同じ人がマンション理事を長年勤めるのは危険です

マンションに住むと自動的に管理組合員になり、何年かに1度は管理組合の理事をやらなくてはならなくなります。忙しい日々を過ごす方には理事の仕事は負担になり、理事にならなくて済むならそうしたいと思う方は多いようです。忙しい方がいる一方で、定年退職した方などは時間があるので、そういう方が理事を何期も引き受けることがあります。しかし同じ人がマンション理事を長年勤めるのは危険です。今回は同じ人が理事を続けるリスクに関してお話ししたいと思います。

マンションを国に例えると

区分所有法により、マンションを買った人は自動的に管理組合員になります。この管理組合員は、国に例えると国民になります。国民は政治家を選んで国会に送ります。マンションの理事会は、国会に当たります。国会で最も責任ある人は総理大臣ですが、マンションでは理事長がこれにあたります。

国会では様々なことが決定されますが、政治家が好き勝手に国家の運用を決められるわけではありません。憲法に定められた範囲で決定することになります。マンションには管理規約があり、これが憲法になります。そして国会で審議される最も重要な案件は税金の使い道です。マンションでは管理費や修繕積立金が税金にあたり、使い道が決定されます。

このように考えると、誰も理事になりたがらないマンションというのは、誰も政治家になりたがらない国家と同様で先行きが暗い気がしてきます。マンションの理事も多くの人が立候補するようになり、選挙で選ばれるようになれば今とは随分違ってくると思いますが、現実にはそうはなっていません。

管理組合の独裁化

誰も理事になりたがらないマンションで、何期にも渡って理事を引き受けてくれる方はありがたいですし、そういう方に申し訳ないという気持ちも出てきます。そうなると理事を続ける方の発言権が強くなり、やがて一部の理事の独裁を生むことがあります。その理事が言い出したことがそのまま理事会の決定になり、総会でそのまま決議されるということになるのです。

※こちらはチャップリンの「独裁者」

ほとんどマンションで理事の任期は1年です。ほとんどの理事が新人理事で、仕事を覚えながらこなしていく中、何期も理事をしている人はベテランなので仕事にもなれています。この経験の差も発言力の違いに繋がることになります。理事会全体が何期も務めているベテランに頼ることになり、その結果ベテランの発言に反論できなくなってしまうのです。

関連記事
管理組合理事長の暴走をどうやって止めるのか

独裁化の弊害

独裁になっても独裁者が全住人の利益を考えて活動している間は、不満が出ても大問題には発展しないでしょう。しかし権限を持つと利益誘導を行う人も出てきます。理事会が多額のお金の使い道を決めるにも関わらず、住民が無関心なために総会で何の反対もなく決まることが続くと、自分の意志1つで大金を自由に動かせると感じてしまうからです。

毎月1万円の修繕積立金を納めているマンションがあるとします。総戸数が300戸なら、毎月300万円が集まります。年間3600万円になり、10年間で3億6千万円が集まります。このような多額のお金の使い道を決める際に、自分の発言に反論する理事が誰もおらず、総会は無関心で反対なしにすんなり決まるとなると、どうしても悪意が芽生える人が出てきてしまうのです。ときどき、理事が管理組合のお金で飲み食いしていることが問題になることがありますが、そんなものでは済まない事件があちこちで起きています。

キックバックの横行

理事が管理会社や建設会社と組んで、利益供与を受けることがあります。マンションの修繕に300万円かかる工事があったとします。理事は特定の業者に発注することを約束する代わりに、業者にキックバックを要求するのです。そのため本来は300万円だった工事が350万円になり、50万円が業者から理事に支払われます。管理組合の財産である修繕積立金が、個人の懐に入っていくのです。

まだ300万円ぐらいなら可愛い額で、大規模修繕になると300戸クラスのマンションなら2億円から3億円の支払いになることも珍しくありません。そうなるとキックバックも数千万円になり、管理組合の損失も甚大になってしまいます。そしてキックバックは、よほど受け取る側か払う側がヘマをしないと発覚しません。キックバックがないか調査してくれと依頼が来ることがありますが、巧妙に隠されたら怪しくとも証拠が出てくることはないのです。

不正経理の横行

管理組合のお金を使い込む事件も、後を絶ちません。経理を一人の人に何年も任せていた結果、数億円の使い込みが発覚したなんてケースもありました。通帳と印鑑を一人の理事が管理し、定期的にチェックが行われないために、このような不祥事が起こっています。これも面倒な経理を引き受けてくれる人に、何年もお任せだったために、通帳を見せろと強く迫れなかったことから発覚が遅れている場合がよくあります。

※ツインタワー石打

最もセンセーショナルだった事例は、新潟県魚沼市にあるリゾートマンション、ツインタワー石打の横領事件です。公認会計士の男性が15年間も理事長を務めていたのですが、この男性が横領した額は11億円を超えていました。発覚した時点で7億円分は時効になっていて、残り4億円の返却を求めて管理組合がこの男性を訴えました。2億円ほどは改修の目処が立っているようですが、残りの2億は改修の目処が立っていません。

同じ人に何期も理事を任せない

理事になりたがらない人が多いため、時間がある人が何期も理事を務めている管理組合は多くあります。しかし問題が起こる管理組合では、同じ人が何期も務めて強権を握るようになってから不祥事が起こっています。なるべく多くの方に理事をやってもらい、透明性のある管理組合運営を行わないと大きな損失を被ることになってしまうかもしれません。住民の多くの方が積極的に参加することで、これらの不正防止に役立ちます。

誰もやりたがらない役目を引き受けてくれる方はありがたいですが、その方があらぬ疑いをかけられることにも繋がるので、全住民が協力して管理組合を運営していくようにしましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です