マンションの防犯を考える/「令和3年の刑法犯に関する統計資料」を見る

「刑法犯に関する統計資料」は、警察庁から毎年発表している資料です。以前に「令和2年の刑法犯に関する統計資料」の内容をまとめたことがあるので、今回は令和3年版を見ていきたいと思います。この資料を見ていくことで、マンションの防犯について考えることが可能です。それでは見ていきましょう。

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侵入窃盗の種類

住宅での犯罪といえば、最初に思いつくのは住宅に侵入する侵入窃盗です。この侵入窃盗は主に3つの種類があります。この記事には以下の3種類が出てくるので、抑えておいてください。

空き巣・・・留守中に侵入して窃盗を働くこと
忍込み・・・就寝中に侵入して窃盗を働くこと
居空き・・・在宅時に侵入して窃盗を働くこと

そして今回の結論を先に書くと、戸締りと鍵の管理で侵入窃盗のリスクは大きく減ります。侵入窃盗の多くは鍵のかかっていない玄関や窓から侵入するケースが多く、鍵をかけていてもポストやパイプスペースに鍵を隠して出かけると、それを使って侵入されるケースが大部分を占めています。ここから先は、それを示すデータになります。

令和4年の侵入窃盗発生件数

令和3年に発生し侵入窃盗事件は37,240件で、そのうち住宅で発生した侵入窃盗事件は 17,283件です。侵入窃盗事件は年々減少していて、検挙率は上昇しています。ただし令和2年から3年にかけての侵入窃盗の減少は、コロナ禍によるリモートワークの増加も減少に影響しているようにも思います。しかし侵入盗の発生は年々減少の傾向が続いているのも事実で、実は侵入盗だけでなく多くの犯罪が2002年から2003年頃をピークに減少を続けています。

①空き巣の発生件数

留守宅に侵入する空き巣は、侵入盗が減っているのに比例して減少しています。ここに記載されている共同住宅は、分譲マンションだけでなく賃貸マンションや空き家等も含まれます。空き巣は4階以上よりも3階以下で発生することが多かったですが、全体が減少しているため、その差が小さくなっています。

②忍び込みの発生件数

住民が就寝中に侵入する忍び込みも、発生件数は減少しています。空き巣の発生件数に対して共同住宅での発生件数は10分の1以下になっています。戸建なら2階で寝ている隙に1階に侵入することは可能かもしれませんが、共同住宅の場合は寝ている場所と侵入する窓や玄関が同じフロアという場合がほとんどなので、忍び込みは難しいのかもしれません。

③居空きの発生件数

住民が在宅時に侵入する居空きも減少していますが、全体の件数は空き巣や忍び込みに比べてもリスクが高いためか少なくなっています。そして戸建に比べて共同住宅での発生が極端に少ないのは、忍び込みと同様の傾向です。

侵入窃盗の侵入場所と侵入方法

侵入窃盗がどの場所からどうやって侵入しているのかが、以下の表になります。最も多いものを赤字で、次に多いものをピンクで表記しました。

④空き巣の侵入手口

この統計から空き巣の侵入手口は、戸締りをしていなかった「無締まり」が大きな原因だとわかります。次に戸建やマンションの低層階ではガラス破り、マンションの上層階では施錠されていたドアを開ける「施錠開け」が多いことがわかります。低層階のマンションでは、戸締まりが最も有効な空き巣対策と言えるでしょう。

⑤忍び込みの侵入手口

住民が寝ている間に侵入される忍び込みは、その多くがマンションの表玄関から侵入されていることがわかります。表玄関を施錠するだけで、大きな防犯効果が期待できることがわかります。

⑥居空きの侵入手口

住民の在宅中に行う居空きは、施錠していない「無締まり」がほとんどです。しかも玄関からの侵入が圧倒的に多いので、在宅中でも玄関の戸締りが重要だとわかります。

施錠開けの方法

4階建以上の共同住宅で発生した施錠開けの方法は以下の通りです。大部分が合鍵を使って侵入されていることがわかります。合鍵とはその住戸の鍵を使って侵入する方法で、マンションのパイプスペースやポストなどに隠している鍵を使って侵入されています。鍵を巧みに隠しているつもりでも、泥棒からすると簡単に見つけられることが多いようです。

3階以下の共同住宅で発生した施錠開けの方法は以下の通りです。こちらも合鍵がほとんどです。鍵を自宅の外部に隠しておくのはリスクが高いと言えるでしょう。

マンションで有効な防犯対策とは

これらのデータから、マンションで有効な防犯対策は玄関ドアの戸締りと鍵の管理になります。世の中には防犯グッズが多く出回っていますし、それらの中には有効なものも多いと思います。そして防犯カメラの設置など、お金をかけてマンションの防犯対策を行う管理組合が多いですが、まず戸締りと鍵の管理を見直すように管理組合員に呼びかけてはどうでしょうか。特に夜中に窓や玄関の鍵を開けたまま寝るのは危険ですし、出かける際には戸締りを十分に確認する必要があります。また合鍵をポストやパイプスペースに隠すのは、すぐにやめるべきです。うまく隠したつもりでも、泥棒にとっては安易な隠し場所でしかないのです。身近なところから、防犯を見直していきましょう。

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