ハウスダスト対策にフローリングは最適なのか /床の歴史を見てみよう

現在のマンションの床は、フローリングが全盛です。床がフローリングでないマンションを探す方が難しいくらいで、マンションの床材といえばフローリング一択のようになっています。しかし本当に床材はフローリングがベストなのでしょうか。今回はフローリング材の解説とフローリングが選ばれるようになった理由について書いてみたいと思います。

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フローリングとは

板張りの床を示す和製英語です。なぜこのような言葉になったのかはさっぱりわかりませんが、とにかく板張りの床をフローリングと呼ぶようになりました。このフローリングは見た目が似ていても、いくつもの種類があります。その種類には、まず無垢フローリングと複合フローリングがあります。

①無垢フローリング

天然木100%の一枚板でできたフローリング剤です。素材はパインやヒノキ、スギやウォルナットなどがあり、新しい間は木の香りがします。長年に渡って風合いの変化を楽しめる床材で、ヨーロッパの古い住宅などは無垢のフローリングが貼られています。フローリングで最も高価なものは、大抵は無垢フローリングです。

しかし一枚板のため温度変化や湿度変化に敏感で、ソリやねじれが起こりやすいという問題があります。夏には床材と床材の間がピッタリ詰まっているのに、冬になると隙間ができたりします。水分をこぼした場合は、すぐに拭き取らないとシミになります。オイル仕上げの場合は、定期的にオイルを塗る必要があり、メンテナンスに手間隙がかかるのが特徴です。

②複合フローリング

合板の上に化粧材を貼ったものです。合板なので、無垢フローリングのようにソリやねじれが起こりにくくなっています。冬になったらフローリングの間に隙間ができるようなことはありません。また合板は無垢材に比べて安いため、無垢フローリングより安価に購入できます。無垢材のデメリットを補う形でできたのが複合フローリングで、現在のフローリングは戸建も含めてほとんどが複合フローリングになっています。そして複合フローリングにも複数の種類があります。

②-1挽き板

合板の上に2mm程度の厚さの化粧材を貼ったものです。化粧材にはウォルナットやオークなど、様々な素材が使われます。ある程度の厚さがある化粧材を貼るため、見た目は無垢材で風合いも無垢材に近いものがあります。しかし無垢材と違ってソリやねじれが起こりにくくなっています。

化粧材にある程度の厚みがあるので、傷にも強く摩耗しても木材の風合いが変わりません。複合フローリングの中では高価な部類に入るため、今でも高級マンションなどに使われているのを見かけることがありますが、ほとんどのマンションでは使われなくなっています。

②-2突き板

合板の上に 0.2mm〜1mm弱の化粧材を貼ったものです。化粧材が薄いので挽き板より価格を抑えることができます。そのため一時期はマンションのフローリングと言えば、突き板ばかりになっていました。ただし化粧材が薄いため、ものを落としたりすると化粧材が破れて下地材が見えることがあり、傷に弱いという弱点があります。突き板は、挽き板の価格に対する不満から出てきた安価な製品と言えるでしょう。

②-3シート

合板の上に、オレフィンシートなどに木目を印刷したものを貼ったものです。木目がありますが、印刷機によって印刷されたものなので、化粧材が天然素材のように見えて全く異なります。最初にメーカーから提案された時は、紙に木目を印刷して貼り付けるなんてジョークで言っているのかと思いました。

オレフィンシートなので薄いですが、強度は突き板よりもあり、突き板に比べて傷に強くなっています。また挽き板や突き板では、木目が気に入らないというクレームが少なからずありました。しかしプリントすることによって、美しい木目だけを再現することが可能になりました。現在のマンションのフローリングは、ほとんどがこれになっています。

もともとは無垢フローリングだった

古いヨーロッパの建物では、無垢材のフローリングが使われています。元々は無垢フローリングが当たり前でした。これが日本に持ち込まれて、現在のフローリングに進化しました。洋式のフローリングの前は、日本のマンションは板張りと呼ばれる単層の板を台所などに貼っていました。そして居室は畳敷が主流でした。

※日本住宅公団 51C型

やがて生活スタイルを洋風に合わせていき、居室はカーペットが主流になります。1990年代から2000年代初期の頃は、カーペットが多く採用されています。私がデベロッパーにいた2000年頃は、リビングはフローリングで寝室はカーペットという間取りが多くありました。しかし徐々にフローリングが主流になり、現在のように全室フローリングが当たり前になっていきます。

当初の無垢フローリングは、日本の生活スタイルに合わない面が多くありました。ヨーロッパのように靴で室内を歩く生活なら数ミリの段差があっても気になりませんが、裸足か底の薄いスリッパで歩く日本人にはとても気になります。また日本人は床に寝転がることが多くありますが、段差のある床はそういった生活には向いていません。

何より無垢フローリングは湿度変化に敏感ですが、住宅の気密性が上がったことで、大きなソリが生じたりするようになると、フローリングの欠点として言われるようになります。そのためマンションでは、当初から合板が使われていました。

カーペットから主役を奪ったフローリング

無垢フローリングから複合フローリングに変わって、ソリやねじれの問題は解消されるようになりました。しかしフローリングは音の問題がありました。上下階の音がトラブルになりやすいマンションでは、音が響きやすいフローリングが敬遠されたのです。スプーンを床に落としただけで、下に住む人に迷惑をかけるフローリングは、マンションには不向きとされていました。

しかし床材のメーカーは、フローリングの遮音性を徐々に改善していきます。そしてカーペットに負けない遮音性を持つようになっていきました。もちろん遮音だけを考えると、今でもカーペットが有利だと思います。しかし以前ほど、大きな差がなくなっていたのです。さらにカーペットへの不満が、フローリングの勢いを増すことになります。

カーペットの最大の問題は、メンテナンスでした。ジュースや醤油などをこぼした際に、カーペットは拭き取るのが大変です。こぼしたらすぐに叩くようにして拭き取ることが重要ですが、シミになりやすいことに変わりはないのです。そしてマンションを買う人の多くは、子育て世代の若い夫婦だったため、何かとこぼしやすい小さな子供がいる家庭にカーペットはストレスでした。

さらに室内の化学物質がアレルギーを引き起こすシックハウス症候群が社会問題になると、ほこりのアレルギーも注目されました。カーペットに溜まるほこりがアレルギーの原因になると言われ、上記のメンテナンス性と合わせてカーペットを敬遠する人が出るようになりました。さらにカーペットはダニの温床と言われるようになり、カーペットがアレルギーを引き起こすと言われるようになりました。

そこで水をこぼしてもサッと一拭きでシミにならず、ほこりも掃除機で簡単に吸い取れるフローリングに注目が集まりました。こうして最大の懸念だった遮音性をクリアし、メンテナンスが楽でほこりも溜まりにくいフローリングがマンションの床を席巻するようになりました。今や日本のマンションのほとんどの床がフローリングになり、カーペットのマンションは0.2%しかないという数字もあります。

フローリングの弱点

フローリングは掃除機で簡単にほこりを吸い取れることから、ほこりに強いと言われるようになりました。しかし実際にフローリングの家に住んでみると、家のあちこちにほこりが溜まっているのを見かけませんでしょうか。フローリングは、ほこりが溜まりやすいようにも感じます。

本当にカーペットはほこりが溜まりやすいのか?という疑問に、日本カーペット工業組合と信州大学、大阪府立産業技術研究所が研究を行っています。その結果、カーペットはほこりをカーペットに吸着させるため、床を歩行した時のほこりの舞い上がりは、フローリングの1/10だったと発表しています。この結果を元に、日本カーペット工業会は以下の動画を制作しています。

またプレスリリースも発表しています。これらが100%正しいかはともかく、盲目的にフローリングの方がアレルギーなどに良いと考えるのはどうかと思います。同時にリフォームなどで床を選ぶ際には、フローリング以外も検討しても良いでしょう。
日本カーペット工業組合 ニュースリリース

フローリングの利点

なんと言っても掃除のしやすさにあります。ホコリは掃除機で簡単に吸い取れますし、水などをこぼしても簡単に拭き取れます。カーペットは拭いた後もしばらく湿っていますが、フローリングなら拭いてしまえば水気を簡単に取り除くことができます。また無垢フローリングでなければ、ジュースなどをこぼしても、すぐに拭き取ればシミになることはほとんどありません。

以前はフローリングの色目などの種類が少ないという問題がありましたが、今では複合フローリングは種類も豊富になっているので、欲しい色や木目のものがないということは少ないでしょう。ただし無垢フローリングは種類が限られますし、必ずしも欲しい木目があるとも限りません。また部屋全体に貼ったときに、木目がバラバラになることもあります。もっともそれが自然素材の良さでもあるので、無垢フローリングを選ぶ方はそれを理解したうえで購入する必要があります。

まとめ

現在のマンションの床のほとんどはフローリングです。そしてフローリングにはさまざまな種類がありますが、現在最も多いのはシート張りの複合フローリングです。フローリングにもメリットとデメリットがあるので、床をリフォームする際にはこれらを知ったうえで選ぶ必要があります。特に無垢フローリングは、こんなはずじゃなかったと後悔する人もいるので、特性をよく理解してから選ぶべきです。またフローリングだらけになった現在だからこそ、それ以外の床の良さも知って欲しいと思います。

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