テレビ視聴を止めるキッカケが電障対策? /テレビ視聴者が激減する時代

テレビを視聴する人が減っていますが、その原因の一つは地デジ化に伴う電波障害対策にあるのではないか?そんな疑問が頭をよぎるようになりました。最近は電波障害対策に関連する相談をこのブログ経由でちょくちょく受けるのですが、マンション住民からだけでなくマンション近隣の戸建ての人からの相談もあります。電波障害対策によりテレビを視聴していた方々なのですが、そういう方の多くがテレビを見るのを止めましたと言っているのです。

国家プロジェクトだった地デジ化

2001年、電波法の改正を経てアナログテレビ放送は2011年7月24日に終了することが決まりました。法律を改正してまで地デジにする意義はあるのかとの疑問の声もありましたし、全て衛星放送にした方が安いとの声もありました。しかし国を挙げての一大プロジェクトとして、地デジは推進されていったのです。

2003年12月には三大都市圏の一部で地デジ放送が始まり、2006年には全国都道府県で放送が始まります。つまり2003年12月からアナログ停波になる2011年7月24日までは、アナログ放送とデジタル放送の両方が放送されていました。これがその後の電波障害対策に、大きな影響を与えることになりました。

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減少するテレビ視聴者数

テレビの視聴者数を知る数字として、HUTがあります。これはHouseholds Using Televisionの略で、総世帯視聴率を示します。調査世帯のうち放送と同時に視聴している世帯を表した数字なので、録画視聴は含みません。しかしこれを見ればどれだけの視聴者がテレビを見ているのかだいたい分かると言われています。このHUTはあまり公表されているのを見たことがないのですが、TBSホールディングスの決算報告資料に含まれていたため、話題になりました。

これによると1990年代後半の全日のHUTは45%程度だったのが、2021年下期には37.5%になっています。またゴールデンタイムに限って見ると90年代後半は70%を超えていましたが、2021年下期は55.6%と大幅に下落しています。また90年代から徐々に下落傾向にあったHUTは2020年上期に大幅に上昇しています。これはコロナ禍による巣篭もり需要だったと思われます。しかしまだまだコロナ禍が続く2020年下期に一気に下がり、そのまま下落し続けています。

これは在宅時間が増えてテレビを見る時間が一時的には増えたものの、面白い番組がなかったので他のメディアに移行したと考えるのが妥当だと思います。しかしもしかしたら、それ以外の要素も関係しているのではないかと思いました。それが地デジ化により行われた電波障害対策ではないかと思うのです。電波障害対策の期限が切れたことにより、脱テレビが進んでいるのではないでしょうか。

電波障害対策とは

テレビが急速に普及し、同時に高層建築物が建設されるようになると、ビル陰によってテレビの視聴ができなくなるという問題が発生しました。そこで昭和51年3月6日に郵政省が電波監理局長の通達として「高層建築物による受信障害解消についての指導要領 」が出されました。これにより高層建築物を建設してテレビ受信に問題が発生した場合は、建設した人が近隣住宅にテレビが受信できるように対策しなくてはならなくなりました。こうして建設する建物の上部に電波障害対策用のアンテナを設置し、テレビが映らなくなった住宅にケーブルを繋いでテレビを見てもらうようにしました。これを共聴アンテナによる対策と呼んでいます。

これ以外にもCATVを利用した電波障害対策もありました。建物を建設する業者が料金を支払って、テレビが受信できなくなった住宅にCATVを受信できるようにするのです。この場合、建設主は20年分のCATV料金を一括で払います。なぜ20年分かと言うと、昭和54年10月の建設省事務次官通知「公共施設の設置に起因するテレビジヨン電波受信 障害により生ずる損害等に係る費用負担について」に「措置に要する経費は、公共施設の設置後20年程度の期間通常のテレビジョン電波 受信を可能とするために必要な経費(受信者が従前の方法による受信を行うために通 常要する費用を差し引くものとする )とする。 」と書かれているからです。これによりCATVによる電波障害対策は、20年分の費用を前払いが当たり前のようになりました。マンション建設の場合、大抵は共聴アンテナによる対策を行っていました。CATVで対策すると、20年分の受信料が高額になるからです。

しかし共聴アンテナを中心とする電波障害対策に変化が訪れます。それが2003年12月から始まった地デジ放送です。前記のように2003年12月からアナログ波が停波になる2011年7月24日までは、アナログ放送と地デジ放送の両方が行われていたからです。アナログと地デジの両方の対策をするにはコスト的な負担が大きかったですし、当時は地デジの電波障害の調査のノウハウが少ないため困難な面もあったからです。そこで大手デベロッパーは、アナログ放送の電波障害が発生している住宅にはCATVによる対策を行いました。CATVと契約していれば、電波障害になっている住宅が途中から地デジ視聴に切り替えてもCATV会社が対応してくれるので面倒がないからです。こうして2002年頃から電波障害対策は、共聴アンテナからCATV中心に移行していきました。

そしてCATVで対策した住宅の多くが20年の期限が、2022年頃から切れ始めました。CATV会社は各住宅を回って今後はテレビ視聴が有料になることを説明しています。これまでは無料でテレビを見られていたのに、今後はCATV会社に毎月数千円を支払うか地デジ用のUHFアンテナを設置しなくてはなりません。テレビを見るためにアンテナを設置するかCATV会社に視聴料を払うかの、二者択一を迫られるのです。

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CATV対策の切り替えでテレビをやめた

こうしてテレビを見るために、CATVと契約するかアンテナを設置するかを迫られた家庭はどうするでしょうか。もちろんCATVと契約したりアンテナを購入してテレビを見る家庭もあるでしょう。しかしこれを機にテレビを見ないことを決めた人もいるようです。

テレビを見るとなると、NHKの受信料が発生します。地上契約だけで年間1.3万円から1.4万円、衛生契約もすれば2.5万円弱がかかります。これをサブスクの費用に充てることを考える人もいて、どうせ払うならHuluの月額1,026円やNetflixの990円の方が良いと思う人もいるわけです。私のところにもメールで相談をくれた方もいましたが、最終的にテレビを辞めてAmazonPrime(年間4,900円)を契約することにしたようです。先のHUTの減少を見ると、このような方は少なくないのではないかと思いました。

まとめ

地上デジタル放送移行に伴う電波障害対策によって、建築主が20年分の費用を払ってCATVを利用している住宅が多くあります。20年の期限が過ぎると、CATV会社に料金を払うか地デジ用のアンテナを設置してテレビを見ることになりますが、テレビの視聴率が下がり続けているためテレビ視聴を止めてしまう人もいるようです。NHKに支払う料金を考えると、そのお金でサブスクの契約もできてしまうため、テレビでもスマホでも見られるサブスクに流れている人もいるみたいです。膨大な国家予算を使って行った地デジが、テレビ離れを起こす一因になっているのではないかと思いました。

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