雨水漏水調査は殺人事件捜査に似ている

テレビの刑事ドラマでも推理小説でもそうですが、殺人事件があると刑事達は現場に駆けつけます。鑑識チームが細かなチリなども採取していき、死体が身につけていたものや、発見当時の状況、目撃者の証言など、あらゆる情報を採取していきます。もし刑事が現場に到着するなり「犯人は◯◯だ」と断言したらどうでしょう?それは刑事ドラマではなく超能力ドラマになってしまいます。ところが雨水漏水の現場では、このようなことが日本中で行われています。現場を見るなり「ここから漏れてます」と断定する人が多いのです。

漏水現場のヘッポコ刑事

以前にも書きましたが、雨水漏水は見ただけで原因がわからないことがほとんどです。そのため図面を確認し、現場を確認し、漏水が起こった時の気象条件などをヒアリングします。現場をくまなく観察し、あらゆる可能性を導き出すことから調査が始まるのです。

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しかし漏水現場に行くと図面も見なければ現場確認もそこそこに「シーリングが切れています。ここから漏水してますね」などと決め付ける人が多くいます。これは刑事ドラマに出てくるヘッポコ刑事が、財布がなくなっているだけで「物取りだ」、滅多刺しにされていたら「怨恨だ」と決めつけるのに似ています。優秀な刑事は決めつけで捜査をしません。常にあらゆる可能性を考え、証拠を元に真相に迫ります。

知識不足が招く決めつけ

なぜヘッポコ刑事は、簡単に事件の真相を決めつけてしまうのでしょうか。大抵の場合は知識や経験が不足しているからだと思います。それ以外には、捜査が長引くのが面倒で、さっさと終わらせたいから「これは怨恨殺人だ」と決め付ける場面も刑事ドラマではよく見ます。これは漏水調査でも同じです。

雨水漏水では、雨水がどこら侵入して室内に漏れているのかを調べなくてはなりません。そしてほとんどの場合、侵入ルートは複数の可能性が考えられます。しかし知識がなければ、さまざまな可能性を考えることができないため「シーリングが切れています。ここから漏水してますね」などと決めつけてしまうのです。刑事が死体の点状出血を見て窒息死と判断するのは、知識があるからです。漏水も同じで知識がなければ現場を見ても多くのことを引き出せないのです。

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散水試験と弾道検査

漏水の現場では、やたらと散水検査をしたがる人がいます。屋上から雨水が室内に侵入している可能性がある場合、そこから水を流して室内に出てくるか確かめるのです。確かに有効な試験ではありますが、常に有効というわけではありません。何を目的に、どういう方法で行うかをしっかり検証する必要があります。屋上に水を流して室内に水が出てくると「屋上から漏れていました」と報告する人がいますが、散水試験をしなくても屋上に原因があることがわかっている場合もあります。問題は屋上のどの部分からどのルートで漏れているかなのですが、漏水を再現したことで満足してしまうのです。

刑事ドラマでは銃による殺人事件が起こると、銃弾の弾道検査を行います。どこから弾が発射されて、どのような状況で被害者が被弾したかを調べるのです。弾道検査を行って「ここに犯人がいました」とわかっても、そんなことは弾道検査を行うまでもなくわかっている場合もあるでしょう。警察だってやみくもに弾道検査を行いません。明確な目的があり、立証したいものがあるから弾道検査を行うのです。散水試験も同様で、明確な目的がなければ単なるセレモニーになってしまいます。

実行犯の逮捕だけで満足する人達

雨水漏水の現場では、室内に水が漏れてくる場所を補修して対策を終わらせるケースがあります。天井から水が染みてくるという訴えがあり、天井のコンクリートのひび割れから水が垂れているのを発見すると、そのひび割れを補修して終わらせるのです。雨水漏水は水の出口を対策するのではなく、水の入り口で対策しないと意味がありません。出口をふさがれた水は、必ず他の出口を探して出てくるからです。

漏水の出口を塞ぐだけで終えるのは、殺人事件の実行犯を逮捕して主犯を逃すのと同じです。主犯が捕まらなければ、何度でも再犯が起こり事件解決にはなりません。水の出口を塞いで他から水が染みてきたら、また出口を塞ぐという稚拙な工事が現実にあちこちで行われています。

人権の壁・予算の壁

殺人事件の容疑者を片っ端から逮捕して取り調べを行えば、事件解決は早まるでしょう。しかしそんなことはできません。逮捕するには裁判所の逮捕状が必要で、逮捕状には証拠が必要です。怪しいという理由で片っ端から逮捕するのは、人権の問題があって違法捜査になってしまいます。

雨水の漏水も、怪しいところを片っ端から補修すれば早期に解決します。屋上の防水を張り替え、外壁のタイルを剥がし、サッシを外して防水を行うなど思いつく限りの工事を行えば、早期に解決します。しかしそんなことをしていたら、何千万円も費用がかかってしまいます。

そのため現場で見られるあらゆる事象を観察し、可能な限りの情報を集めて原因を推理しなくてはなりません。防水層の浮き、シーリングの欠損、白華現象やコンクリートの打継ぎ、そして形状から施工方法をイメージして、あらゆる可能性を導くのです。

その他の似ているところ

殺人事件では犯人が突然自首して解決することもあれば、迷宮入りになってしまうこともあります。漏水の調査も、思いがけないことから原因がわかることもありますし、原因はわからないまま漏水が止まることもあります。原因を追求していく中で、予想外の結末を迎えることは稀にあるのです。

あともう一つ、刑事ドラマでベテラン刑事が「現場百回」と言って何度も何度も事件現場を訪れることがありますが、これも漏水調査と同じです。必要なら何度でも現地を見て、何度でも確認作業を行う必要があります。私がアフターサービスセンターに配属された頃、漏水の原因がわからずに十数回現場に行きました。それを見た課員が「そんなに現場に行く人は初めて見た」と言っていて、私の方が驚きました。必要なら何度でも現場に行き、あらゆる可能性を検討するしかないのです。

まとめ

人の命がかかっていることと比較するのは不謹慎という見方もあるかもしれませんが、漏水調査の手法と似ている面があると思います。私が何より残念に思うのは、知識や技術が不足している人に限って、簡単な調査で漏水原因を断定してしまうため、住人に過剰な期待を抱かせてしまうことです。しかし雨水漏水は簡単に止まることはなく、根気強く地味な作業を繰り返すしかありません。現場を見て「ここから漏れてます」と断言する人がいたら、その人は要注意ですよ。

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