建設現場には長さの単位が3つある /ミリ・尺・インチ

設計図には長さや面積が書いてあり、工事をする際にはメジャーで測りながら進めていきます。そんな建設現場には長さの単位が3つあると言ったら、まさかと思われるかもしれません。しかし建設現場ではミリと尺とインチが飛び交い、現場に慣れない人を混乱させます。今回は建設現場で使われている3種類の単位について書いていきます。

メートル法

日本の標準となっているメートル法が、建設現場でも主流です。設計事務所が描く設計図は全てメートル法ですし、施工図もメートル法で記載されます。そのため工事で使われるメジャーもメートル法のものですし、測量もメートル法で行われています。

ちなみに建築で使うメートル法の単位はミリです。2mは2000mmと書きますし、長さを測る時は「226(22.6cm)」と1mm単位で読み上げます。建築の仕事に携わると、1mmというのは意外と大きいと感じるようになります。日常生活では無視できる1mmですが、この1mmでサイズが合わないとか、1mm違いで材料が無駄になるといったことが頻繁に起こるからです。

尺貫法

日本の伝統的な尺貫法も、建設現場ではよく使われます。大工や鳶、土工など多くの職人が使いますし、また道具のサイズが尺貫法の場合もあります。代表的な物が脚立です。脚立のサイズは尺で表記され、「6尺脚立」「2尺脚立」などと言われます。1尺は約30cmなので、6尺と言えば概ね180cmのことになります。またプレハブ小屋を設置する際など、サイズを「3間(さんけん)×4間(よんけん)」と尺貫法で言います。1間は6尺で約180cmなので、3間×4間のプレハブは5.4m×7.2mのプレハブ小屋という意味になります。

またワイヤーの太さやアンカーのサイズも、尺貫法で言われることがほとんどです。建設現場で新人の現場監督が戸惑うのが、職人は尺貫法で言うのにカタログにはメートル法で書かれていることです。例えば職人が「2mの3分(さんぶ)ワイヤーを2本買っておいて」と言うのでカタログを見たら、カタログに書いてある太さは「6mm 8mm 9mm 12mm」とメートル法で書いてあります。新人の監督はワイヤーすら注文できないと言われたりしますが、尺貫法がわからないと注文すらできないのです。

尺貫法は根強く、職人と打ち合わせをしていて「ここの隙間は10mm以下にしておいて」と言うと「測ったら2分5厘(にぶごりん)だった」などと返されたりします。メートル法で話しているのに尺貫法で返されるのは、意地悪ではなく彼らにとって馴染みが深いからで、彼らはメートル法のメジャーを使って測り「4分」などと尺貫法で言ったりすることもあります。建設業界ではまだまだ尺貫法が、根強く残っていると感じさせられます。

ヤード・ポンド法

そんなに多くはないですが、ヤード・ポンド法が使われることもあります。出てくるのはもっぱらインチで、金物やアンカーによってはインチ表記の物が存在します。1インチは2.54cmですが、1/2インチや3/8インチと書いてあると混乱する人もいます。便宜的に1/2インチを尺貫法で4分、3/8インチを3分と呼ぶ人もいますが、尺貫法の4分アンカーは1/2インチのアンカーとは合わないこともあるので、それで再び混乱することがあります。

さらに面倒なのが、設備配管では配管の大きさをメートル法でもヤード・ポンド法でも公的に表記されていることです。配管のサイズはA呼称(メートル法)とB呼称(ヤード・ポンド法)の2つの表記があり、B呼称の場合の呼び方が尺貫法で言われることもあるのです。例えばA呼称で直径10mmの管はB呼称では3/8インチです。これを現場では3分(さんぶ)と呼んだりします。こうしていくつもの長さの表記飛び交い、初めて建設現場に来た人にとっては何を言っているのかサッパリわからないことがあります。

まとめ

建設現場ではあくまでもメートル法が主流です。しかし長年続いた尺貫法、そして海外からやってきたヤード・ポンド法が混在し、新人の現場監督などはこれに慣れるまで時間がかかります。完全にメートル法に統一するのがベストだと思いますが、なかなか難しいでしょう。何気なく街中で見かける建設現場ですが、中の人達は3種類の単位を使い分けて仕事をしているのです。こんな業界は、珍しいと思います。

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