マンションの基礎知識02 /RC・SRCってなに?

今回はマンションの基本的な構造について解説します。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造といった言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、正確に説明できる人は少数ではないでしょうか。またこれらの意味を理解するには鉄骨や鉄筋、コンクリートとは何かを知らないといけません。そこで今回はこれらの言葉を整理して解説してみることにしました。

鉄骨と鉄筋は全く違う

マンションに限らず建築に関する報道などを読んでいると、鉄筋と鉄骨が混同して書かれているのをよく見かけます。両者は見た目が全く違うので、一度見た人は間違えないのですが、これほど多くの人が間違えるということは見たことがある人が少ないからだと思います。鉄骨は文字通り鉄の骨で、これだけで構造体を形成できる頑丈なものになります。

マンションの躯体に使われる鉄骨は重量鉄骨で、厚さ6mm以上の鉄骨が使われます。断面がアルファベットのHに似たH鋼、L字に似たL鋼などがあり、それぞれの部材をボルトで固定されてくみ上げられていきます。

※鉄骨

鉄筋は文字通り鉄の筋で、鉄骨よりだいぶ細くなります。鉄筋は鉄骨のように単独で構造体を造ることができず、必ずコンクリートと一体になる必要があります。鉄筋は太さや間隔など組み方が細かく設計図に指定されています。鉄筋は一番細いもので直径が10mmで、太いものだと38mmか41mmぐらいまでがマンションでは使われています。

※鉄筋

コンクリートとはなんだ?

コンクリート・モルタル・セメントも混同されて書かれていることが多い言葉です。この中でも特にセメントは見た目が全く異なるのですが、コンクリートとモルタルは見た目ではほとんどわからないでしょう。しかしこの2つは用途が全く違います。

セメントには様々な種類があるので、ここでは建築で使われる「普通ポルトランドセメント」に限定して説明します。セメントは石灰と粘度を焼いた時にできるクリンカと、石膏を混ぜたものです。見た目は薄い灰色の粉末で、ホームセンターなどでも袋に入って売られています。このセメントに水と砂を混ぜたものがモルタルになります。

セメント+水+砂=モルタル

モルタルは躯体など構造体に使うことはありません。仕上げ材の下地や外装材などに使われます。左官屋さんがコテで塗っているのがモルタルで、モルタルを真っ平らにならした後にペンキで塗ったり、タイルを張ったりして仕上げます。

セメント+水+砂+砂利=コンクリート

※型枠に流し込まれるコンクリート

モルタルに砂利が入ったものがコンクリートです。コンクリートは柱や壁を造る時に使われます。モルタルのようにコンクリートを左官屋さんが塗ることはありません。構造体を形成するのがコンクリートで、仕上げのためにモルタルが塗られます。

鉄筋コンクリート造とは

英語ではReinforced Concreteというので、略してRC造とも言われます。鉄筋とコンクリートを合わせて造った構造体で、引っ張りに強いが圧縮に弱い鉄筋と、圧縮に強いが引っ張りに弱いコンクリートを一体化することで、引っ張りにも圧縮にも強い構造体になります。19世紀にフランスで発明されると、20世紀に一気に産業化されました。

※鉄筋とコンクリートで造られた鉄筋コンクリート

以前は低層住宅にしか使われませんでしたが、高強度コンクリートなど技術進歩により、30階建ての超高層マンションでも鉄筋コンクリートで造られるようになりました。なお鉄筋コンクリートを使う構造体には、ラーメン構造と壁式構造があります。ほとんどのマンションはラーメン構造で建設されており、高層建築物に使えない壁式構造のマンションは少数派です。ラーメン構造と壁式構造については、後で説明します。

鉄骨鉄筋コンクリート造とは

英語でsteel reinforced concreteというので、略してSRC造と言われます。鉄骨で組んだ骨組みに、鉄筋コンクリートを追加した構造で、鉄骨造と鉄筋コンクリート造の双方の良さを兼ねそなえています。鉄筋コンクリートに比べて部材の断面を小さくすることが可能で、高い耐震性を備えていると紹介されることも多いのですが、マンションの耐震性は鉄筋コンクリートであっても鉄骨鉄筋コンクリートであっても変わりません。

鉄骨を使うため設計上の制約が多く、また工程が多くなるので工期が長くなりがちです。そのため上記のように高強度コンクリートが実用化されると、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物は以前ほど多くはなくなりました。時々、鉄筋コンクリートのマンションよりも鉄骨鉄筋コンクリートのマンションの方が頑丈と言う人がいますが、耐震性も含めて強度に違いはありません。どちらも経済設計により、建築基準法で定められた基準ギリギリの強度で造られているからです。

ラーメン構造とは

ラーメン構造は柱と梁を剛接合で繋いだ構造体で、鉄筋コンクリートでも鉄骨鉄筋コンクリートでも使われる構造形式です。ラーメンは中華料理の方ではなく、ドイツ語で「額縁」や「骨組み」を意味する言葉です。現在のマンションのほとんどはラーメン構造でできていると考えて良いでしょう。

壁式構造とは

壁式構造は柱と梁の代わりに壁で建物を支える構造で、WRC造と表記されることもあります。梁や柱を使わないため、鉄骨鉄筋コンクリート造で造られることはありません。全て鉄筋コンクリート造です。室内に梁型や柱型が出てこないため、室内をスッキリさせることができますが、壁によって建物を支えるため間取りに自由度がありません。リフォームでも間取りを変えることがほとんどできないと言ってよいでしょう。そのため見かけることが少ない構造です。

私はゼネコン時代に1度だけ壁式構造を施工したことがあるのですが、梁も柱もないのはとても奇妙な感じでした。配筋が楽になるというわけでもなく、工事の手間としてはラーメン構造とさほど変わらない気がしました。

まとめ

それぞれの材料や構造の特徴をまとめてみました。それぞれの構造の種類はどれが良いというものではなく、物件ごとに適材適所で選ばれています。これらの用語の意味をきちんと理解することで、購入時の資料を読むときやマンションの修繕の際に業者とのやりとりがスムーズになります。専門家になる必要はありませんが、基本的な言葉を覚えておくとなにかと便利だと思います。

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