マンションにグランドピアノを入れる時の3つのポイント

中古マンションを購入予定の方からメールを頂きました。自宅にあるグランドピアノを持って行きたいけど大丈夫だろうかという質問です。現在は実家の戸建てにお住まいで、休みの日にピアノを弾いているのだそうです。マンションを購入してピアノをそのまま持って行き、マンションで弾いても大丈夫かという質問にお答えしました。

マンションにピアノを持ち込む問題点

マンションの1室にグランドピアノを持ち込んで弾くとなると、大きく分けて3つの問題点があります。搬入・音・重量の3点で、これらをクリアしなくてはマンションでグランドピアノを弾くことはできません。この3つの問題をそれぞれ解説していきましょう。

①搬入の問題

ピアノのサイズや重量によって、搬入の方法が変わります。駐車場からエントランスまでの搬入通路の幅、廊下・階段の幅、エレベーターホールの幅や奥行きなど、共用部に運べる広さがあるか確認が必要です。さらにエレベーターは重量制限があるので、ピアノの重さと比較して問題ないか確認しなくてはなりません。

※廊下の幅だけでなく曲がれるかも重要

共用部を運べても、今度は専有部内の玄関や廊下の幅の問題があります。特に搬入する部屋のドアの幅や廊下で旋回できるかなどの確認も必要です。これらはピアノの搬入業者に依頼すると、確認を行ってくれます。必ず専門業者にお願いしましょう。搬入後は調律が必要になるので、専門業者にお任せしておいた方が間違いありません。

もし廊下の幅が狭くとも分解して搬入する手もあるので、グランドピアノが持ち込めないということはほとんどないと思います。ほとんどの場合、専門業者の方がなんらかの方法で持ち込む方法を見いだしてくれます。

②音の問題

マンションでピアノを弾くと、ほぼ確実に騒音のクレームがやってくるでしょう。ピアノの音はアップライトであってもかなり大きく、ましてや今回はグランドピアノなのでかなり大きな音が出てしまいます。防音対策を施さずにピアノを弾くのは、無謀と言えるでしょう。ピアノの音は90〜110dB(デシベル)と言われています。これは騒音レベルとして、かなりうるさい音の大きさです。

騒音対策として防音グッズを壁に張り巡らせる人がいますが、ほとんど効果は期待できません。これらのグッズは空気伝播してくる音の対策で、ピアノの振動によって伝わる固体伝播には無力だからです。グランドピアノを室内に持ち込んで弾くなら、防音室の完備が必要になります。方法は工事して部屋全体を防音室に変えるか、防音室を室内に持ち込むかの2つになります。

②-1防音室工事

工事そのものは防音工事専門の業者にお願いする必要があります。一般的な工務店でも防音工事を依頼すればやってくれますが、防音は特殊な工事なので技術レベルが全く違います。既存の床、壁、天井を解体して、室内に新たな部屋を造るような工事になりますので、時間も費用もかかります。部屋の規模や形状にもよりますが費用は数百万円で、工事期間は1週間以上はかかると考えてください。

工事を行うには、事前に管理組合への届出が必要になります。また工事内容によっては、重量の面から管理組合からダメと言われる可能性もあります。業者とよく相談したうえで管理組合に届けるようにしましょう。

②-2防音室の設置

既成の防音室を部屋に持ち込んで設置する方法です。上記の工事に比べて安価かつ短期間で可能ですが、防音性能は上記の工事に劣ることもあります。防音性の違うさまざまな商品が出ているので、お財布と相談しつつ決めることになると思います。ただしピアノの音は90dBから110dBぐらいになるので、最低でもDr-40以上の防音性能を持ったモデルを選んで下さい。

Dr-40というのは騒音を40dB下げるという意味で、110dBの音を70dBに下げる性能ということになります。70dBというのは結構うるさい音なので、そのままではクレームが出る可能性があります。ピアノによって出る音の大きさお違うので、防音室を設置する際にはメーカーとよく相談しましょう。ヤマハやカワイなど楽器メーカーから、防音室は販売されています。

③重量の問題

工事で防音室を造る場合でも、既成の防音室を設置する場合でも、重量が問題になります。マンションのコンクリートスラブ(床)は、180kg/㎡以上の耐力を持つことが義務づけられています。そのためほとんどのマンションのスラブ(床)の耐力は180kg/㎡と考えていいでしょう。これ以上に重い物を置いた場合、トラブルの原因になりかねません。

コンクリートのスラブ(床)は、マンションの共用部分になります。そのため破損させると管理組合に対して賠償責任が生じます。もし過剰に重い防音室を設置して、スラブ(床)にひび割れが入っているのが見つかれば、責任を問われるかもしれませんし、その場合の賠償額はかなりの高額になることも予想されます。そのため重量には十分に気をつける必要があります。

※ヤマハ セフィーネNS AMDC37H(出典:ヤマハwebサイト)

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例としてヤマハの防音室「セフィーネNS AMDC37H」というモデルで見ていきましょう。こちらはサイズが2325mm × 2766mmで、高さが2095mmになっています。重量は797kgです。これにグランドピアノの重量が加わります。ピアノのモデルによって重さは様々ですが、今回は300kgとしましょう。さらにピアノを弾く人の体重が加わります。これは50kgと仮定しましょう。

797kg + 300kg + 50kg = 1102kg

そして防音室の面積ですが、床のサイズが2325mm × 2766mmなので6.43㎡です。1㎡あたりの重さは

1102kg ÷ 6.43㎡ = 171.4kg/㎡

180kg/㎡を下回るので、これなら大丈夫です。ただしこの重量は本体のみの重さで、オプションで窓をつけたり高性能床をつけたりすると重さが増していきます。またピアノを誰かに教えるので2人で使用する、連弾をするなどの場合は2人分の体重を計算しなくてはなりません。

まとめ

マンションにグランドピアノを持ち込む場合の、3つの注意点を書いてみました。搬入にしても防音室にしても専門業者のアドバイスが不可欠で、多少値段が高くなっても専門業者に依頼するようにしましょう。

1974年には平塚市の団地で、ピアノの騒音を巡って殺人事件が起こったこともあります。騒音には敏感になっている昨今ですので、マンションでピアノを弾く際には十分な配慮が必要です。そして騒音だけでなく重量も大きな問題になりかねないので、こちらも忘れないようにしましょう。

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