管理組合がないマンションってなんだ? /区分所有法を読んでみる
時々、管理組合が存在しないマンションの話を聞きます。私も築40年を超えるマンションにお邪魔した際に「昨年、管理組合と理事会を結成しました」と、理事の方に言われたことがあります。管理組合がないマンションっていうのはどういうものか、そして管理組合がないとどうなるのかを解説したいと思います。
マンション管理組合とはなにか
マンションの区分所有者(マンションを買った人)が、建物や附属施設、敷地などの管理を行うために構成する団体です。区分所有法第三条には、以下のように書かれています。
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
この「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」というのが、管理組合になります。
管理組合を設立しなくても良いか
以前の区分所有法では、管理組合は区分所有者が自らの意思で設立するものとされていました。そのため管理組合の設立に参加しない区分所有者がいたり、勝手に脱退する人が出てきたりしました。管理組合に参加しない人が総会の決議を守らなかったりする場合、管理組合には何ら強制力がなく多くの問題を起こしていました。ゴミの出し方を決めても「俺はそんなの知らん」と勝手気ままに出す人がいても、それを止めることが誰にもできなかったのです。言うなれば大きな声の人が俺様ルールで住んでいたわけです。
そこで昭和58年に区分所有法が大きく改訂され、第三条の「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」という言葉が盛り込まれることになりました。これにより区分所有者は管理組合を結成して自主的な管理運営を行うようにしたのです。そのため管理組合は設立するかしないかではなく、マンションを買ったら管理組合員になり、管理組合の運営に参加しなくてはならなくなりました。
管理組合がないマンションというのは?
上記のようにマンションを買うと管理組合員になり、管理組合の設立に参加することになります。しかし実態として管理組合が全く機能していないマンションが存在するのです。
①管理者が有名無実
区分所有法の管理者とは、管理組合の代表者のことです。ほとんどのマンションでは、理事会の理事長になります。書類上は管理者がいるのですが、管理会社が名前を借りているだけで、本人も書類に必要らしいから名前を貸しているという意識しかありません。
当然、理事会もなく総会も開かれません。本来は総会で決定するべき事項を管理会社が決定し、区分所有者に通知するだけになっています。この手のマンションでは管理費も当初から安いままに設定されているため、管理会社は理事会を立ち上げて面倒なことを増やすよりも、管理会社が決めた事を一方的に通知するだけの方が安上がりだと考えています。
②管理会社が管理者になっている
上記と似ていますが、管理会社が管理者になっているケースです。これは管理者管理方式と言って、区分所有者ではない第三者を管理者に選任することが可能なので、分譲時から管理会社が管理者になっているのです。本来の管理者管理方式は、管理者が外部の人になるだけで総会などは行われます。しかし総会を開くこともなく、総会で決めるべき事を管理会社が勝手に決めて、一方的に区分所有者に伝えるだけになっています。
最初に書いた、築40年以上なのに昨年になってようやく理事会を立ち上げたマンションは、元々このパターンでした。理事会を立ち上げると、管理会社は管理委託契約の更新を行わなかったので、管理会社がいない状態になっていました。
③管理会社に委託していない
管理会社が存在せず、理事会もなく、当然ながら総会も開かれません。管理費や修繕積立金を集めることもななく、無秩序のままになっています。このようなマンションにお伺いしたことはないのですが、某管理会社の人からこのようなマンションがあり、管理委託の依頼が来たけど断ったという話を聞いたことがあります。
長年に渡って何も管理をしていないマンションでは、建物のあちこちが痛んでいるので多額の費用がかかる可能性が高いのに対し、これまで払っていなかった管理費などを毎月集めることに反発する人が出て来る可能性が高いと言っていました。そのため引き受ける管理会社は少ないそうです。
管理組合が機能しないとどうなるか
修繕積立金を集めていないマンションが、老朽化で雨漏れが起こったりタイルが剥がれたりすると修繕の費用がありません。誰かが全員に説明して一時金を捻出しなくてはならなくなります。管理会社がいれば、それらの業務をやってくれるでしょう。しかし管理会社がいなければ放置される可能性が高く、住民の流出が始まります。マンションが廃墟に向かうのです。
管理会社が一時金を集めようとしても、全世帯から必要な金額を集めるのは困難です。全世帯に連絡をつけるのも大変ですし、世帯当たり数十万円にもなれば払えない世帯も出てきます。修繕が必要であっても放置されることもあり、住民が離れていくことにつながります。こうなると売却も難しくなり、空き家が増加していきます。管理組合が機能せず老朽化すると、廃墟に向かっていきます。滋賀県で行政執行により解体されたマンションも、このような状況だったと思われます。
関連記事
・廃墟化した滋賀県のマンションが解体へ
管理組合を機能させるにはどうする?
管理組合を機能させるには、規約を定めて理事会を結成し、総会で様々な事を決めていかねばなりません。管理者が管理会社の場合は、管理会社に総会を召集してもらうことになります。しかし管理会社が協力しない場合や、名前だけの管理者が協力しない場合などは誰かが区分所有者の総会招集権を使って総会を開くしかありません。
総会招集権を使うには区分所有者の1/5の賛成が必要になります。1件1件訪問して賛同を得るしかないのですが、区分所有者が住んでおらず賃借人しかいない場合は、連絡先を調べて連絡するしかありません。登記簿を取り寄せるなどの費用も発生してしまいます。1/5の賛同を集めたら規約を作り、総会の開催を連絡して出欠の確認と欠席者の委任状集めなどの作業が必要です。こうしてなんとか総会を開き、3/4の賛同を得ることができて規約が成立します。
規約は管理組合の憲法とも言えるルールブックで、これを定めるだけでも大変な労力になります。さらにここから理事を募って理事会を設立するのは、さらに労力が必要です。管理組合が機能していないマンションで機能させるようにするには、誰かが膨大な労力を使って動くしかありません。外部のコンサルタントを雇ってこれらの業務を代行してもらうことも可能ですが、その費用は個人負担になってしまうかもしれません。機能していない管理組合を起動させるのは、至難の業なのです。
管理組合がないマンションに住んでいたら
上記のようにとんでもない労力が必要になるので、仕事をしている人が一人で行うのは難しいでしょう。マンション内の親しい人に協力を仰ぎ、仲間を増やして共同で作業するしかないと思います。しかし管理組合がない状態で長年過ごしてきた人達が、簡単に動き出すとも思ません。そのため他の住民に協力を要請し、誰も動かないようであれば売れるうちに売却をお勧めします。
時間と共にマンションの価値はどんどん下がっていきます。漏水などを起こして修繕できないような事態に陥れば、その価値は急落します。今売っても損をすると躊躇するかもしれませんが、放っておけばもっと損をする可能性が高くなります。管理ができないマンションは、資産価値の目減りも早くなります。売るに売れない事態に陥る前に、逃げ出す方がダメージが少なくて済むと思うのです。
まとめ
管理組合がないマンションってなんだ?ということで書いてきましたが、管理組合は存在するものの機能していないマンションを指しています。管理組合は区分所有者がマンションを維持管理するための団体で、区分所有者全員が参加します。これが機能しているかしていないかでマンションの将来が大きく変わってくるので、理事が回ってきても嫌がらずに参加することが自分の資産を守る第一歩です。仕事で忙しいという場合もあるとは思いますが、可能な限り参加しましょう。