なぜ防水の修繕工事にトラブルが多いのか /防水工事について考える
私がゼネコンにいた25年以上前からずっと、雨漏りによる修繕はトラブルになりやすい工事でした。雨漏り修繕を管理会社や業者に依頼して工事をしたにも関わらず、雨漏りが続くことが多いのです。住民は何度工事をしても雨漏りが止まらないため、管理会社や業者に不信感を抱くことになり、トラブルに発展します。今回はなぜ防水の修繕工事にトラブルが多いのかについて、考えてみたいと思います。
嫌がる業者が多い雨漏り修繕
先に書いたように、雨漏りは修繕しても止まらないことがよくあります。シーリングが切れているなど、明らかに不具合が起きている部分を工事をしても雨漏りは止まらず、修繕工事が足掛け数年になることも珍しくありません。そのため業者によっては工事の「手切れが悪い」と言って、嫌がるケースもあります。1度修理しても、後から何度も呼ばれることになるので利益が出にくいというのです。さらに雨漏りが止まらないとトラブルになることもあり、嫌がるのです。
雨漏り工事を発注する際には、業者が嫌がるようでしたら他の業者を探すようにしましょう。雨漏り修繕工事は正しく行えば手切れが悪い仕事ではありませんし、トラブルにもなりません。嫌がる業者は雨漏り工事に関する理解や知識が乏しい可能性が高いので、他の業者を探した方が良いと言えるでしょう。
繰り返し起こる漏水
雨漏りは修繕しても、同じ箇所から繰り返し漏れることがあります。何度工事をやっても雨が降る度に漏れてしまい、修繕工事が長期化するケースが多くあります。室内に雨が漏れてくるのは不快ですし、家電製品が壊れたりカビの原因にもなります。そのため住民は早期に解決して欲しいのですが、何度工事をしても雨漏りが続くため、不信感を募らせるようになってしまいます。
業者の腕が悪いため、いつまで経っても雨漏れが止まらないと思われがちですが、マンションの雨漏れは原因の特定が難しいことが多く、どんなに腕が良くても一回の修理で雨漏りを止めるのは難しいのです。どこそこの雨漏りを一発で止めた、と自慢する業者さんもいますが、大抵の場合は運が良かっただけでう技術の高さとはあまり関係がありません。
原因究明が困難な漏水事故
マンションは形状が複雑で、コンクリートのパラペットや庇、段差のある床などが組み合わさってできています。そこに何層にも重ねたアスファルト防水を行うなど、防水層の形状が複雑になっています。コンクリートのどの部分にもひび割れが発生する可能性があり、そのコンクリートはタイルや防水層の下になっているので、ひび割れた部分が目視できないことがほとんどです。
ひび割れの入り方はある程度の予測ができますが、予測通りに入っていないことも多いので断定することはできません。そのため原因の特定が困難な場合がほとんどで、修繕工事は常に手探りになります。
多くは建設時の工事に原因がある
ほとんどの場合、雨漏れの根本的な原因になるものは新築の工事に原因があります。
①防水工事が適切に行われていない
材料の選定、工法の選定などが適切ではなく、適切な場合でも施工不良がある場合です。特にウレタン塗膜防水では薄く塗りすぎて膜厚が不足しているケースが多く見られます。そもそもウレタン防水の適切な厚さを知らずに何十年も工事している業者もいますので、ウレタン塗膜防水は注意が必要です。
②コンクリート躯体が適切ではない
コンクリート躯体の形状が適切でないケースも多くあります。パラペットのコーナーが90度より狭い鋭角になっている場合は、アスファルト防水が適切に施工できません。またコンクリートの打継ぎが防水層の下にある、稼働する部分が防水層の下にあるなど、不適切な施工がされているケースもあります。防水は防水層だけで行うのではありません。その下のコンクリート駆体が重要です。
このことを熟知している現場所長は、躯体の施工図を描く際に防水屋と打合せを行います。しかしそこまで行っている現場所長は、私が知る限りでは少数派です。そのため雨漏りがあった現場を調査すると、躯体の形状に難があるため無理な防水工事を行っていることが多々あります。
誤解からトラブルが頻発する
①知識不足が招く誤解
躯体に原因があるとは思わず防水層ばかりを見ていると、雨漏りが繰り返すことが多々あります。多くの場合、雨漏りを起こす箇所はそれなりの年数が経っているのであちこちに劣化が見られます。知識・経験が少ないと、その劣化部分が原因だと早合点してしまい、それらを修繕すると雨漏りが治ると説明してしまうのです。しかし実際には原因の特定は困難で、一目見て原因を特定する人の大半は経験と知識が不足している人です。
また経験とは何十年、建築の仕事をしているかはあまり関係ありません。「大手建設会社の元所長で、30年以上の現場経験がある」と言えば経験豊富なように思えますが、そうとも言えないのが雨漏り工事の面倒なところです。この件については別の記事に書いていますので、参照してください。
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②説明不足が招く誤解
雨漏り修繕は、1度の工事で雨漏りがピタリと止むことはなかなかありません。しかし修繕を依頼した側は、1回の工事で雨漏りが止まると思っています。そして上記の知識不足・経験不足が相まって「ここを修繕すれば雨漏りが止まります」と言ってしまい、雨漏りが止まらないのでトラブルに発展します。図面を見て現場を見てわかるのは原因の可能性までで、ここを修繕すれば雨漏りが止まると断言できることはほとんどありません。
しかし実際には、1度の修繕で雨漏りが止まるかのような説明をしてしまい、トラブルになっています。私がお邪魔する物件のほとんどがこのパターンで、決して変な工事をしているわけではないのにトラブルになっていました。最初に数回の工事が必要になる可能性を説明しておけば良いのですが、1回で工事が終わらないかもしれないという不確定なことを言えない人が多いのです。
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雨漏り修繕の進め方
現地調査、図面の確認を行って漏水箇所を予想していき、その予想の中で最も漏水が起こる可能性が高いところから修理していきます。修繕計画書を作成して説明し、お客さんが納得してからでないと雨漏りの工事はトラブルになりがちです。具体的な進め方に関しては、以前の記事にかいていますので、そちらをご覧下さい。
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まとめ
雨漏り修繕がなかなか終わらない、管理会社が何度も修理しているけど雨漏りが止まらないという声はよく聞きます。本当に正しい修繕を行っているのか、手抜きでやっているのか不安になる管理組合も多いと思います。そういった方は下記のメールフォームからご連絡ください。これまで数百件の雨漏り事例を見てきた経験を元に、相談にのらせていただきます。初回の相談は無料で行っていますので、お気軽にご連絡下さい。