マンションの基礎知識07 /契約関係を整理します
マンションを購入してトラブルになったとき、契約関係を把握しておかないと問題解決が難しくなることがあります。トラブルを解決するには、誰と交渉するかが重要だからです。契約関係が分かっていれば、誰と話せが良いかが見えてきます。そこで今回は、マンションにまつわる契約関係を整理してみたいと思います。
マンションを購入する時の契約
マンションの売主とマンション住民が結んだのが、売買契約になります。住民は売主からマンションを買ったのですから、売買契約を結んでいます。ここで重要なのは、販売している不動産屋と売主が同じではない場合があるということです。下の画像は、ネット広告に出てきた都内のあるマンションの物件概要です。これを見ると売主は大和ハウス工業で、販売会社は三井不動産レジデンシャルだと分かります。三井不動産の社員が接客して販売しているのですが、売主は大和ハウス工業になります。
売買契約を結ぶのは大和ハウス工業になるので、契約書にも大和ハウス工業の名前が売主として記載されているはずです。販売会社と売主は混同しやすいので、契約書を見て誰が売主かを知っておく必要があります。また売主は必ずしも不動産会社とは限りません。不動産会社以外の企業が、持っている土地にマンションを建設して販売することもあるので、不動産とは全く関係ない企業が売主になっていることもあります。そのため売主が製薬会社だったりテレビ局だったり鉄道会社だったりすることもありますが、不動産会社でなくても売主なのです。
マンションで施工不良などが見つかると「 瑕疵 担保期間は10年」という話を聞くことがあると思いますが、こレは売主が責任を持つことになります。つまり施工不良が見つかった場合、補修工事を行うのは売主なので、売主を相手に交渉しなくてはなりません。販売会社に瑕疵担保期間があるから補修をするように交渉しても、彼らにはなんら義務がないのです。売主を相手に話をしない限り、いつまで経っても何も変わりません。
ゼネコンに工事を依頼する時の契約
マンションを建設する際に、売主と建設会社( ゼネコン )が結ぶ契約が工事請負契約です。民法では契約書の定めは特にありませんが、建設工事では建設業法に定められた内容を網羅しないといけません。
工事が始まると売主の意向や意見が強く反映されることが多く、ゼネコンから反論することが難しくなることが多いため、請負契約は「請け負け契約」や「請けたら負けだから請負契約」などと揶揄されることもあります。
設計事務所との契約
マンションの設計図を描いてもらうために、売主と設計事務所が結ぶのが設計業務委託契約です。マンション建設は設計図がないと始まりません。そのためマンション事業の中では、比較的早い段階で結ばれる契約です。事業者は設計事務所にどの土地にどういうマンションを建てたいかを話し、設計を依頼します。またその時にいつまでに設計図が必要かという工期、設計料などを提示して契約します。
工事が始まると、工事が正しく行われているか監理者を設置して監理する必要があります。そのため結ぶのが監理業務委託契約です。設計委託契約と監理業務委託契約は、必ずしも同じ設計事務所と結ぶわけではなりません。しかし一般的には、設計図を描いた設計事務所に管理もお願いすることが多いと思います。
管理会社との契約
マンション管理組合と管理会社は管理委託契約を結んでいます。マンションの共用部分の管理を管理会社にやってもらうための契約で、管理会社が入っているマンションには必ずこの契約書があります。以前にも書きましたが、管理会社が業務を行うのはこの契約書の範囲内になります。なんでもかんでも管理人や管理会社のフロントに連絡すれば、動いてくれるというわけではありません。
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全部の契約の一覧
これらの契約をまとめると、以下の図のようになります。売主の不動産会社だけでなく、設計事務所やゼネコンがどのように自分たちと関わっているかを把握しておきましょう。マンションでトラブルが発生した際に、誰と交渉するべきかわからなくなることがありません。
以前にも書きましたが、施工不良が発覚してゼネコンを責めても契約関係がないので、歯切れの悪い返事しか返ってこないことになりかねません。ゼネコンは契約相手の不動産会社の承諾を得ないと、勝手に住民と話すのも嫌がるのです。こうした問題が起こりかねないので、この契約関係を知っておくことは重要になると思います。
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まとめ
このような契約関係を知っておくと、マンションでトラブルが発生した場合に交渉がスムーズになります。先に書いたように売主の瑕疵を追求するのに販売会社と話しても時間を無駄にするだけですし、施工会社と話をしても全く事態は進展しません。また工事に不法行為があった場合、それを追求する相手は施工会社になります。中にはなんでもかんでも管理会社に依頼する管理組合もありますが、管理会社が適切な対応をしているかを知るには契約体系を知っておくことが重要になります。これを機会に、自分が住んでいるマンションの契約を整理しておくと良いと思います。