管理会社依存性で重体になる前に /管理組合と管理会社との関係を考え直す

多くのマンションにとって、管理会社抜きでのマンション管理は考えられないと思います。特に管理組合の理事になると、管理会社抜きで理事会の運営など考えられないかもしれません。しかし現在のマンションの多くは管理会社に依存しすぎていて、管理会社依存症とも言える状態になっています。そこで今回は管理会社依存性で重体になる前に何ができるのかを考えてみたいと思います。

管理戸数主義の弊害

長らくマンション管理会社にとって、会社の規模や信用度を測る指標は管理戸数でした。経済誌も管理戸数ランキングを発表し、信頼できる管理会社を見極める指標の一つにしていました。特にマンション管理新聞に掲載されるランクは業界内の注目を集め、このランキングに一喜一憂する会社は多くあったのです。多くの戸数を管理しているということは多くの管理費が集まるということで、経営が安定していて住民からの信頼も厚いと思われたのです。

そのため管理に不満がたまり管理会社を変えたいと管理組合が言い出したら、値引きするなどして逃さないようにしてきました。特に大型物件は街のランドマークにもなるので、そういう物件を逃すのは会社としてダメージが大きく、大幅な管理費の値引きをすることもあったようです。

また不満が出ないようにするため、管理会社は契約にない仕事も受けていました。例えば住戸間の騒音問題など、管理委託契約所に書いていなくても住民の不満があれば、可能な限り対応してきました。しかし大手管理会社のフロントは10件から20件の物件を抱えているので、雑務に忙殺されることになります。そのため対応が遅くなり、不満が溜まって管理費を値引きするという悪循環がありました。

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修繕工事は利益が大きい

管理費の値引きを行っても管理会社が引き止めておきたいのは、修繕工事などの利益率が高いからです。特に億単位のお金を使う大規模修繕工事は、大きな利益を生みます。管理物件には優先的に大規模修繕工事の案内ができるので、管理費を多少値引いても管理を続ける方が利益になったのです。

中には安い管理費をうたって仕事を受け、法外に高い修繕費で利益をあげる管理会社もいます。理事会のメンバーは建設業界や建築に詳しいわけではないので、自動ドアの修理が5万円なのか30万円なのか判断できないからです。こうして修繕は大きな利益を生むため、管理費が安くても管理会社は利益を出すことが可能でした。

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なんでも管理会社任せに

こうして管理会社は管理を続けるために、あらゆることを引き受けて住民の不満を和らげてきました。管理費の滞納、騒音問題、ゴミ出しを守らない人への警告、雨漏り、共用部の汚れ、バルコニーの土埃などなど、本来はどこまでが管理会社の業務なのか気にすることなく住民は管理会社に連絡し、管理会社は「それは弊社の業務ではありません」と断ることなくなんでも引き受けていました。多くの住民は「管理費を払っているのだから当たり前」と思い、困ったことがあれば管理会社に苦情を言うのが当然になっていました。

何でも管理会社任せにして管理会社に頼り切ったマンション管理は、管理会社の提案は何でも聞くという理事会のスタンスにも繋がりました。「近年は台風被害が多いので、こういう補強工事をしておきましょう」「築10年を過ぎたので、コンクリートの中性化を調べておく必要があります」などと管理会社に言われると、本当に必要なのかわからないまま理事会は総会にかけて決議をとります。総会の出席率が悪く、ほとんどが委任状を出しているマンションでは議論もないままに決定することが多く、管理組合の財布からお金がどんどん出て行くことになるのです。このような管理組合は管理会社依存性で重体の状態と言えます。

舵を切った管理会社

これまで何でも屋のように振る舞っていた管理会社は、管理戸数主義から軌道修正するようになりました。安すぎる管理費のマンションには管理費の値上げを要求し、断られると契約の更新をしないようになったのです。業務内容を契約内容だけに絞るようになり、何でも屋から管理会社本来の仕事にシフトしてきたのです。そのためこれまでのように、なんでもかんでも管理会社にお願いすると「弊社の業務ではありません」と、ドライな返事をされることも増えました。

この背景には人件費の高騰があります。管理人を希望する人が不足し、これまでのような安い給料では雇えなくなりました。これまではマンションの近所に住む、定年退職を迎えた人を管理人に雇用していました。しかし定年を延長する企業が増えたことが影響し、これまでのような安い給料では人材が集まらなくなってきているのです。

修繕積立金不足は誰の責任?

管理会社に依存したマンション管理を当然のように行ってきた管理組合は、管理会社の態度の変化に戸惑います。管理会社に頼りっきりだったので、自分達で行動しなくてはならなくなるからです。そしてさまざまな責任問題が表面化していきます。

管理費の滞納が起こっていたら、それは管理会社の責任だと言う人は多くいます。しかし多くのマンションがそのまま使っているマンション標準管理規約を読むと、督促をするまでが仕事になっています。督促をしても払わない場合は管理会社の責任ではなくなり、その後は管理組合が督促をすると書かれています(第十条)。つまり滞納が放置されていると、それは管理組合の責任なのです。

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また修繕積立金の不足も管理会社の責任だと言う人が多くいます。しかし修繕積立金を使うのは誰でしょうか。管理組合がお金を出して貯めていき、管理組合が使うのです。修繕積立金の額は管理組合が自由に決めることができ、いつでも変更できます。物価や人件費が上がれば足りなくなるのは当然で、必要に応じて値段の変更を行う必要があります。管理組合で決めて管理組合が貯めて管理組合が使うお金ですから、その責任は管理組にあるのです。

最初に決められた額を納め続けていたのに、足りなくなるのは管理会社が悪いと言う人もいますが、確かに管理会社から何もアドバイスがなければ不親切と言えるでしょう。しかし足りなくなったからと言って、管理会社が不足分を補填することはありません。文句を言うことはできても、責任は管理組合に返ってきます。マンション管理の責任は、最終的に管理組合に返ってくるのです。

管理会社を上手く利用する

管理会社は任せっきりにするものではなく、上手く利用するものです。本来は住民だけでマンション管理をやっても良いのですが、住民には仕事や家庭があり管理組合のことばかりに専念できません。そこで手間がかかることは、管理会社にやってもらうようにしたり、専門的な判断が必要な時に管理会社の知識を借りるのです。そのためには管理会社との契約書を再度確認しましょう。マンション管理委託契約書というのが理事会に保管されているはずなので、それを確認すると良いでしょう。その上で、自分達で行うには困難な部分を管理会社にやってもらうようにしましょう。

まとめ

これまで管理会社は何でも屋のように振る舞い、マンション住民の不満を解消するためになんでもやってきました。そんな管理会社も態度を改め、契約内容を確実に実行することに注力するようになってきました。しかしこれまで何でも管理会社任せにしていたため、これからも何でも管理会社がやってくれるという認識の人がまだまだ多くいます。そして何か問題があると、全て管理会社の責任だと思い込む人も多くいます。しかしそのマンションは誰のものなのか?というのを改めて考えてみましょう。

契約に書いていないことで、管理会社が責任をとるはずがありません。将来的に修繕積立金が不足しても、管理会社が補填することはあり得ないのです。どれだけ管理会社に文句を言ったところで何も変わりません。管理会社との契約書を読み返し、管理会社が責任を持って行うことと自分達が責任を持つべきことを整理しましょう。そして自分達の資産を守るのは、自分達だということを忘れないようにしてください。

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