深刻化する管理人の不足 /なぜ管理人になる人が減ったのか

マンションの管理人が不足しているのをご存じでしょうか。現在、ほとんどの管理会社で管理人の採用が困難になっていて、深刻な人手不足になっています。今回はマンションの管理人がなぜ不足しているのかを見ていきたいと思います。

マンションを襲う3つの老い

マンションをめぐる問題に、建物の老朽化(老い)住人の高齢化(老い)が挙げられます。しかしそれに加えて管理人の高齢化(老い)も問題になっており、マンションを遅う「3つの老い」が今後は大きな課題になってくると考えられます。

平成30年に国土交通省が発表したデータによると、現在築40年を超えるマンションは約81.4万戸ですが、10年後には197.8万戸、20年後には366.8万戸にのぼるとなっています。マンションの老朽化が急速に進んでいて、政府も2020年2月28日にマンション管理適正化法とマンション建替円滑化法の改正案を閣議決定するなど、対策に乗り出しています。

※国土交通省発表資料

平成30年度 国土交通省「マンション総合調査」によると、マンションの世帯主の約半分が60歳以上になっています。住人の高齢化はますます加速すると考えられていて、こちらもやがて社会問題化すると言われています。年金以外に収入がない住人が増えることで修繕積立金の値上げが困難になり、管理ができないマンションが出てくると言われています。

※平成30年度「マンション総合調査」より

関連記事
老後にマンションの修繕積立金は不足する

そして今回お話しするのが、管理人の老いです。管理人は業界全体で深刻な人手不足になっていて、さらに高齢化の問題を抱えているのです。管理人さんは、今後は貴重な存在になっていくかもしれません。

業界全体で不足する管理人

マンション管理業協会が2018年に実施した調査によると、管理会社161社の中で約半数の管理会社が、ここ2年以内から管理人の採用が厳しくなったと回答したそうです。そのため大京アステージなどではAI管理人の導入を決めるなど、人手不足対策を始めています。これまで管理人は企業を定年退職した人の、再就職先として機能してきました。これが近年になって崩れてきたのです。

①雇用年数の延長

各企業が定年の年齢を引き上げてきました。以前は60歳定年が当然でしたが、今や65歳定年の会社が増えました。以前は60歳代前半の人がマンションの管理人になることが多かったのですが、定年の延長により求人を出しても応募者が減るようになりました。誰しも新しい職場よりも慣れ親しんだ職場の方が働きやすいので、マンションの管理人になりたいと考える人が減ったようです。

②賃金の安さ

以前はマンション管理人の時給は1000円くらいでした。今では1200円とか1300円くらいになります。月の給料にすると、だいたい15万円前後のことが多いようです。先の定年の延長とも重なりますが、収入が減る新しい職場よりも今までの職場での延長雇用を選ぶのは当然のことで、応募者が減ることになりました。給料を上げるにはマンションの管理費を上げなければならず、管理費値上げの要請を行っている管理会社も多いようです。

③業務量の多さ

かつてのマンション管理人といえば、管理人室で将棋をしているような印象がありました。しかし今では業務が多岐に渡って忙しくなっています。

③-1マンション内の巡回・点検

マンション内がどうなっているかを確認するために、巡回をすることになっています。電球が切れていたら交換や交換の手配をし、漏水跡が見つかれば管理会社に報告します。チェック項目を準備している管理会社が多く、それを元に巡回しています

③-2マンション内の清掃

清掃員を入れている場合を除き、管理人の仕事になっています。共用部を中心に行い、除雪作業なども行っています。

③-3立ち会い業務

設備機器の点検や修理に立ち会い、ゴミの清掃車が来たときに立ち会うこともあります。外部から誰かが来て作業する場合には、何かと立ち会いを求められます。

③-4その他の業務

来訪者の受付、駐車場や駐輪場の使用開始の受付、キッズルームなどの共用施設の受付を行うこともあります。またクレームの受付窓口になることもあります。これらの業務全てを日誌に書き込み、管理会社に報告する必要があります。

現在は多くの管理人が多忙になっており、給与の低さに対して業務量が多いと言われています。そのため以前ほど管理人になりたいと思う人が減ってきたようです。

通勤距離の問題

65歳で定年の会社が増えたため、最近は65歳を過ぎてから管理人になる人が増えました。65歳の人が通勤するのに片道1時間30分にもなると、敬遠されがちです。多くの人が近場での勤務を望みますが、都合良く近場に勤務できるマンションがないと辞退したり辞めてしまうことが多いようです。

辞めていく管理人の話

個人的な体験談ですが、マンションの共用部の調査を依頼された都内の住宅街にあるマンションの管理人さんと、いろいろ話す機会がありました。大手メーカーの営業部長だったAさんは、十分な退職金をもらっていたにも関わらず、暇だからという理由でマンションの管理人さんをやっていました。物腰が柔らかく頭の回転も速い方で、いろいろと助けてもらいました。

Aさんは来月いっぱいで辞めると決めていて、数日間一緒にいるとなんとなくその理由が理解できました。管理人の仕事でないことを要求する住人、管理人に言っても仕方ないことで文句を言いに来る住人、管理人を下僕のように扱う住人などが少なからずいたのです。「あそこにゴミが落ちてるから拾っとけ」と、自分の息子ぐらいの年齢の住人から言われるAさんを見て、なんとも気の毒な気分になりました。数年前までAさんは、大手メーカーで数十人の部下を引き連れて仕事をしていたのです。この状況が耐え難いのは、容易に想像がつきます。

「自分たちのマンションなんだから、ゴミを見つけたら自分で拾ってもいいと思うんですけどね」とAさんは笑って言っていました。この仕事をしなくてはならないなら耐えられるでしょうが、老後の生活が暇だからという理由で始めたAさんのような人にとっては、屈辱的な気分を抱いたまま続ける理由が見当たらないのだと思います。

管理人が辞めたマンションのその後

上記のマンションには、1年後に再び訪問する機会がありました。上記のAさんが辞めた後に別の方がすぐに決まったそうですが、その方も半年で辞めてしまったようです。管理会社が辞める理由をヒアリングしたところ、一部の住人の態度が我慢できないと言われたらしく、それ以降は管理人が決まっていませんでした。

人手不足に加えて通勤が遠いということで、管理会社も募集を続けてはいましたが採用に至っていないとのことでした。そのため人材派遣会社から管理人さんを呼んでいて、日替わりで違う人が来るような状態でした。日替わりで来られてもマンション内のことを覚える暇もないので、十分な巡回や掃除ができるはずもありません。理事会には管理人に対する多くの不満が集まっていました。

管理人が希少になる未来

このまま人手不足が続くと、管理人が不在のマンションが増えるかもしれません。管理人に不手際や注意不足があれば注意するのは当然ですが、彼らは住民の下僕ではありません。頑張って仕事をしている管理人なら大事にしないと、簡単に交代要員が見つからない現在では、管理人が決まらないまま何ヶ月も何年も過ぎてしまう物件も出てくるでしょう。管理人がいないマンションが当たり前になる、そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です