暑いのでマンションの玄関ドアを開けっぱなしにしたい
私がアドバイザーとして参加しているマンションで、多くの住民からマンションの玄関ドアを開けっぱなしにしたいという声が上がっています。高齢者が多いマンションで、エアコンによる冷風よりも自然の風を好む人が多く、ホームセンターなどでドアストッパーを購入している人もいるようです。管理規約で禁止されていることから、規約を見直して夏場は玄関ドアを開けっぱなしにしたいという声が総会で多数出ました。
廊下の形状によって意見が分かれる
このマンションは複数の棟で構成されていて、棟ごとに形状が違います。そして共用廊下も外廊下のタイプと内廊下のタイプがありました。玄関ドアを開けっぱなしにしておきたいという声が挙がったのは、外廊下タイプの住民らでした。外廊下の方が風が入りやすいので、当然といえば当然でしょう。反対に内廊下タイプのマンション住民からは、風が入ってくるわけでもなく「料理の匂いなどが廊下にこもる」といった理由で反対の声が出ていました。
なぜ玄関ドアは開けっぱなしにならない?
マンションの玄関ドアにはストッパーがなく、常に開放することができないつくりになっています。これは建築基準法で定められた防火設備になっているからです。防火設備は主に建物内を区画し、延焼を防ぐことを目的としています。ですから玄関ドアは、火事になった時に延焼が広がらないように、常に閉まっている「常閉」であることが求められているのです。
この防火設備の話をすると特定防火設備がどうだとか、かつては甲種防火戸と呼ばれていたとか、色々と専門的な話になってしまうので今回は割愛します。ここで重要なのは、マンションの玄関ドアにストッパーがなく常に閉まってしまうのは、建築基準法によって決められているということです。使い勝手などとは関係なく消防上の都合なので、住民や管理組合の都合では変更できません。
管理会社は開けっぱなしにして良いとは言えない
上記のように法律で決められたことなので、管理会社にドアを開けっぱなしにしたいと言っても了承することはありません。建築基準法で定められたことを、管理会社がそれに反することはコンプライアンス的におすすめできないからです。万が一、マンション内で火災が発生し、玄関ドアから炎が回って他の部屋まで延焼した場合、開けっぱなしにしていいですよなんて管理会社が言っていたら、法的責任を問われることになりかねません。ですから管理会社は玄関ドアを開けっぱなしにすることを認めませんし、理事会に言っても賛同を得られないことがほとんどです。
時々、玄関ドアを開けておくためのドアストッパーはどのようなものが良いかを私も質問しますが、開けておくことを認めるわけにはいきませんので回答をお断りしています。これを認める人はいないと思った方が良いですし、安易に認めるような管理会社がいたら知識不足を疑った方が良いと思います。
ドアストッパーはドアを痛める?
マンションの建設工事中にドアを取り付けてしまうと、ドアが常に閉まってしまうので、工事で出入りする職人は面倒くさがってドライバーや段ボールを使ってドアを開けっぱなしにしてしまいます。それを見つけたドア屋さんが怒り出すこともあり、現場監督もドアを開けっぱなしにしないように注意しています。なぜドア屋さんが怒るかというと、ドアの調整が狂ってしまうからです。ドアストッパーでドアの開閉が止められているところに風が吹いたりして力が加わると、蝶番やドアクローザーが曲がったり調整が狂うのです。
これは工事中であれ竣工後であれ、ドアを無理に固定してしまえば調整が狂うのは変わりません。夏の暑い日にドアを開けっぱなしにしていて、強風が吹いてドアが動くと蝶番が曲がったりドアクローザーが狂ってしまうかもしれません。これらが狂うとドアが閉まりにくくなったり、自閉しなくなってしまう可能性があります。こうなると素人では修理できず、また共用部分なので理事会に連絡して業者を呼んでもらう必要が出てきます。
まとめ
夏に部屋の中に風を入れたいと考えるのは普通ですし、そのためドアを開けたいと思うのもおかしくありません。しかし建築基準法で決められたことを勝手に覆すことはできませんし、それを許可できる人もいません。特に管理会社などは、法的責任を問われたくないので認めることはないでしょう。どうしても玄関から風を入れたい場合は、換気機能付きの玄関ドアが販売されているので、マンションの修繕時に検討してはいかがでしょうか。