エリザベス女王はイギリス最大の不動産屋だった!?/英王室の資産事情

2022年9月8日、イギリスのエリザベス女王がバルモラル城で死去しました。そのニュースで各国は持ちきりで、女王に関するさまざまな情報が報じられていますが、このブログでは不動産の視点からこのニュースを見ていきたいと思います。見方によってはエリザベス女王はイギリス最大の不動産屋であり、その賃貸料だけで莫大な利益を上げていました。今回は語られることが少ない、イギリス王室の収入と不動産について書いていきたいと思います。

エリザベス2世とは

1926年にヨーク公アルバート王子と妻のエリザベス妃の間に、第一子として誕生しました。両親からリリベットと呼ばれ、ロイヤルファミリーの一員として育ちます。当時の国王は祖父であるジョージ5世でした。ジョージ5世が亡くなると父の兄であるエドワード8世が国王に即位します。しかしエドワード8世はアメリカ人のシンプソン夫人と結婚するため、在位325日で国王の退位が決めました(通称、王冠を賭けた恋)。こうして弟のヨーク公アルバート王子が、ジョージ6世として国王に即位しました。リリベットは父親が突如国王になったため、10歳で王位継承一位になります。これらの過程は映画「英国王のスピーチ」にも、描かれています。

※父ジョージ6世と幼い日のエリザベス女王

第二次世界大戦中は女性のロイヤルファミリーとして初めて陸軍に入隊し、英国女子国防軍に入隊しました。この経験から、後に子供達にも厳しい軍務を課して、王族だからといって特別扱いされることを徹底的に拒否するようになります。1947年にはギリシア生まれの英国海軍軍人であったフィリップ・マウントバッテン(後に放言王と呼ばれるフィリップ殿下)と結婚しました。そして1952年に父親のジョージ6世が亡くなると、25歳でエリザベス2世として女王に即位しています。

※エリザベス女王とフィリップ殿下

女王に即位してからは、あまりに多くのエピソードがあり、とても書ききれません。ヴィクトリア女王を抜いてイギリス史上最高齢の国家君主となり、スキャンダルにまみれた英国王室の中で職務に邁進することで、王室の威厳を保ち続けました。2020年の王室の人気投票では、エリザベス女王が1位を獲得し、2位のウィリアム王子に大きく差をつけていました。イギリスだけでなく世界各国で親しまれた女王でした。

エリザベス女王の収入

エリザベス女王は、公務などで毎年60億円以上を使っていました。これほどのお金を使っているのですから、かなりの収入があるはずです。そこでエリザベス女王の収入源を見ていきましょう。

①王室助成金

イギリス政府から女王に支払われるお金です。エリザベス女王の収入の中で、最も大きな割合を占めています。この内訳は後述したいと思います。

②ランカスター公国 Duchy of Lancaster

イギリス内の王室公領で、こちらの収入が王室の必要経費の支払いに使われています。2016年から2017年にかけては30億円近い収入があったそうで、こちらも大きな収入源になっています。

③私的収入

エリザベス女王は個人資産として540億円以上を所有しています。その中にはサンドリンガム・ハウスや、亡くなった際にいたバルモラル城(若き日に女王が虫取り網でコウモリを捕まえていた話が有名)などが含まれていて、これらの観光収入が王室の収入になっています。またエリザベス女王は馬主としても成功しており、約30年間で10億円以上を稼いでいるようです。

※サンドリンガム・ハウス(上)とバルモラル城(下)

④その他

ロイヤル・コレクションからの収入や、さまざまな収入が他にもあります。詳細は発表されていますが、私が読んでもなんのことかわからないものも多いので、ここでは省略したいと思います。

ザ・クラウン・エステート The Crown Estate

先に挙げた王室助成金は、ザ・クラウン・エステートで支払われています。これは国王の土地や不動産などの権利を指す言葉で、平たく言うとエリザベス女王の土地や不動産から得られる収入です。その不動産はイングランド、ウェールズ、アイルランド、スコットランドに存在していて、それを管理している資産管理会社が利益をイギリス政府に納め、その一部(15%から25%)が政府から女王に納められています。イギリス政府は、ザ・クラウン・エステートから過去10年で2900億円以上の収入を得ていると言われています。

これらは古くは1066年のノルマンディ征服から始まり、イングランド王が征服を果たす度に莫大な土地を手に入れ、それらの一部を貴族らに分け与えていました。そして国王は自らの領地から得た利益を、政府の一般的な経費に充てていたのです。形態は時代によって変化しますが現代でもこれが受け継がれており、今でもイギリス最大の地主は国王なのです。王の土地や不動産から得られる莫大な利益は政府の運用に使われ、そして一部が王室の運用に使われています。

ザ・クラウン・エステートの内訳

これらの資産評価額は2兆円近くになると言われており、2015年から2016年にかけての純利益は500億円近くになるそうです。これらがイギリスの財政に大きな役割を果たしており、イギリス王室の運営も賄われています。

①都市部の資産

ロンドンの有名な観光地の多くが、クラウン・エステートです。リージェント・ストリート全域、セント・ジェームズの半分、オックスフォードやノッティンガムなどの商業施設が含まれます。

②農村部の資産

農業、鮭漁、森林、高山に関する権利です。イギリス全土に14万ヘクタールの農地、1万ヘクタールを超える森林、12万ヘクタールの土地から鉱物を採取する権利を保有しています。

③ウィンザー領

ゴルフクラブやアスコット競馬場、公園などがあり、さらにホテルなどの商業施設を含みます。3100ヘクタールの森林もあり、これらの収入が充てられています。

※アスコット競馬場

④海洋保有

イギリスの海岸線の半分以上を保有しており、さらにその残りの一部をランカスター公国が保有しているため、イギリスの海岸線の大部分がイギリス国王のものになります。そして海底の大部分も保有しています。近年では海岸に風力発電設備を設置して発電していますが、これもクラウン・エステートの事業です。また養殖産業の多くは、クラウン・エステートから権利をリースして行われています。

⑤その他

これ以外にも多くのショッピングセンターや商業施設、オフィスビル、公園などを保有しています。

イギリス最大の不動産屋の所以

このようにイギリスの都市部の観光地の多くや、海岸線のほとんどや森林を所有していることもあり、イギリス最大の地主はエリザベス女王でした。それらの運用で得る莫大な収益は国家予算として使われ、さらにその一部が王室のために使われています。その資産は息子のチャールズ3世に引き継がれ、これからも運営されていきます。ちなみに王室は自身の収益から所得税を払う必要がなかったのですが、相次ぐスキャンダルで王室への目が厳しくなったことで、93年から所得税を納めています。

まとめ

華やかな一面とスキャンダラスなニュースばかりが取り沙汰されるイギリス王室ですが、今回は不動産の視点から王室の資産を書いてみました。イギリス最大の地主だったエリザベス女王の財産は、息子のチャールズ3世に引き継がれ、今後もイギリスの財政を支えていくでしょう。エリザベス女王を不動産屋なんて言ったら不敬な気もしますが、今回はあまり語られないイギリス王室を不動産の視点で紹介してみました。

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