊系があり、畳にも数種類があります。それぞれ特性が違うので、床選びの際には注意しましょう。床材選びは単なる素材選びではなく、ライフスタイルを合わせて検討することが重要です。フローリングばかりに拘るのではなく、さまざまな種類の床を見ていくと、自分にピッタリな床材に出会うかもしれません。

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