雨漏れ調査の方法 /実際にどうやって調査するのか

前回は雨漏れが起こった際の業者の見分け方を書きました。今回は私が雨漏れの現場に行った時の検査の仕方を書いてみたいと思います。雨漏れの調査方法は人それぞれですので、これ以外にもやり方はたくさんあります。また現場の状況によって変えることもあるので、あくまでも一例だと思って下さい。

前回記事:雨漏れ業者の見分け方

設計図書の確認

マンションの場合、竣工図書という名前で、設計図書の他にマンションに関するさまざまな書類がまとめられています。大抵の場合は管理事務所にあるので、その中から図面を探して読んでいきます。漏れている箇所の施工がどのようになっているのか、防水にどのメーカーのどのような材料が使われているのかを確認して、必要に応じて図面の写真を撮っていきます。

しかし設計図書もさまざまで、ほとんど記録が残っていない場合もありますし、細かなことまで記載されていることもあります。必要な箇所の部分詳細図があれば良いのですが、大まかな図さえ表記されていないことも珍しくありません。ですから10分ほどで見終わることも有れば1時間ぐらいかかることもあり、この作業にかかる時間はさまざまです。しかし現地を見るだけではわからない多くの情報が図面にはあります。以前にも書きましたが、図面を見ないで現地を見るだけで確認する人は、図面を読めないだけの人である可能性が高いと思います。

漏水箇所の確認

まず部屋の中から漏れている箇所を確認します。いわゆる水の出口の確認です。この時に、水が出てきたのに気づいたのはいつかを確認します。雨漏れを繰り返している場合は、雨が降った日に漏れるのか、雨が降った数日後に漏れるのか、雨とは関係なく漏れるのかなどを確認します。雨漏れに気がついた正確な日付がわかれば、それも記録しておきます。

雨が降った日に雨漏れが起こった場合は、その日は風が強かったか、風向きなど分かる範囲でヒアリングしていきます。正確な日付が分かれば、後で気象データからどの程度の雨が降り、風向きがどの方向からだったのかなどを調べることができます。気象と雨漏れは密接な関係があるので、雨漏れが起こった日がわかると調査がやりやすくなります。

次に雨の侵入口を探すために外部に行きます。雨漏れの場合、最も疑わしいのは屋上防水になるので、屋上を中心に見ることが多いです。その他、雨漏れが起こる箇所としては、外壁、サッシ廻り、庇などがあり、可能性のある箇所を見て回ります。多くの場合、水の侵入口になる部分は複雑な施工を行っています。施工がシンプルであればあるほど雨漏りは少なくなり、複雑なほど雨漏りが起こりやすくなるのです。

今後の流れを説明する

漏水原因を1回で特定して1回の工事で雨漏れを止めるのは、大抵の場合は不可能です。調査で分かるのは、あくまでも漏れている可能性のある箇所です。今後の流れとして、撮影した図面と現場の様子から漏水の原因を予想して、可能性のある箇所を羅列します。可能性のある箇所は5箇所以上になることもあり、それを整理して可能性が高い順に列記していきます。そして最も可能性が高いと思われるところから工事をしていくことになります。

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工事を行ってたら雨が降るのを待ち、漏水が起こるか確認をします。再び漏水が起こったら、次に可能性が高い箇所を工事することになります。これを繰り返すのです。そのため漏水が止まるまで長期に渡ることがあります。運良く1回の工事で漏水が止まることもありますし、5回6回と数年間に渡って工事を行うこともあります。

これらのことをご納得頂けない場合、私の仕事はここで終了です。そんなに長く待てない、1回で雨漏れを止めて欲しいという方もいます。何千万円もかけて防水を剥がし、外壁のタイルを剥がし、サッシを外して取り替えるなら可能かもしれませんが、1回の補修工事で雨漏れを止めるとお約束はできません。ですからご納得頂けないなら、私は仕事をお引受するわけにはいかないのです。

工事計画書の作成

漏水の可能性が高い箇所を順に列記し、それぞれどのような工事を行うかを記した計画書を作成します。この計画は、途中で変更することもあります。実際に工事をしていく中で、新たなことが判る場合がよくあるからです。そのため計画書は変更の度に、提出することになります。

また計画書は単純に可能性が高い箇所から順番に並べないこともあります。可能性が高くても工事費用が莫大になる場合、管理組合の承認が難しくなるので、可能性が低い箇所から先に潰していくこともあります。この順番は理事会の意向を聞きながら決めていくことになります。

工事が1回で終わらない可能性があることをお伝えすると、大抵の理事会はがっかりされます。そのため「ここから雨が漏れています」と断言してしまう業者が後を絶ちません。たまたま上手くいくこともありますが、漏水現場を見るだけでどこから雨が漏れているかを特定することはほとんど不可能なのです。医者が症状を見るだけで病気の原因を特定できず、検査や薬を何度も試して結論を出すように、雨漏りも見ただけでは可能性を指摘することしかできません。これにご納得いただけない場合、私の仕事はここで終了になります。

実際の工事

既に管理組合で工事業者が決まっている場合、この工事計画書を使って打ち合わせを行います。決まっていない場合は、これらの工事ができる業者に依頼することになります。工事を行ったら、その結果をご報告し、その後の雨漏れの有無を確認して進めていくことになります。工事が完了すると雨が降るのを待ち、雨漏りが起こったら次に可能性が高い箇所を工事していきます。運良く1回の工事で終わることもあれば、5回ぐらい工事を繰り返すこともあります。

このように雨漏り工事は根気よく、可能性がある箇所を工事で潰していく作業の繰り返しになります。水の入り口が複数ある場合、工事そのものに間違いがなくても雨漏りが続くことになります。そのため何度も工事を繰り返すことになるのです。

漏水原因がわからないこともある

何百件と漏水を見てきましたが、2割か3割ぐらいは、明確な原因がわからないことがあります。水の侵入口が1箇所でない場合もありますし、一定以上の風圧と降水量になった時にだけ雨が侵入する場合もあります。そのため何度も対策を講じていく中で、なんとなく雨漏れが止まったケースもあるのです。

無理やり「ここが原因です」と結論づけることもできますが、複合的な要因の場合は断定しにくいことがよくあるのです。そのため原因を絞りきれないこともあり、漏水工事の難しさを痛感します。

まとめ

1回の工事で雨漏れが止まるかはわからないと言うと、大抵の方はがっかりされます。そのため工事を請けたい業者は、さも1度で雨漏れが止まるようなことを言ってしまうのです。運が良ければ1度で雨漏れが止まりますが、多くの場合はそんなに上手くはいきません。

雨漏れで最も疲れるのは、工事をしてもしても雨漏れが止まらず、いつになったら終わるかわからないことです。そこで私は計画をたててお伝えし、先の見通しが判るようにご案内しています。このような進め方をしている人は少ないですが、管理組合、入居者そして工事業者にとっても、負担が少ない方法だと私は考えています。何度やっても雨漏りが止まらないと悩んでいる管理組合がありましたら、トップの「コンタクト」からご連絡ください。ご相談させていただきます。

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