防犯カメラはどのくらい役に立つのか

今ではほとんどのマンションに防犯カメラが設置されています。また古いマンションでも防犯カメラを設置するところが増えていて、今や防犯カメラの設置は常識になった感があります。しかし防犯カメラは単に取り付ければ安心というわけではありません。運用や目的も含めて十分に検討しないと、コストばかりかかって役に立たないどころかトラブルの原因にもなりかねないのです。

覗かれ続けた生活

防犯カメラが普及し始めた90年代後半のことです。当時は録画装置が高価だったため、録画装置がないケースがありました。その代わりに住民がいつでも防犯カメラの映像を見ることができるようにして、抑止効果を狙うことも行われていました。あるメーカーが防犯カメラの映像をインターホンのモニターで見ることができるシステムを作り、それを採用したマンションでの出来事です。

竣工から1年ぐらい経って、そのマンションでは大きな問題に発展しました。入居者の1人が絶えず防犯カメラの映像を見続け、他人の行動を監視して誰が何時に何をしていたと周囲に吹聴するようになったのです。この人は1日に6時間以上見続けていることもあり、住人の行動をメモするなど少し異常な行動をとっていました。このマンションの総会でも問題視され、総会決議で各自が勝手に映像を見られないように改修することになりました。

なぜ デベロッパー はこのようなシステムを導入したのか問われ、住人のプライバシーが損なわれていると批判を受けることになりました。

映っていた不倫の証拠

2000年代に入ってからの話です。そのマンションの防犯カメラはハードディスクに映像が保存され、必要に応じて理事会のメンバーだけが映像を見ることができるように規約で定められていました。そのマンションでは地下駐車場に駐められている車に傷がついたり、落書きがされている事案が多発しました。子供が地下駐車場で遊んでいて危険という声もあり、理事会で防犯カメラを確認して注意することになりました。

地下駐車場のカメラには、ボールを投げて遊ぶ小学生ぐらいの子供が映っていました。ボールが車にぶつかることもあり、傷の原因になっていると考えられます。それ以外に故意に傷をつける人がいないか見ていくと、車から降りた女性と男性がキスしているところが映っていました。その2人は別々に家庭を持つ住民で、見てはいけないものを見てしまった理事会は静まり返ってしまいました。この時は理事全員がこのことを口外しないと約束しましたが、映像を見る際に秘密保持契約のような文書が必要ではないかという話になりました。

誰が防犯カメラを見るのか

マンションに防犯カメラが設置され始めた頃は、特にルールがなくさまざまな形態で運営されていました。録画されたものを管理人が見る、誰でも申請したら見られる、理事長だけが見られるなどマンションによってさまざまでしたし、中には警備会社と連動していて警備会社が24時間映像を見ているというのもありました。しかし上記のようなプライバシーの問題が出てくるようになり、防犯カメラには厳格なルールが求められるようになっていきました。

当初は デベロッパー や管理会社ごとにルールを策定していましたが、(財)マンション管理センターが「防犯カメラ運用細則モデル」を策定してからは、これに準じた運用細則が多くのマンションで採用されることになりました。この運用細則には録画された映像の管理責任者が明確化され、保存期間、第三者の回覧の禁止、守秘義務などが盛り込まれました。

この「防犯カメラ運用細則モデル」に基づいて、防犯カメラの映像を見るには、理事会の決議を経て複数の理事の立会いのもとでなければ見られませんといった意見をよく聞きます。しかし古いマンションでは運用ルールが竣工時のままになっていることも多いため、マンションごとに確認が必要になります。

防犯カメラを設置する目的

防犯カメラを設置するには、設置する目的を明確にしなくてはなりません。しかし実際には「設置しておけばなんとなく安全」という無目的な設置が多いのも事実で、これはデベロッパーの新築マンションの計画においても同様です。

①証拠としての映像記録

盗難や器物損壊、落書きなどの犯罪行為・迷惑行為の証拠として防犯カメラの映像が役立つことがあります。顔や自動車のナンバープレートが映っていれば犯人を特定することができますし、刑事事件の際などには捜査にも役立ちます。

②抑止効果

防犯カメラで映されていることを知らしめることで、犯罪やいたずらを抑止する効果があります。ほとんどの人は防犯カメラで映されているとわかりながら、犯罪やイタズラをすることはありません。そのため防犯カメラが目につくところにあると、それだけで抑止効果が生まれます。また「防犯カメラ作動中」という看板を設置するだけでも抑止効果は生まれます。

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完璧な証拠映像を求めると高コストになる

マンションで起こりうる犯罪やイタズラ、事故などの全てを顔やナンバープレートが映るように防犯カメラを設置すると、かなり高コストになります。例えば駐車場の端から端までカメラに映すことは可能ですが、距離があると顔を識別できるほどキレイには映りません。そのためには高解像度のカメラを設置するか、何台もカメラを設置することになります。またそれらの映像を保存する機械も容量を大きくしなくてはいけません。

夜間はさらに映りが悪くなるので、照明を設置したり赤外線カメラの設置も必要になります。また照明があると逆光になって顔が映らないこともあるので、さらに照明を増やすことになります。真っ暗な中でもタバコの火ぐらいの明かりがあれば、完璧に顔を映せるカメラもありますが、当然ながらかなり高価になります。

私は10年以上前に、ある賃貸マンションの管理者から、何かあった際に犯人の顔が必ず映せるようにして欲しいと依頼されました。一時的に重要人物が住むことになり、そこから費用が出るので金額は問わないとのことでした。かなり大きなマンションで地下駐車場などもあったため、カメラは80台を超えてしまい、さらに録画装置も当時としてはかなり大型の物が必要になりました。その結果、設置費用は新車のベンツが買える以上の金額になってしまいました。

このケースは特殊な事例で、このようなことを普通のマンションで行っていたら修繕積立金の大部分を防犯カメラに使うことになってしまいます。防犯カメラは効率よく運用しないと、無駄な出費になりかねないのです。

証拠記録用と抑止効果を合わせて考える

どのカメラでも完璧な証拠映像を撮れるようにすると高価になりますが、全てのカメラを低品質にして抑止効果を狙うのもどうかと思います。あのマンションのカメラは全てダミーだとバレると、犯罪を招きかねないからです。そこで録画できる高性能カメラと、明るくて近い距離しか取れないカメラとダミーを混ぜることが重要です。

例えばエントランスに来訪者の顔を映すカメラが設置されることが多いですが、エントランスは常に明るいうえに距離も近いので高性能カメラである必要はありません。そしてカメラの存在感を示せば、このマンションには防犯カメラが設置されていると来訪者に意識させることができます。抑止効果に繋がります。

一方で屋外の駐車場など広くて夜には暗いエリアが増える場所には、高性能のカメラを取り付けるのもありでしょう。1台で全てのエリアを補うのが難しければ、ダミーカメラを数台混ぜておけば抑止効果を狙えます。マンション内に侵入可能な場所や、駐車場や駐輪場などのイタズラされやすい場所に顔がハッキリ映る高性能カメラを設置し、死角になりそうな場所はダミーカメラで撮影しているぞと威嚇すれば防犯効果を高められます。

防犯カメラの寿命は?

よく防犯カメラの耐用年数は6年と言われますが、これは税法上の減価償却期間が6年という意味で、6年しか機械がもたないという意味ではありません。屋内設置の防犯カメラなら10年以上はもちますし、屋外でもしっかりしたハウジングをしていれば10年ぐらいは使えます。

しかしあまりに古い防犯カメラで、動いているのかどうかわからないようでは、抑止効果が半減してしまいます。そのためダミーカメラだけでも交換するなど、少なくとも10年に1度は見直すための検討をお勧めしています。

まとめ

防犯カメラの設置は目的を明確にしましょう。新築時から設置されている防犯カメラは、深く考えずに設置されていることも多いので、管理組合として一度検討することをお勧めします。マンションの共用部で起こったあらゆるできごとに、顔がハッキリ識別できるように撮影しようとすると、コストばかりが上がってしまいます。お困りの管理組合があれば、下記のメールフォームからご相談下さい。

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