実際のマンションと竣工図の違い /なぜ異なるマンションができるのか

武蔵小金井のマンションで、設計図と実際のマンションが違うという問題が発生していることをブログに書きました。これに関して、なぜ設計図と実物が食い違うようなことが起こるのかと質問を頂きました。そこで今回は、実際のマンションと竣工図の違いがなぜ起こるのかについて、書いてみたいと思います。

意外と多い竣工図との違い

実際のマンションと竣工図の違いは、割と多くのマンションで発生していました。私がデベロッパーにいる頃の話で、約20年ほど前の話になります。竣工図と実物が食い違っていることが問題になり、数百棟の竣工図を調べたことがあります。すると100棟以上のマンションで、竣工図と実物に食い違いがあることがわかりました。

もちろん些細なものがほとんどで、管理組合にお詫びして訂正させて頂くことで解決できました。例えば建物内にある集会室のドアの塗装がOP(オイルペイント)と書かれていたのですが、実際は室内の塗装なのでEP(エマルジョンペイント)だったりなどです。またクロスの品番が違うとか、塗装と書いてある小壁にタイルが貼ってあったりなどです。

しかし中には図面ではエントランスが折り上げ天井になっているのに、現地に行くとまっ平だったりすることもありました。また屋根の一部がシングル防水と書かれているのに、現場はウレタン塗膜防水になっているなど、全く仕様が異なる例もありました。当然ながらこれらは問題になり、管理組合との話し合いが行われました。先日のプラウドタワーの竣工図と食い違った件も、話し合いと補修工事が続くと思います。

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建設中の設計変更

なぜこのようなことが起こるのかというと、建設中に設計変更が行われるからです。マンション建設の良くない面ですが、工事が着工した時点で細かい仕様が決まっていないことがよくあるのです。そのため工事が始まってから仕様を決定することが、多々あります。

またマンション建設はギリギリの予算で建設しているので、コストダウンを目的にした設計変更も盛んに行われます。もちろん販売資料に記載されている部分は変更できませんが、それ以外の部分は細々と仕様が変更されていることがあります。そのため設計図と現場が食い違うことが起こってしまうのです。

赤本の記録

建設中に設計変更が行われた場合は、設計図に変更内容を書き込んでいきます。この変更を書き込んだ設計図を赤本と読んだりしているのですが、マンションによっては大量に赤字が書き込まれていきます。設計変更以外にも設計図の誤記の訂正も含まれているため、設計図の精度が低いと赤字だらけになっていくのです。

竣工図の作成

竣工図は、この赤本を元に制作されます。竣工間近になり、これ以上の設計変更がないとわかった時点で変更された部分の手直しを行います。そのためこの作業はマンションの竣工間際に行われることがほとんどです。しかしこの時期はマンション建設も佳境に入っていて、バタバタと工事を行っています。図面を描く専門の人がいるなら別ですが、現場監督が全てを行うような現場ではなかなか時間が取れません。

また竣工書類は他にも大量にあります。竣工間際は工事を間に合わせるために現場がバタバタになり、竣工書類を作りために事務所内もバタバタになります。そうした中で竣工図は作成されるのです。そして忙しくなると、書類よりも現場を優先するようになりがちです。建物ができていないのに、書類を作っても意味がないと言わんばかりの雰囲気になるのです。

検査での指摘漏れ

マンションは、工事中も完成後も検査が行われます。役所の検査以外にもゼネコンの検査、設計監理者の検査、売主の検査があります。これだけ検査をしていれば、設計図との整合性がとれていないなんてことはないと思いがちですが、それでも指摘漏れは起こってしまいます。何度も検査を行うことで、検査に緩みが出ることがあるのです。もう何度もチェックしているから、間違いはないだろうという気の緩みです。

私が見た中にも、内覧会で間違いに気づくということがありました。設計図のトイレの姿図のところには「ウォシュレット(脱臭機能付き)」と書かれていて、販売資料にも同じことが書いてあります。しかし内覧会を行っている際に、購入者が「ウォシュレットは脱臭機能付きって書いてあった気がしますが、これにはついてないですよね?」と言われ、大騒ぎになりました。全てのウォシュレットが、脱臭機能付きではなかったのです。

なぜ誰も気がつかなかったのかと問題視されましたが、突き詰めると全員が「誰かがチェックしているだろう」と思っていたというオチでした。

重箱の隅をつつく人達

流石に最近はないですが、ホームインスペクションが流行理だした2000年代初頭には、変なインスペクターがいました。インスペクションとは、住宅の設計や施工の欠陥や不具合がないか調査することです。お金をもらって指摘が全くないと心苦しいのか、変なところに噛み付く人が結構いたのです。

例えば竣工図を元に室内の寸法を計り「廊下の幅は813mmと書いてあるのに、実際には811mmしかない」といったクレームをつける人もいたのです。しかもこの手のことは1件だけでなく、何件も起こりました。そのためデベロッパーによっては、竣工図の細かい寸法を全て消去してから渡すという対策をとったところもあります。しかし細かな寸法が入っていない竣工図は、後から利用しにくいという問題が起こりました。

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竣工図の整合性を高める対策

私がいたデベロッパーでは竣工図と実際のマンションとの不整合が問題になったため、引渡しから1ヶ月以内に竣工図を引き渡すようにルールを作りました。本来はゼネコンからデベロッパーに鍵を引き渡す際に、竣工書類も竣工図も一緒に引き渡します。そしてデベロッパーは建築費を支払うのです。

しかし先に書いたように、竣工間際は工事の方が忙しいので竣工図の手直しがおざなりになりがちです。そこで竣工してからじっくり図面を手直ししてもらうことにしたのです。このルールにしてからは、竣工図の間違いは格段に減りました。他のデベロッパーでも同じようなルールで行っているところがあります。

まとめ

竣工図と建物に食い違いがあるというのは、あってはならないことです。しかし現実には食い違いが見つかることが、よくありました。竣工間際に竣工図を作成するため時間が十分になかったり、検査で漏れてしまったりなど原因はさまざまです。そのため管理組合が結成されたら、早めに竣工図のチェックを行うことをお勧めします。実態を表していない竣工図は、何かあった時に役に立たないかもしれません。竣工から何十年の経過したら売主も対応してくれませんが、早い段階なら動いてくれます。また古い物件であっても、調べておく価値はあります。地震で損傷を受けた時や、漏水被害などがあった際には正しい竣工図が役に立つからです。

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