あなたのマンションにいる「雪だるま」と「ミッキーマウス」
マンションをリフォームする際に、壁材を剥がすことがあるでしょう。コンクリートの地肌が露出した時に、「雪だるま」や「ミッキーマウス」が現れるかもしれません。「雪だるま」は大規模マンションだったらいくつかあるでしょう。完全になくすことは難しいと思います。しかし「ミッキーマウス」は許せません。これは施工業者にとって恥ずかしいことですし、構造的に大丈夫か心配になります。これは私が デベロッパー の品質管理室にいた時に話です。
「スリーブ入れ」という仕事
マンションを工事するときに、スリーブ入れという工事があります。設備屋さんが行うのですが、型枠大工が型枠を建てる際に筒状ののボイド管という紙でできた管を入れる仕事です。他にも塩ビのパイプを入れることもあります。
これはダクトが通る穴だったり、エアコンの冷媒管を通すためだったり、換気口を取り付けるために、予めコンクリートに穴を空けておく必要があるからです。ダクトが通るルート、エアコンの位置、換気口の位置は設計図で決められているので、正確な位置を測ってスリーブを入れてから、コンクリートを打設します。
ミスが多いスリーブ入れ
このスリーブ入れは結構手間がかかる仕事で、大小さまざまなスリーブがあり、位置もバラバラなので神経を使います。ちょっとした図面の記載ミスで位置がずれてしまったり、スリーブを入れることを忘れてしまうこともあります。また正確な位置に入れていたにも関わらず、コンクリートを打設する時にコンクリートの重みでスリーブが外れてしまうこともあります。
そのためコンクリート打設が終わり、型枠を外したら正確な位置に入っているかチェックを行います。そして何カ所かは「ずれてる」とか「入ってない」なんてことが発覚します。梁に入れたスリーブがズレていたら大騒ぎになるのですが、構造体ではない雑壁に入れたスリーブがズレていた場合にはコア抜きという作業を行います。コア抜きはコンクリートに穴を空ける工事です。
間違ったスリーブ+コア抜きの穴
当初のスリーブの位置を間違えてしまい、新たにコア抜きで穴を空けると、以下の図のような形になってしまうことがあります。
このような形になってしまったものを、私達は「雪だるま」と言っていました。中間検査で工事現場をお邪魔した時に、「午前中だけでコア抜きの雪だるまが3体も見つかったよ。ここの現場、大丈夫か?」なんて会話を仲間内でしていたものです。しかし上記のようにスリーブは間違えることもあり、雑壁であれば構造上の影響がないので、良くはありませんが数が少なければ問題視しません。梁に雪だるまがあると、工事を止めるほどの大問題なんですけどね。
許し難い「ミッキーマウス」
まれに以下のような状態のミッキーマウスを見つけることがあります。
スリーブの位置は間違えやすいですし、コンクリート打設の際にズレることもあります。しかしなんでコア抜きでも位置を間違えた? 墨出し して正確に位置を出すのは難しくないはずなのに、コア抜きまで間違えるのはありえないでしょう!しかしこういう事が起こることもあるのです。一度だけ下図のようなミッキーマウスを見つけたこともあります。
なんで耳が小さいの?スリーブの直径も位置も間違えて、コア抜きも間違えたって、もうわざとやってるでしょう!と叫びたくなりました。 ゼネコン の方は全力で謝罪と弁解をしていましたが、ちょっと考えられないミスです。雑壁でなければ、大問題になっていたと思います。いえ、雑壁でも問題ですけどね。
コア抜きには注意が必要
コンクリートを打設した後に穴を空けるコア抜きでは、鉄筋を切ってしまうことがあります。そのためRCレーダーやレントゲンで鉄筋の位置を探し、鉄筋を切らないようにする必要があります。構造に関係ない鉄筋を切ってしまった場合は、構造設計に相談して指示を仰ぐ必要があります。梁や柱、構造壁のコア抜きは、構造体を欠損させることになるので、特に慎重な判断が必要になります。
ザ・パークハウスグラン南青山高樹町の問題
2013年12月、マンションの口コミサイトを発端とし、ザ・パークハウスグラン南青山高木というマンションで、700カ所以上もスリーブの間違いが発覚し、コア抜きを行っていたことがわかりました。このマンションは事業主が三菱地所レジデンス、設計監理が三菱地所設計、施工が鹿島建設という日本の一流どころが揃っていたため、このような単純なミスが起こったことに驚きました。
具体的にどこのスリーブが入っておらずコア抜きしたかは不明ですが、梁などもコア抜きをやっていたと言われていて、構造上の大きな問題に発展しました。そのため、最終的に鹿島建設が費用を負担して建てなおすことになりました。この問題は、別の機会に詳しく説明したいと思います。
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まとめ
リフォームなどの際に、コンクリートの地肌が見えるようになると、まれに雪だるまやミッキーマウスを見つけることがあります。これらは、どの部位に存在するか、どのように処理がされているかで問題なのかどうかが変わってきます。見つけて不安になった方はご連絡ください。竣工図と照らし合わせて構造体を傷つけているか否か、処理はきちんとされているかを判断します。