防犯としてのオートロックに効果はあるのか /オートロックがなかった時代から現在までを解説

マンションは高い防犯性を誇ると言われていて、その一つにオートロックの存在があります。今やあって当たり前となったオートロックですが、中にはオートロックに防犯性はないと言い切る人もいます。果たして防犯としてのオートロックに効果はあるのか、効果がないとするならなぜなのかを考えていきたいと思います。

オートロックがなかった時代

オートロックがなかった頃のマンションは、誰でもマンション共用部に入れたため、営業や勧誘などが無制限に入ってきていました。今でもオートロックのないマンションは入ることができますが、営業の人などが入ってくると警察に通報する人が増えましたし、そもそも飛び込み営業が減っています。しかし90年代半ば頃ぐらいまでは、マンションの共用廊下にさまざまな職種の営業マンが何人もいることがありました。

この頃の事情で象徴的なのが、1985年6月に起こった豊田商事事件です。金の地金への投資を行う会社でしたが、実際に金を購入することなく顧客からお金を吸い上げていた悪徳企業でした。金を購入していないことが発覚すると、社長の永野一男宅のマンションにはマスコミが殺到しました。共用廊下はマスコミ関係者で溢れ、他の入居者の通行の妨げになるほどでした。そんな中に、2人組の男が「ちょっと通してください」と言いながら現れます。

※豊田商事社長を殺害する犯人が現れたところ

この2人組は永野一男宅の面格子を壊して窓ガラスを割ると室内に侵入し、永野を殺害しました。当時のマンションは、マスコミも殺人者も自由に共用部に入り込めたのです。その結果、テレビ放送中に殺人事件が発生するという前代未聞の展開になってしまいました。

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90年代に普及したオートロック

マンションでオートロックが一般的になったのは1990年代で、毎日やって来る飛び込み営業にうんざりしている人達に支持されました。オートロックの導入は効果が高く、専有部の玄関先まで営業マンが来ることがなくなりました。この当時は営業マンだけでなく宗教団体の勧誘も盛んで、オートロックによってこれらの人がやって来ないのは、多くの人に歓迎されました。

さらに90年代は猟奇的な事件も多く、今よりも事件に対する社会不安が強くありました。神戸児童殺傷事件、地下鉄サリン事件、大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件など猟奇的な事件が多く、世紀末が近いという雰囲気が社会に広がっている時期です。防犯への意識が高まる中でオートロックは必須といわれるようになり、一気に広がっていきました。こうして新築マンションでは、オートロックがなければ売れない時代になっていきました。今では国土交通省もマンションにオートロックを導入することを推奨していて、警察はその抜粋を警察白書に記載しています。

国土交通省 「共同住宅に係る防犯上の留意事項

オートロック防犯の攻防

オートロック付きのマンションが増えていくと、なんとかしてオートロックの中に入ろうとする人が出てきました。代表的なものは共連れと呼ばれる方法で、エントランスで誰かが来るのを待ち、その人と一緒に入る方法です。この方法は現在でもメジャーな方法で、最も簡単にオートロック内に侵入する方法です。しかし共連れでは誰かが来るまで中に入ることはできず、平日の昼間など人の出入りが少ない時間帯だと、いつまで経っても中に入ることができません。

次に出てきたのは、自動ドアの召合わせの隙間を利用する方法です。召合わせとは、両方から引き寄せて閉じるようになっているドアやサッシの、戸が合わさる部分を言います。ここの隙間に紙やハリガネを差し込んで、自動ドアのセンサーを反応させてドアを開くのです。この方法を使えば、いつでも好きな時にオートロックのマンションに入ることが可能になります。

この方法は割と早い段階から使われていて、90年代後半には鍵を忘れた子供が郵便ポストに入っているチラシを使ってオートロックを開けているのを目撃したことがあります。子供にも思いつくくらい、簡単な方法だったのです。

そこでメーカーは召合わせ部分の隙間を減らし、紙やハリガネを差し込みにくくしました。さらに温度検知のセンサーを使い、ある程度の温度があるものが近づかないと反応しないようにしました。しかしハリガネをライターで炙って温め、それを召合わせに差し込むことでオートロックを解除する人が現れました。

そのためメーカーは召合わせで2枚のドアが重なるようにしたり、返しをつけることで何も差し込めないようにしました。またエントランス内部の人感センサーを2個に増やし、両方が反応しないと開けないようにするなど工夫を凝らしていきました。

二重オートロックは効果的か?

2000年代に入ると、共連れ防止を目的にオートロックの自動ドアを二重に設置するマンションが増えました。最初の自動ドアを共連れで不審な人物が入ってきた場合、2つめの自動ドアを開けずに引き返すことで、不審人物をマンション内に入らせないことが可能です。2つもの自動ドアを共連れで入るのは不自然な動きになりがちなので、共連れで入ろうとする人を避ける効果があります。

このように共連れ防止には効果がありますが、来訪者にとっては不便なシステムです。来訪する部屋のインターホンを鳴らして自動ドアを開けてもらい、さらに次の自動ドアのインターホンを鳴らして開けてもらわなければなりません。また両手に荷物を持って帰ってきた住民も荷物を置いて鍵を取り出して最初のドアを通過したら、再び次のドアの前で荷物を下ろして鍵を使うことになります。セキュリティと利便性は相反することが多く、このように利用する人の手間が増えることが多いのです。

こうした不便さを嫌う人も多く、また後述しますがオートロックのセキュリティ性を高めることがどこまで必要なのか疑問の声もあり、オートロックは二重にするのはさほど普及しませんでした。今では高級マンションの一部で、採用されているぐらいだと思います。

オートロックのセキュリティ性

最新のオートロックは、鍵を持っていない人が簡単に開錠できなくなっています。しかし90年代から00年代前半に設置されたオートロックの多くは、上記のような方法で簡単に開錠できる場合が多くあります。それに共連れを完全になくすことは難しく、タイミングがよければ外部の人が共用部に入り込んでしまいます。

そして外部から入れるのは、オートロックがあるエントランスだけではないマンションの方が多いでしょう。駐車場から、ゴミ置き場から、サブエントランスから入れるマンションは多くあります。それらの入り口は簡単に外部の人が入れないようになっているでしょうか。中には1階の共用廊下に手すりを乗り越えて簡単に入れるマンションもあります。このようなマンションでは、オートロックを強化することにあまり意味はありません。単に使い勝手が悪くなるだけです。

外部の人が完全に侵入できないマンションは、ほとんどありません。絶対に入るという意識を持てば、大抵のマンションは侵入できます。しかし侵入するのに手間がかかったり、一目につきやすければ侵入はグッと減るのです。1階の共用廊下の手すりを簡単に乗り越えられるとしても、人手が多い大通りに面していれば侵入する人は減ります。マンションのセキュリティを考える際には、オートロックなどの一部ではなく、全体を見ていかないといけません。オートロックに高いセキュリティ性があったとしても、それ以外の場所から容易に侵入できるなら、全く意味を持たないからです。

超高級マンションはどうなっているか

一部の賃貸マンションなどにある、超高級マンションでは管理人やコンシェルジュが必ずエントランスにいて、住民でない人が入ろうとすると声を掛けるようになっています。「どちらに御用ですか?」と一声掛けるだけで、防犯性は飛躍的に向上するのです。コンビニで店員が必ず「いらっしゃいませ」と声を掛けるのと同じで、あなたを見ていますというメッセージを発することで、不審者に牽制をしているのです。

オートロックや防犯カメラなどの防犯機器は、人の代用品でしかありません。人の目や話しかけることによる防犯効果と同じ効果を機械で生むのは、どれほどの資金を投じてもかなり難しいのが現実です。24時間常に人を配置するのはコストがかかるので、機械に代用してもらっているに過ぎません。しかし超高級マンションでは、高い家賃で人件費を補って人を常に配置しています。

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オートロックを過信しないこと

このようにオートロックは防犯性があることは間違い無いのですが、過信することは避けなければなりません。特に古いタイプのオートロックは、さまざまな方法で入ることが可能になっています。しかしオートロックがあることで、営業や勧誘などが無制限に入ってくることはないので、オートロック設置の意味は大いにあると考えて良いでしょう。また不審者の侵入を警戒するならエントランスだけでなく、それ以外の侵入口を検討しなくてはなりません。オートロックだけでなく、建物全体で防犯性を検討しましょう。建物の一部だけセキュリティを強化しても、ほとんどの場合は役に立たないのです。

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