売り込みにきた怪しい業者さん01 /キッチンパネル

私は デベロッパー の品質管理室に長い間勤務していたのですが、その中の重要な仕事の1つに新商品の検証がありました。大手デベロッパーには多くの新商品の売り込みがあり、中には怪しすぎるものもあります。そんな中で印象に残っている売り込みにきた怪しい業者さんを紹介したいと思います。

活性炭素配合のキッチンパネル

その業者さんは飛び込みの営業でした。キッチンパネルの営業で、画期的な新製品を紹介したいということでした。この手の営業が来ると、受付の女性は私に連絡してきます。キッチンパネルに画期的な何かがあるとは思えませんでしたが、とりあえず話を聞く事にしました。そして出てきたのが活性炭素配合のキッチンパネルで、真っ黒なパネルでした。

※背面に張ってあるのがキッチンパネル

キッチンパネルとは何かを説明すると、コンロの周辺の壁面に取り付けるパネルのことです。 耐火性が高く、油や臭い、汚れがつきにくいことが求められ、以前はタイル張りが主流でした。しかしタイル目地が汚れるため、近年ではステンレスやアルミ、タイル、ホーローなどのパネルが用いられます。そして今回の営業では活性炭素が配合されたパネルだというのです。活性炭素は炭を高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔をもつ炭素のことです。

IHクッキングヒーター専用のパネル

ここで営業マンは、IHクッキングヒーターの危険性を説明し始めます。ガスを使わず電気でお湯を沸かしたり調理をするIHクッキングヒーターは、当時急速に普及していました。火を使わないから安全という触れ込みで、私がいたデベロッパーにも東京電力の担当社がメーカーの人を連れて売り込みに来ていました。そのIHクッキングヒーターは、電磁波を発しているので危険だとこの営業マンは力説していきます。

※IHクッキングヒーター

当時は電磁波過敏症も話題になっていて、私もかなり調べていました。強い電磁波を浴びたり、弱い電磁波でも長期間浴びることで頭痛や吐き気を感じてしまうのが電磁波過敏症ですが、IHクッキングヒーターの普及が進むとこれらの症状がメディアなどでも紹介されるようになりました。そしてこの営業マンは、活性炭素を配合したキッチンパネルは電磁波過敏症に有効だというのです。なんで活性炭素が電磁波に有効なのかサッパリわかりません。

電磁波を吸着するパネル

この営業マンは自信満々で「この活性炭素が電磁波を吸着するのです。どんなに強い電磁波がIHクッキングヒーターから出ても、これさえあれば安心です」と言います。この時点で私はヤバい人だと思ったのですが、面白いので質問してみました。「電磁波を吸着するとして、パネルがある後ろや横はいいのですが、IHクッキングヒーターの前面から出てくる電磁波は吸着できないですよね?」

これにも営業マンは自信満々で答えます。

「前面から出た電磁波も吸着します。電磁波が曲がってパネルに吸い付くのです」

唖然として口を開けたままの私に、営業マンは電磁波が曲がるメカニズムを延々と説明します。私が「このパネルはブラックホールですか?」と言うと、「何を言っているんだ?」という顔で営業マンが私を見ますが、こっちが何を言ってるんだ?という気分です。恐ろしいことに、この営業マンは悪徳営業をしようとしているようには見えず、本気で電磁波が曲がってパネルに吸着すると信じているようでした。中学校から理科をやり直せとは言うわけにもいかず、丁重にお引き取り願いました。

電磁波過敏症について

電磁波を浴びることによって頭痛や吐き気を引き起こすなど、健康を害する被害が言われています。しかし今のところ医学的に解明されておらず、疫学的な研究が進められている分野です。WHO(世界保健機関)がファクトシートを出し、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)がガイドラインを出していますが、その電磁波と健康被害の因果関係は明確になっていません。

症状を訴える人がいて、医学的に解明されていないため、怪しげな商売が入りやすい分野になっています。ここに出てきたキッチンパネルのように、明らかに変な商品も売られているので注意して下さい。

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