高級マンションなら騒音が少ないのかという質問が来ました

タイトルの通りなのですが、メールの無料相談に騒音の相談がやってきました。高級マンションなら騒音問題に悩まないのかという質問です。高級マンションなら騒音も対策されているだろうと質問者の方は思っているようですが、果たしてどうなのでしょう。今回は物件価格と騒音の問題について考えてみたいと思います。

高級マンションとはなにか

高級マンションに定義はありません。多くの場合、高級マンションと呼ばれるものは販売価格が高額のものを指しているようです。また立地によるステイタスや、充実した共用施設なども高級マンションの条件に入ることがあるようです。しかし多少良い立地でも共用施設が充実していても、販売価格が高額でないものは高級マンションとは呼ばれにくいようです。

ではいくらぐらいから高級マンションに入るのか見ていくと、1億円を超えるあたりから高級マンションと呼ばれることが多いようです。もちろんこれに決まりはなく、人によっては8000万円ぐらいでも高級マンションと言いますし、最近は2億円を超えないと高級マンションと言わない人もいるようです。ようするに明確な決まりがないのです。

遮音性を決めるもの

音には空気を伝わって聞こえる空気伝播音と固体伝播音があります。マンションの騒音もこの2つがあり、それぞれに遮音対策を行う必要があります。特に問題になりがちなのが固体伝播音で、上階の足音などは固体伝播音として下階に伝わってきます。また遮音や防音、吸音などの言葉が曖昧に使われているので、以前まとめたことがあります。それが以下の記事です。

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空気伝播音は近隣の騒音などとしてやってきます。向かいのマンションから聞こえる楽器の音などは空気伝播音です。これらを防ぐにはサッシの遮音性能や、排気口などの遮音性が重要になります。一方で固体伝播音はコンクリートの壁の厚さや重さに関係します。完全に固体伝播音を遮断するには、内装とコンクリートの縁を完全に切る必要があります。多くのマンションの床は置き床を用いた二重床になっていますが、音楽スタジオなどで用いられている完全浮き床構造にすることで固体伝播音を最小限に減らすことができます。しかしそのようなマンションを、私は見たことがありません。楽器の演奏が可能な賃貸マンションなどでは、採用されているのかもしれません。

マンションの価格を決めるもの

マンションの価格は土地代+建設費+経費で決まります。土地代も建設費も首都圏と地方では異なりますが、特に大きな差が出るのは土地代です。以下のグラフは国土交通省が行っている都道府県地価調査の令和2年度のデータです。全ての都道府県をグラフにすると見にくいので、主要な都市だけ抜き出しました。

また地価は住宅地の価格のみをグラフ化しました。数字は1㎡あたりの価格(円)を表しています。東京が他より突出して高いのがわかると思います。最も安い北海道の19,200円と東京の374,300円は、19.5倍もの差があります。建設費も東京と地方都市では差があると書きましたが、20倍近い価格差は存在しません。

このことからわかるように、地方都市に建っているマンションを東京に持ってくるだけで、価格は簡単に倍以上になります。地方都市の3000万円のマンションと都心の1億円のマンションが、構造や仕様などがほとんど変わらないということもあるのです。

今や1億円は新築マンションの平均価格

今年5月に不動産経済研究所に発表された2021年4月のマンションの平均価格によると、東京23区の新築マンションの平均価格は1億180万円だそうです。もはや億ションが平均になってしまいました。

不動産経済研究所発表資料

平均価格が1億円越えと言うのは異常な数字ですが、2013年頃から新築マンションの価格が飛び抜けて上昇しているので、とうとうここまで来たかという感じもします。新築価格の近年の異常な上昇は、以下の記事にも書いています。

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高級マンションは遮音性が高いか

このように東京ので販売価格が高くても、地方の安いマンションと中身はさほど変わらないことがあります。もちろん1億円を超えるマンションだと仕上げなどで高級に見える素材を使うこともありますし、デザイン的にも凝ったものがあります。しかし1億円ぐらいのマンションだからと言って、特に遮音対策で特別なことをやっていないマンションは多いのです。

しかし最近は販売価格が5億円ぐらいのマンションも増えていますし、数十億円という桁外れのものもあります。こういったマンションは企画や施工に参加したことがないので私にはわかりませんが、1億円ぐらいのマンションでは特別なことは期待しない方が良いと思います。良くても置き床の遮音仕様が少し良いとか、壁のコンクリートがちょっと分厚いかぐらいです。もちろんそれは遮音性に影響を与えますが、劇的に違うとは言えません。

まとめ

高額なマンションになれば、それなりに遮音対策を施しているケースもあるでしょう。しかし1億円ぐらいのマンションでは、あまり期待できないと思ってください。数億円以上のマンションに関しては、私も携わったことがないので明確なことは分かりません。遮音性を気にする方は、マンションごとに遮音性をチェックするしかないでしょう。そしてほとんどのマンションでは固体伝播音を完全に遮断できていないので、ある程度の騒音は聞こえると思った方が良いでしょう。全く騒音を感じたことがないという人もいますが、それは隣人が静かなだけか細かいことを気にしない性格なのだと思います。

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