こんなタワーマンションは買っちゃダメ! /4つのポイントを紹介
タワーマンションに関する質問を多く受けるようになりました。人気と批判の両方が混じっているので、気になる方が多いのだと思います。そこでタワーマンションを購入しようとしている方に向けて、買ってはダメなタワーマンションの話をしたいと思います。お断りしておきますが、ここで書くのはあくまでデメリットであり、それを上回る魅力があるから購入するという人を批判するものではありません。
①オーバーハングは維持費が高い
オーバーハングとは、下階よりも上階がせり出しているデザインを言います。本来は登山用語で、岩壁の面が垂直を超えて庇のようにせり出している部分のことです。下の写真のように、タワーマンションでは屋上のオブジェがオーバーハングしている物件をしばしば見かけます。
タワーマンションは高さが60mを超える物件が多いので、足場を組むのが難しいことがほとんどです。そこで外壁工事の際には、ゴンドラを吊して外壁の補修を行うことが多いと思います。下図のように屋上からゴンドラを吊し、外壁のシーリングや塗装の塗り直し、ひび割れの補修などを行います。
しかしオーバーハングしていると、ゴンドラが吊せないのです。正確に書くと吊せるのですが、壁との距離が空きすぎて作業ができません。
こうなると外壁工事では移動式足場などを使うことになり、ゴンドラよりもはるかに費用も工期もかかることになります。オーバーハングはどうしても必要なものではなく、見た目をよくするために採用される意匠です。そのデザインのために、維持費が大幅に上がってしまうのです。
②最上階に巨大な窓ガラスがある
タワーマンションの最上階に眺望を楽しめる共有スペースを設け、その窓が巨大なガラスになっていることがあります。ガラスですから割れることも予想されます。もちろん割れにくい高強度なガラスが使われていますが、絶対に割れないということはありません。もし割れたりひびが入った時に、エレベーターで運べないサイズのガラスをどうやって運ぶのでしょうか。
多くの場合、屋上に設置したクレーンで吊ることになります。最初から屋上に揚重機が設置されている場合もありますが、ない場合は屋上にクレーンを運ぶことから始めます。マンションの近くまでトラックが入れない場合はブームが長い大きなクレーンが必要になり、道路にトラックを駐めてクレーンで吊る場合は警察の道路使用許可が必要になります。このように窓ガラスを交換するだけで、大工事になりそうなタワーマンションをちょくちょく見かけます。
最上階の大判ガラスはタワーマンションに限らず、中低層のマンションでも一時期は多く見られました。エレベーターで運べないような大判のガラスは、交換の際には多くの時間と費用が必要になります。
③バルコニーがないfix窓がある
眺望を楽しむためにバルコニーを設けず、大きな窓が設置されたタワーマンションを見かけます。またキッチンや洗面所の小窓がある面に、バルコニーがないタイプのタワーマンションを見かけることもあります。
バルコニーがなく大きな fix窓 を設けると、開放的で見栄えも格好良くなります。しかしタワーマンションで雨漏りが発生するのはサッシ廻りが最も多いのです。バルコニーがあれば、脚立があればサッシ廻りの作業ができます。しかしバルコニーがないと、雨漏りの調査や改修にゴンドラやブランコをつかって作業をしなくてはなりません。バルコニーがあるマンションに比べて、作業の手間も費用も高額になります。
また小窓の場合、ガラスが汚れてもバルコニーがないと外側が拭きにくいというのがあります。四方をバルコニーで囲まれたマンションはデザイン的に野暮ったいという人もいますが、バルコニーがあるのとないのとでは維持費が大きく変わってくるのです。
しかしオフィスビルにはバルコニーがなく、大きなfix窓になっていることがほとんどです。だから大丈夫と考える人もいるかもしれません。オフィスビルは賃貸に出す際に床面積によって賃料が変わってきます。そのため少しでも広くして賃料を高くとっておけば、修理の費用が高額になっても利益が出ると判断しているからです。分譲マンションは利益を生むわけではないので、修繕費が高いと維持費の高騰を招くだけになります。
④屋上庭園がある
これはタワーマンションに限ったことではありませんが、屋上庭園は維持費が高額になります。ただでさえ維持管理費が高額になるタワーマンションでは、さらなるコストアップになります。
屋上庭園を造るには、防水層の上に保護コンクリートを敷いて、耐根シートを敷き、その上に土を入れて植栽を植えます。植栽には散水装置が必要ですし、根腐れしないために余分な水を排水するための設備も必要です。
本来、防水層の上にはなにも設置しないのが理想です。漏水が発生した際に、調査と補修がしやすいからです。しかし屋上庭園はその理想とは真逆で、押さえコンクリートで保護した上に、土や植栽で覆うようになってしまいます。そのため屋上からの漏水が発生すると調査が難しくなりやすく、止水工事をするためにはこれら植栽や土を撤去しなくてはなりません。
大規模修繕の際には屋上の防水を全面的に改修するため、これらの土や植栽を全てどこかに持って行かないとなりません。そのため何もない屋上に比べて維持費が高額になってしまいます。屋上庭園は2000年代の最初の頃に流行り、その後廃れていました。しかし近年になって再びラグジュアリーな空間として人気が出だしています。屋上を有意義に使い街に緑を増やすという意味では有効ですが、維持費が高額だという点が見落とされがちです。
まとめ
建築面から見て、維持費の高騰に繋がるものを4つ紹介しました。これらのうち複数が合致する物件がいくつもあります。タイトルに買っちゃダメと書きましたが、もちろん購入は個人の自由ですし批判されるものでもありません。しかしこれらはただでさえ高額になりがちなタワーマンションの維持費を、さらに高額にします。それを知って購入するのとしないのでは大きく違うと思うので、購入の際にはこの点を頭の隅に置いておいてください。