東京の埋立の歴史 /そのエリアの地盤は大丈夫か

東京の歴史は埋立の歴史とも言えます。埋立地は地盤が弱く、地震に弱いとも言われていますが、本当にそうなのでしょうか。東京の埋立の歴史を振り返りながら、地震の被害を考えてみたいと思います。

埋立地は地盤が弱いと言われるのは本当か

埋立地は地盤が弱いから埋立地のマンションは買わない方が良いと言う人がいます。果たしてそれはどういう意味なのでしょうか。確かに埋立地は古来からある地層に比べて脆弱です。しかし埋立地に建てられたマンションが、地震で転倒するようなことはほとんど考えられません。なぜならマンションは支持層と呼ばれる硬い地盤に、杭を打っているからです。しかし地盤が弱いと問題が多いのも事実です。主な問題に不同沈下と液状化があります。

①不同沈下

地盤沈下の一種で、均等に地盤沈下が起こらないことを指します。地面の一部が下がったり下がらなかったりするので、特に戸建では家が傾いたりする大きな原因になります。マンションでは不動沈下が起こっても、杭がきちんと施工されていれば傾くことはありません。しかしマンションでも擁壁が傾いたり倒れたり、駐車場が波打ったりすることがあります。

10年間で数センチも地盤が下がるエリアなどでは、道路からマンションへのアプローチにヒビが入ったり、駐車場のアスファルトが割れてきたりすることが多く、定期的な補修工事を行っています。

②液状化

地震が発生した際に、地面が液状になる現象です。地面は砂などの粒子がくっついて支え合っていますが、震動によってその粒子がバラバラになり、さらに地震によって地下水の圧力が高まることで発生します。ちょうど地下水の上にバラバラになった砂の粒子が浮いたような状態で、見た目は地面が水のようになってしまいます。

※液状化の様子

東日本大震災の時に多く見られたので、注目を集めました。液状化になっても杭の施工がしっかりしていれば、マンションが傾いたり倒れたりすることはありません。しかしマンションに繋がっている排水管や給水管、ガス管などが持ち上げられて破損し、使えなくなってしまうことがあります。東日本大震災では東京湾岸のエリアに多く発生し、マンションだろうが戸建だろうがトイレもお風呂も水を流せない期間が続きました。

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江戸時代の埋め立て

徳川家康が江戸幕府を開くと、江戸の街づくりの一環として埋立事業を開始します。現在の日比谷は日比谷入江と呼ばれた浅瀬で、神田山を切り崩して埋め立てられます。現在の皇居がある場所には江戸城がありましたが、その前は海だったのです。徳川家康は埋立事業を進め、現在の丸の内や有楽町になる場所を作っていきました。

江戸は長い歴史の中で、何度も大火に襲われています。火事によって生まれた大量の瓦礫を処分する必要があり、それらは埋め立てに使われました。こうして幕末の頃には江東区の東陽や品川が作られていきます。また幕末から明治にかけて海外との往来が出てきたため、海の安全な航路を確保するために浚渫工事(しゅんせつこうじ)が行われます。その土砂を使い、埋め立て工事が進みました。

※東京湾岸の埋め立てエリア

上記の地図で、紫色の部分が江戸時代の埋め立てエリアです。緑は明治以降、オレンジは戦後の埋め立てエリアです。古い地図を元に私が作成したので、かなりアバウトな地図だと思ってください。

明治以降の埋め立て

開国により海外の船が多くやってくるようになった東京湾は、浚渫工事が継続的に行われました。明治16年には隅田川河口が埋め立てられ、明治39年から大正2年まで続いた品川台場の浚渫工事の土砂を使って埋め立てが進み、現在の佃島、月島が誕生しています。同様に浚渫で大正9年に芝浦が誕生しました。

明治43年から始まった江東区臨海地区の埋立 により塩崎、枝川、豊洲、塩見が誕生しています。また大正11年から昭和10年にかけて、晴海、豊洲、 東雲(しののめ)ができています。東雲の埋め立てには、関東大震災の瓦礫が使われました。さらに大正14年から昭和6年にかけて、目黒川の浚渫の土砂により天王洲ができました。

※左は明治24年の地図・右が現代の地図

昭和に入ってもさまざまな埋め立て計画がありましたが、その多くが戦争により中断しています。埋め立てが再び始まったのは戦後のことで、埋め立てや港の改良工事など多くの事業が東京湾で行われています。

東京の液状化マップ

東京の液状化マップは東京都建設局が公表していて、以下のサイトから見ることが可能です。現時点での最新版は平成24年度版のようです。

東京の液状化予測図 平成24年度改訂版

ご覧のように埋立地は液状化が起こりやすくなっていて、地震で建物が倒壊することはなくてもインフラがダメージを受けることはあり得ます。液状化で人が死ぬわけではないので気にしないという人もいますが、地震の際にはそれなりの不自由を被る覚悟がいるでしょう。

埋立地に津波の被害はあるのか

津波に関しては評価が分かれるポイントで、東京湾での津波はあまり心配する必要はないという意見もあります。また東京湾岸であってもエリアによってリスクが変わるので、自治体によって対応が異なります。江戸川区は津波のリスクは低いと考えているようで、webサイトに以下のような記載があります。

東京湾は外洋からの入り口が狭く、中で広がっている形状であることから、外からの津波が湾内に進むにつれて増幅するような現象は起こりにくいと分析されています。また、東京湾及び河川流域において、高潮対策として防潮堤や水門、陸こうなどが整備されていることから、江東区内に大きな津波が押し寄せて来る可能性は極めて低いと考えられます。

しかしながら、自然災害は人智の範囲を超えて、思わぬところに被害を及ぼす可能性があることも否定できません。

江東区における津波の影響について

一方で、東京都防災ホームページが出している「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定について」には、想定される被害が記載されています。

中央区などでは最大2.2mの津波が予想されているエリアもあるので、普段からの水害対策が必要だと考えられます。

まとめ

東京の歴史は埋立の歴史でもあります。東京湾岸は徳川家康の時代から埋め立てが始まり、今日の東京湾が形成されました。そのため東京湾岸の街の足元は瓦礫などで作られていて、液状化などのリスクがあります。そのリスクをどのように捉えるからはそれぞれですが、人気のエリアだからという理由で飛びつくのではなく、歴史的な背景やリスクを知った上で判断することが大事だと思います。

東京の埋立の歴史 /そのエリアの地盤は大丈夫か” に対して3件のコメントがあります。

  1. 読書好きα より:

    こんにちは。いつもマンション住まいに役立つとても重要な情報を発信してくださって、本当にありがとうございます。管理組合での議論に際して、しばしば参考にさせていただいております。
    ところで、今回の記事では湾岸の埋め立て地のマンション及びその住民に地震によって生じる被害について論じてくださったわけですが、拝読していて珍しく少し疑問に感じたことがあります。記事の内容そのものには特に問題はないと思うのですが、前提となる基本的情報が不足していると申しましょうか、東京での地震被害の問題についての視座設定がややバランスを失しているのように感じたのです。
    と申しますのは、(日本全体ではなく)東京に限って言えば、いま最も懸念されるのは「南海トラフ地震」などではなく、「首都直下地震(特に東京湾北部を震源とするもの)」のはずだからです。しかも、首都直下地震では地盤の弱い地域において建物の倒壊や液状化によるインフラ被害発生が懸念されていますが、それと並んで、あるいはそれ以上に深刻な問題とされているのは大規模な火災なのです。そして、湾岸はこの火災問題とは無縁とされている、その点では極めて安全な地帯なのです。このことは、湾岸に住むにせよ、そうでないにせよ、重要な情報ではないでしょうか?(ちなみに、私自身は城南内陸部低層エリアの住人です。)
    「首都直下地震」で最大の被害が予想されているのは城南東部低地から城西窪地にかけての木造家屋密集地帯と、城東低地(荒川堆積平野)のやはり木造家屋や町工場が密集している地帯で、東京ではむしろこのエリアでの対策が急がれているわけです。湾岸エリアにももちろん固有のリスクがあるでしょうが、「湾岸=地震に弱い」は多くの場合、単なる思い込みであるように思います。
    今後も勉強をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    1. TaCloveR Tokyo より:

      コメント、ありがとうございます。

      視座設定がややバランスを失しているというご指摘はごもっともです。このエントリーを書くことを思いついたのは、不動産業者が集まったディスカッションに参加した際に、液状化に対する認識が低いと感じたからでした。私には東日本大震災の時に湾岸エリアを調査し、その後のアフターサービス対応などで様々な問題が発生した記憶が強く残っています。そのため「液状化で人は死にませんから」という意見に納得しつつも、ちょっと軽く考えている人が多いのではないかとの想いに至りました。そのためバランスを欠いた内容になっていることは、おっしゃる通りだと読み返して感じました。

      火災による被害想定は、内閣府や東京都の発表で私も存じております。この件についても、また改めて書いてみたいと思います。今回は貴重なご意見、ありがとうございました。皆様の役に立つ情報を発信していきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

      1. 読書好きα より:

        ご多忙のところ、わざわざお返事くださって、ありがとうございました。確かに、液状化の問題も軽視すべきではなく、湾岸地域の居住者・検討者は、リスクを具体的に認識する必要はあると思います。今後とも情報提供をよろしくお願いします。

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