築30年の中古マンションは狙い目か?

現在のマンションは新築市場よりも中古市場が活気付いています。新築の販売戸数が減り、中古マンション市場に目が移るのは必然で、中古マンションの選び方などの指南書も多く見るようになりました。そんな中で、築30年のマンションが狙い目という声を多く聞くようになりました。そこで今回は築30年の中古マンションは狙い目か?ということについて、考えてみたいと思います。

竣工年で考える

2020年の現在、築30年のマンションは1990年の竣工になります。いわゆるバブル景気の中で竣工したマンションで、第5次マンションブームの末期に竣工したマンションになります。築30年に限らず、このバブル景気の頃に竣工したマンションの人気は根強く、この時期のマンションだけを限定して探している方もいるほどです。他の時代にはない高級な仕様と、立地の良さが人気となっています。

バブル景気とは

若い方にはピンと来ないと思いますし、また現在言われているバブル景気の頃の日本の姿は当時の実態とは違う面があるので、少しバブル景気を解説したいと思います。きっかけは1985年9月に行われた先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議(G5)でした。

当時のアメリカは膨大な赤字に苦しんでいて、ドル危機が起こると言われていました。そこで先進5ヵ国が集まり、ドル安にすることで合意しました。これは会議が行われたプラザホテルにちなんで「プラザ合意」と呼ばれています。アメリカの赤字の大部分が対日赤字だったので、この合意は急激な円高ドル安を招きます。一時的に日本は円高不況になりますが、世界中の投機マネーが集まり、未曾有の好景気になっていきました。

※ニューヨークのプラザホテル

日本国民が好景気を実感するようになるのは、メディアが好景気だと連呼するようになった88年からで、庶民の間でも財テクブームが起こりました。就職は超売り手市場で、1人の学生に10以上の内定が出ました。儲けすぎた会社が竹藪に1億円以上を捨てたり、日本企業がアメリカの不動産を買い占めたり、フェラーリなどの高級車が飛ぶように売れていました。

しかしこの好景気を謳歌できない人も多く、例えばサラリーマンなどは多額の税金を払うことを嫌がった会社の命令で、毎月数百万円もの接待費を使わなければならず、夜な夜な眠い目を擦りながら飲み屋をハシゴしなくてはなりませんでした。給与は上昇しましたが住宅価格も高騰し、家を買うのに苦労する時代でした。

バブル景気のマンション

マンションを建てれば売れる時代で、無理して1億円のマンションを購入しても、1年後には1億3000万円で転売できると言われました。あるマンション デベロッパー には、毎日のように朝から人が押しかけて「次の販売はいつだ?」と問い合わせていたそうです。

※バブル期の代表的マンション「広尾ガーデンヒルズ」

この頃のマンションは浮かれた世相を反映して、豪華なつくりのマンションが多く存在します。大理石のカウンターキッチンや、高級木材を使用した作り付け家具などが流行し、見た目を重視した仕様が多く見られます。その一方で建設現場は人手不足が横行しており、突貫工事が当たり前のようになっていました。

この頃のエピソードとして、職人の数が足りないので職長に増員を依頼したら自分の妻と高校生の息子を連れてきた、なんて話はあちこちで聞きます。職人が不足しているので素人同然の家族を働かせ、それで1日何万円ももらっていたというわけです。このように人手不足が常態化したことで、建築の素人が工事に参加することが珍しくなくなり、現在の視点では考えられないような施工不良が多いのもバブル期の特徴でした。

最高値だった90年のマンション

このように人手不足が常態化し、突貫工事が当たり前になったバブル期ですが、90年にマンション価格は最高値になります。下図はマンションの平均価格のグラフですが、90年が突出して高値だったことが分かると思います。

※不動産経済研究所「全国マンション市場40年史」より

参考

不動産経済研究所「全国マンション市場40年史

この後、バブル景気は弾けて未曾有の不況がやって来ます。不況は長期化し「失われた10年」「失われた20年」などと言われ、21世紀に入っても不況は続きました。マンション価格の下落は続いたため、90年に最高値で買った人は売却しようにも安値でしか売れず、高いローンを高金利で払い続けることになりました。

新陳代謝が止った

マンションは住んでいる人が入れ替わり、常に若い世代が入ることが前提になっていました。しかし90年に新築で購入した人は、その直後から新築価格の暴落が始まると同時にマンションが売れない時代に突入しました。バブル景気の崩壊です。さらに給与が下がり、支払いに苦しむ人も増えました。少しでも安い金利のローンに切り替えるくらいしか防衛策はなく、相場より遙かに高値で購入したマンションのローンに苦しみながら住み続けることになりました。

その結果、マンションの老朽化と住民の高齢化が同時進行するようになってしまいました。90年に35歳でマンションを購入した人は、2020年の現在は65歳になっています。ある程度の損を覚悟で売却した人もいますが、多くの人が売れないまま住み続けています。本来マンションに求められていた、常に若い人が流入する新陳代謝が止まってしまったのです。

マンションは築30年を過ぎてから、維持費がかかるようになります。30年を過ぎてからエレベーターの交換、給排水管の交換など高額な費用が必要な修繕が次々にやってくるからです。しかし築30年を過ぎて高齢者しかいないマンションでは、修繕積立金を値上げしようにも困難になりがちです。

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本当に築30年目のマンションは狙い目か?

このように築30年目のマンションは、マンション価格が最も高値の時に売られていたマンションです。その後、住宅ローンに苦しみましたので、住民の新陳代謝が起こっていないマンションが多くあります。もちろんお買い得の物件もあるでしょうが、安易に築30年が狙い目と考えて購入するのは危険な気がします。バブル期のマンションは好立地の物件が多く、今後も大きく値下がりしないと考えられるため人気があります。購入する際には、十分な吟味を行ってから購入するようにしましょう。

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