欠陥マンションを見抜くチェックポイントは役に立つのか?

欠陥マンションが話題になる度に、「欠陥マンションを見抜くポイント」が話題になり、週刊誌などでよく見かけます。マンションのチェックポイントを示して解説する内容がほとんどですが、これらのチェックポイントで欠陥マンションを見抜けるでしょうか。結論を言うと、どのようなチェックリストを用いても、一般の方が欠陥マンションを見抜くのは困難です。ほとんどの場合はできないと言っても良いでしょう。その理由を解説します。

欠陥マンションを見抜くチェックポイントは正しいか?

以下は某サイトに掲載されていた、欠陥マンションを見抜くチェックポイントです。対象は中古マンションのようですが、以下のようなポイントが掲載されていました。

共用部分
・コンクリートのひび割れはないか
・塗装にひびや剥がれがないか
・鉄部にサビがないか
・雨漏りの痕跡はないか
・屋上の防水にふくらみなどはないか
・外壁のタイル等の剥がれがないか

専有部分
・床や柱が傾いていないか
・窓やドア、戸の建て付けは良いか
・床の浮き沈みや軋みはないか
・振動はないか
・内装のクロスなどにしわや亀裂がないか
・天井、壁に雨漏りの跡がないか
・水まわりの配管から臭いがしないか、水の流れはスムーズか

一見すると重要なチェックポイントのようですが、これらの内容をチェックしても欠陥マンションかどうかは判りませんし、むしろ不安を煽るだけになってしまう可能性もあります。そこでそれぞれの項目をチェックしていきたいと思います。

コンクリートはひび割れを起こす

コンクリートには必ずどこかにひび割れが入ります。 セメント に砂、砂利と水を混ぜて生コン作り、型枠に流し込んで乾燥させるのがコンクリートです。水を含んで乾かすという工程を経る以上、生コンの時と乾いたコンクリートでは体積が変わり、この乾燥の過程でひび割れが発生するのです。そのためほとんどのコンクリートでは、ひび割れが発生します。

※窓の角から出ているひび割れ

また耐震構造には、地震の際に構造体を守るために雑壁と呼ばれる壊れる壁を設けています。そのため地震発生時にひび割れが入るのは当然のことなのですが、わずかな地震でひびが入ったから欠陥の証拠のように扱われることがあります。これは鉄筋コンクリートの耐震構造が持つ性能を無視した意見です。

コンクリートのひび割れは、どの部分にどのような入り方をしているかで、乾燥が原因の軽微なものから施工ミスによる重大なものまでを見分けます。これには構造やコンクリートの専門的な知識が必要で、それらの知識がない人には欠陥かどうかを見抜くのは困難です。コンクリートのひび割れについては難しい話になるので、別の機会に詳しく書きたいと思います。ここではコンクリートにひび割れがあるからと言って、それが欠陥とは限らないことを覚えて頂きたいと思います。

経年劣化でタイルは剥がれる

タイルは経年劣化で剥がれます。タイルの剥落で問題になるのは、全体の何パーセントが何年で浮いているかです。20年経ってもタイルの浮きが全くないということは、まずありません。築10年のマンションで全体の1%のタイルの浮きが見つかっても、欠陥と断定することはまずありません。しかし30%の浮きが見つかると施工不良の可能性がかなり高くなります。

※マンションの剥がれたタイル

中古マンションを購入する際に、タイルが剥がれていないかを見るのは有効なチェック方法ですが、上の写真のように大量に剥がれているならともかく、1枚や2枚が剥がれているからといって欠陥と決めつけるのは危険です。

下図のようにタイル張りはコンクリート躯体の上に下地調整モルタル、張り付けモルタル、タイルが張られています。外気により熱せられたり冷やされた時の膨張や収縮する幅や動きは、それぞれの部材で異なります。そのため新築の時には密着していたコンクリートとモルタル、モルタルとタイルが年月と共に剥離していきます。経年劣化は避けられない問題です。

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共用部の経年劣化とメンテナンス

塗装のひび割れや鉄部のサビなどは、経年劣化によってどのマンションに起こる事象です。これらは欠陥かどうかを見抜くというより、普段のメンテナンスが行われているかを判断する材料です。鉄を使えばサビますし、塗装は必ず剥がれてきます。新築時からサビていたり塗装が割れたり剥がれたりしていれば問題ですが、アフターサービス期間が設けられているので補修してもらえば済むことです。

※鉄部のサビ

一方でこれらのチェックが、全く無意味というわけではありません。中古マンションを選ぶ際に、これらのメンテナンスが行われていないマンションは、修繕積立金が不足しているか住人の関心が薄い証拠なので、購入の検討材料になるでしょう。

床は傾く

一時期、床の傾きが欠陥マンションの証拠だとして、床にビー玉を置いて転がるかを確認することが推奨されていました。これで何がわかるかと言うと、正直言って何もわからないのです。特に二重床の場合、家具を置いただけで床が傾きます。遮音性能が高くなればなるほど、二重床のゴムの足は柔らかい素材が使われていることが多く、そういうゴムの足は人が乗っただけで沈み込みます。ビー玉を置いてビー玉が転がってきても、自分の重みで床が沈んでいることが多々あります。

※置き床の足の黒いゴムが沈む

ましてや家具を置くと、家具の重みで床が沈み込みます。何年も同じ場所に家具を起き続けると沈み込みのクセがついてしまうことがあり、家具を撤去した後でもフローリングは沈んだままになっています。やがて沈みは自然に改善されますが、製品によって数日から1週間以上かかることもあります。当然ながらビー玉は転がりますが、何ら問題はありません。

フローリングのリフォーム工事では既存のフローリングを剥がさずに、フローリングの上にフローリングを張ることがあります。その方法だと二重床に加わる過重が普段の2倍になってしまうので、これも床の沈み込みの原因になります。このように床にビー玉を置いて転がったとしても、床に問題があるのか二重床が正常な機能を果たしているのか判断がつかないのです。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)には、床の傾きの基準が書かれているという反論もあるかもしれませんが、それはコンクリートの床(スラブ)の傾きです。品確法にはフローリングの傾きの基準はありませんし、フローリングが傾いているからといって、それが欠陥かどうかは全くわからないのです。

経年劣化でクロスは剥がれる

ここに書かれている「内装のクロスなどにしわや亀裂がないか」というチェック項目は、建物が傾くとクロスにシワや亀裂が出るので、それをチェックするためだと思われます。しかしクロスは何年も経てば剥がれてきますし、部屋の使い方によってシワも入ります。例えばマンションの室内でストーブを使い、ヤカンを乗せて蒸気を出し続けていると、クロスはシワシワになりますし、あちこちが剥がれてきます。

※ドア周辺のクロスは経年劣化で割れやすいです。

最近は加湿器を使う方も多いですが、過剰な使い方をするとクロスにシワが入るようになります。クロスは普通に使っていても経年劣化で剥がれてきます。梅雨時期の高い湿度と冬の乾燥を繰り返すと、シワも入りますし破れたりします。建物が傾いてクロスに入るシワと経年劣化で入るシワを見分けるのは困難で、クロスを見てもマンションの欠陥を見分けるのはほとんど不可能だと思います。

水回りの異臭はありがち

これは割と知られたことですが、配水管から悪臭が出ないようにトラップがあり、その中に溜まっている水(封水)によって悪臭が室内に出るのを遮断しています。水回りは定期的に使っていないと、封水が乾燥してなくなってしまい、部屋の中に悪臭が出てくることがあります。そのため誰も住んでいない中古マンションを見に行って、水回りに悪臭がするからといってマンションに問題があるかはわかりません。

もちろん配水管が破断して悪臭がしているケースもありますし、雨水が室内に侵入して木材などを腐らせているケースもあります。悪臭は何かが起こっているシグナルですが、悪臭がするからといって欠陥とはわからないのです。

欠陥マンションを見抜くポイントは?

欠陥マンションかどうかを見抜くには、複数の調査が必要です。もちろん一見して欠陥があるとわかる場合もありますが、専門的な知識を用いて複数の検査や検証が必要になる場合がほとんどです。建築知識がない人が簡単に欠陥を見抜くチェック方法はないと言ってよいでしょう。

ここに書かれていたチェックポイントは、経年劣化とメンテナンス状況をチェックするための項目で、このチェックポイント全てにチェックがついたとしても欠陥マンションかどうかは全くわかりません。欠陥があるかどうかは専門家の検証が必要で、専門家にとっても簡単に結論を出せないケースが多々あります。不安がある場合は、専門家に調査を依頼するなどして判断を仰ぎましょう。欠陥マンションに関して不安に思う方は、以下のメールフォームからご連絡ください。ご相談に応じます。

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