不動産の営業こそマンション購入を失敗しやすい理由

マンションの購入を考える際に、詳しい人にアドバイスを求めることがあります。その時に、不動産の営業の仕事をしている人にアドバイスを求めるという人も多いでしょう。しかし営業マンが常に正しいアドバイスをしてくれるとは限りません。今回は新築マンションの営業マンが、陥りやすいパターンを紹介していきます。当然ながら今回の話は全ての新築マンションの営業マンに当てはまるわけではありません。しかしこういう人もいるということは、知っておいて損はないと思います。

新築マンション営業のストレス

新築マンションの販売は、数億円から数十億円をかけた一大事業です。銀行から借金したお金で土地を購入し、マンションを建設して販売するのですが、完売してはじめて事業が完了します。この完売しなければ利益(損益)が確定しないのがミソで、とにかく営業マンは完売することを目指します。

また、いつ完売するかで利益が大きく変わってきます。銀行からお金を借りているため利子がつくからです。また販売期間が長ければ長いほど営業経費もかかるようになります。そのため竣工までに完売するのが理想で、営業マンは早く完売させるプレッシャーが常にかかっています。完売が1ヶ月遅れるごとに数百万円のお金が消えていき、利益が目減りして、やがて赤字になってしまいます。赤字ということは、土地を買い、プランを考えて販売するという膨大な手間をかけた挙句、やらない方が儲かったという悲惨な結末になるのです。

好景気に売りまくる営業マンはアゲアゲのパリピ

上記のようなプレッシャーにさらされ続ける営業マンですが、いつの時代も売りまくる営業マンがいます。その中で特に強いのが、人柄で売る営業マンです。理屈も何もなく「買いましょうよ」と言えば、なんとなくお客さんがその気になってしまう魅力を持っている人がいます。この手のタイプは、景気が良かろうが悪かろうが物件が悪かろうが良かろうが売ってしまう強さがあります。

逆に好景気の時にはバンバン売り、不景気になると弱い人もいます。この手のタイプは時代の空気を敏感に取り入れ、「今買わないなんて考えられない」という雰囲気を押し出しています。話を聞いているうちに、お客さんも今買わなくては時代に取り残されるような気がしてくるのです。この手の営業マンはパリピタイプで、お客さんの気持ちを盛り上げるのが得意です。しかし不景気になると、苦戦することが多くなります。

不景気に強い営業マンは、物語を作ったり理詰めで営業を展開することが多いように思います。買いたいという気持ちを盛り上げるよりも、買わなくてはならないと思わせるのが得意で、断る理由を潰していきます。このタイプの人は基本的に優しく見え、お客さんは自分が追い詰められていることに気がつきません。

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売れない営業は売れる理由を探す

上記のように激しいプレッシャーに晒されている新築マンションの営業マンは、売れないと会社での居場所をなくしていきます。そこでなんとかして売ろうと考え、売れる理由を必死に考えます。駅から遠い、価格が高い、専有部が狭いなどネガティブな理由を脇に置いて、物件の良さに目を向けます。

そして今マンションを買わなくてはならない理由を、必死に考えるようになります。今買わなければならない、買わないなんてありえない、買わないなんておかしいと自分に言い聞かせたりして、自分の気持ちも盛り上げていきます。これは自己暗示とか洗脳に近い作業で、自分に言い聞かせることで真実味のある説明ができるようにするのです。

中古物件の仲介とは違う世界

新築マンション販売は、会社に指示されたマンションを短期間で売り抜くことが使命なので、中古物件の仲介とは営業の仕方が全く異なっています。中古の仲介は、お客さんの希望や家族構成、収入などを聞いたうえでお客さんに合った物件を紹介することで成約に繋げます。しかし新築は、とにかく来場したお客さんをその物件に当てはめることになります。そのため、新築営業はお客さんのことを考えすぎると売れなくなることがあるのです。

私も営業をやっていた時に「土俵際まで持っていくのは上手いけど、最後に押し切れない」「買わない方が良いお客だと気づくと、すぐに力が抜ける」と何度も言われました。新築マンションの営業で、数字を積み上げるには相手の気持ちを考えないことも必要になるのです。そして売れなくなった営業は、お客さんのことを考える余裕がなくなり、自分を洗脳していきます。

客観的な判断ができない

こうやって自分を洗脳している人は、客観的な判断ができなくなります。買うべきかどうかを相談されても、買わない理由を常に否定することばかりを考えているため、買った方が良いという結論に陥りがちです。そのため相談者の現状をあれこれ聞きつつも、それを買う理由に結びつけて話してしまうのです。買うことが前提になっているので、買わないという選択がありません。普段から偏った思考で考えているため、客観的な判断が難しくなっているのです。

マンション購入で失敗した営業マンは少なくない

こういった思考に陥っているため、営業マンが自分でマンションを購入する際に失敗している例があります。最も多いのは、収入に対して高すぎるローンを組んでしまうことです。銀行のローンが通るからといって、最大限のローンを組んでしまいます。「無駄な出費を抑えて生活費を見直せば、このくらいの支払いは問題ないですよ」と言い続けてきた結果、自分も同じことをしてしまうのです。

こうなると収入の大部分が住宅ローンになってしまい、子供の学費や塾代がかかるようになると生活を切り詰めていかなければなりません。もう少し安いマンションにしておけば良かったと後悔します。その他にも駅から遠いマンションや高台にあるマンションを、営業トークであれこれ言って売っていたため、自分も大丈夫だと思って購入して後悔している人を何人も見ました。

まとめ

どんな分野においてもそうですが、肩書きだけで専門家だと信じるのは危険です。肩書きだけで、その人を信頼できるかは分かりません。その人がこれまでどのような仕事をどのような考えで行なってきたかが重要になります。今回は新築マンションの営業マンについて書きましたが、全員がこのような思考の持ち主というわけではなく、客観的なアドバイスをくれる人も多くいます。しかしこのような思考に陥った人がいるのも事実で、単に専門家の意見だからということで信じるわけにはいかないことに注意が必要だと思います。

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