世界各地で起こっているマンション倒壊事故 /日本は大丈夫なのか

ここ数年、マンション倒壊のニュースが世界中から届いています。そのため日本のマンションを心配する人もいるようで、たびたびメールで相談を受けます。今回は世界各地で起こっているマンション倒壊事故の紹介と、果たして日本は大丈夫なのかを見ていきます。

中国

①湖南省チン州市の倒壊事故

2021年6月29日、中国の湖南省チン州市の7階建のマンションが、突然崩れ落ちました。マンション内にいた12人が事故に巻き込まれて、5人の死亡が確認されています。このマンションは築3年だそうですが、住民が自ら建 建設したという報道もありました。それが本当なら安全性に大きな疑問が残ります。

日本にも沢田マンションという建築の専門外の人の手作りマンションがありますが、建築の知識がない人が建設したなら何が起こっても不思議ではありません。これが本当なら倒壊もなんら不思議ではないことになります。このマンションの崩落原因は調査中ということです。

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②広東省深圳市の倒壊事故

2019年8月28日、広東省深圳市で6階建てのマンションが突然倒壊しました。倒壊前にマンション内部では不穏な異音が出ていたため、住人は危険を感じてマンションの外に出ていました。そのため大きな事故の割に死者がいませんでした。このマンションは独身者向けで、総戸数148戸ですが、約800人が住んでいたそうです。そのため一歩間違えれば大惨事になっていました。

この倒壊事故の続報が見当たらなかったため原因はわかりませんが、倒壊した当時から杭が腐食していたとか、「おから建築」と噂されていました。おから建築とは中国で使われている言葉で、まるで豆腐やおからを使って建設したように脆い建物のことで、多くの場合はずさんな施工管理や手抜き工事を指して使われます。深圳市は住宅ブームが起きていて、マンションの建設ラッシュが続いています。そのため施工不良も話題になることが多く、おから建築はたびたび話題になっています。

倒壊ではないですが、深圳市では2021年5月28日に75階建ての商業ビルが地震も風もないのに大きく揺れ出し、買い物中の客などが避難する騒ぎがありました。原因調査の結果はネット上で見つけることはできませんでしたが、竣工時に屋上のアンテナが激しく揺れて急遽切断されたことや、図面の改定が重なり安定した施工ができなかったことなどが言われています。

韓国

①忠清南道牙山市の傾きマンション

2014年5月11日、建設中の7階建てのマンションが突如30度近く傾く事件がありました。幸い死者などは出ませんでしたが、これほど建物が大きく傾く事故に多くの注目が集まりました。傾きの原因は施工不良で、必要な鋼管杭が69本のところが59本しかなく、1mの基礎が60cmしかないなどの施工不良が見つかりました。工事の現場責任者は行方をくらましたと報じられていましたが、その後どうなったかはわかりません。

②光州市のビル崩壊

2021年6月9日、解体中のビルが倒壊して停車していたバスを押し潰しました。バスに乗っていた9人が死亡し、8人が負傷しています。原因としては、なぜか低層階から解体をはじめたことが挙げられていますが、最終的な原因を報じた記事を見つけることができませんでした。

アメリカ

2021年6月24日、フロリダ州マイアミで12階建てのマンションの一部が突然崩壊しました。7月1日時点で死者は18名で145人の安否が不明となっています。

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瓦礫を撤去している最中なので、事故原因究明の段階ではなく原因はわかっていません。ただ2018年の構造コンサルタントの報告には、地下駐車場やプールに多数のひび割れなどが指摘されていて、それが原因ではないかと言われています。

相次ぐ倒壊の原因

話題になった事件・事故を上記に紹介しましたが、日本のメディアでは事故が起こった当初は大々的に報じられるものの、その後の調査や裁判などが報じられることは少ないので原因がわからないものが多くあります。ただ原因はそれぞれであり、世界中でコンクリートの高層建築物が危険になっているというわけではありません。そして倒壊の原因にはお国柄というのもあります。

日本でマンションが倒壊する原因としては、地震が挙げられます。世界的に見ても地震の多発地域ですので、当然と言えるでしょう。そのため日本ではマンションなど建築物を建てる際の建築確認申請には、厳格な審査が行われてきました。しかしそうでもない国もあります。建築確認申請が通るか否かは役人とのコネが重要であったり、賄賂の額で決まる国もあります。そういった国では厳格な審査がないためデタラメなマンションが建設されることもあります。

また中国の「おから建築」に代表される手抜き工事も、国によっては大きな問題になっています。日本でも手抜き工事が話題になることがあり、先日も東京の武蔵小金井のタワーマンションで手抜き工事があったと報じられました。

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しかし日本では考えられないような手抜き工事が発覚することがあります。1995年6月に韓国のソウルにあった三豊百貨店(さんぷんひゃっかてん)が、突如崩壊しました。調査によって倒壊の原因としては、配合比率がデタラメなコンクリートが使われていたことや、鉄筋が入れられていないなどの手抜きがわかっています。この事故は韓国にも衝撃が走り、政府が既存の鉄筋コンクリート建物の検査を行うと多くの欠陥が見つかっています。

日本は大丈夫か

日本でもたびたび手抜き工事などが発覚しますが、建物が倒壊するような悪質な手抜きが見つかることは稀です。特に躯体(鉄筋コンクリートでできた部分)の手抜きは珍しく、日本で起こった最も悪質な事件は姉歯建築士の構造計算書偽装問題だと思いますが、実際に倒壊したマンションはありません。

日本は地震が起こるたびに建築基準法が改正され、耐震基準が強化されていきました。そのため耐震基準は強固なものになっていき、検査も厳格化されていきました。そのため躯体に対する大掛かりな手抜きは起こりにくくなっています。日本で突如建物が倒壊するような事故は考えにくく、実際に起こっていません。

まとめ

世界各地でマンションやビルの倒壊、崩落事故が起こっています。それを見て日本のマンションも不安になるかもしれませんが、各国での事故の原因はさまざまで、それが日本にも当てはまるとは言えません。海外では手抜き工事が問題になることがありますが、日本の手抜きとは比較にならないほど大胆な手抜き工事が海外にはあり、同列で語ることはできません。何より日本は地震の被害を何度も受けていて、その度に建築基準法が改正されています。そのため倒壊しにくい設計になっていますし、施工も海外に比べると慎重に行われています。海外で起こった事故が、日本でもすぐに起きるとは考えにくいので過剰な心配は無用だと思います。

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