「殺して埋めとけ」建設現場で飛び交う物騒な言葉

建築用語というのは独特で、普通の人が聞くと物騒な言葉が普段から飛び交っています。例えば職人の「監督、これどうしますか?」という質問に「殺して埋めといて」なんて回答が返ってくることがあります。知らない人が聞いたら殺人事件の現場のようですが、配管の処理を巡る会話だったりするのです。今回は、そんな建設現場で飛び交う物騒な言葉についてです。

生きてる・死んでる

人や生き物の生死を言っているわけではありません。電線なら電気が流れているものを「生きてる」、電線が流れていないものを「死んでる」と言います。排水管なら水が流れるものが「生きてる」で、水が流れないように処置されていたり、詰まっているものを「死んでいる」と言います。つまり「生かす」というのは「使う、利用する」という意味で「殺す」は「使わない、止めてしまう」といった意味です。

そのため改修工事などでは配線を見て「右の方は生かして、左は殺して」という指示が飛んだりします。職人から監督に「どれを生かして殺すのか、決めてください」という質問が来たりしますし、それに対して「全部殺して」と大虐殺のような指示が出てたりします。

埋め殺し

上記の「生きてる・死んでる」に関連する言葉ですが、「埋め殺し」というのは撤去せずにそのまま土やコンクリートで埋めてしまうことを言います。地中梁の型枠などは、本来は外して撤去するべきですが、敷地の関係でどうしても取れない時などにそのまま土を埋めてしまうことがあります。そんな時に「埋め殺し」の指示が出ます。

地中梁の工事際に仮設の電気ケーブルなどがコンクリートで固められてしまい、「殺して埋めとけ」と指示があったりします。これは「電気が流れないように処置して、そのまま土に埋めてしまえ」という意味ですが、知らない人が聞くと殺人事件が発生しているのかと思われそうです。

はめ殺し

「はめ殺し」という言葉もあります。設置したまま稼働しないものを表し、主に窓で使われます。「はめ」は漢字で「嵌め」で、嵌め込みなどと同じ意味です。「殺し」は上記の「生きてる・死んでる」に通じていて、動かせないことを意味しています。例えば動かすことができない窓は「はめ殺し窓」と呼ばれます。しかし近年では Fix窓 (ふぃっくすまど)と言うことが増えました。殺すという言葉が、あまり適当ではないと言われるようになったからです。fixは「固定する」を意味する言葉で、どちらも同じ意味になります。

イジメ

「イジメ」も建設現場では横行しています。2つの部材を繋ぐときに、うまく入らず繋げないとします。その時に無理矢理押し込んでしまうことを「イジメる」と言います。また片方の部材の穴を大きくしたり切断することでつなぐことも「イジメ」と言います。「下の方をイジメて」「メスの方をイジメて」などという言葉が現場内で飛び交っています。

他には「仮設置き場を少しイジメて、駐車スペースにしましょう」と言ったら、仮設置き場を少し狭くしようという意味です。「イジメ」は結構幅広く使われていて、いろいろな場面で出てきます。

狂う・暴れる

建設現場では、「狂う」と「暴れる」では「暴れる」方が重傷です。木材などが乾燥や湿度によって曲がるのを「狂う」と言いますが、木材が「暴れている」と言ったら、激しく曲がって工事には使えないイメージです。狂う程度ならすぐに修正できますが、暴れていると簡単には修正できません。他にも「目地が暴れている」と言ったら、まっすぐのはずの目地がグニャグニャになっていて、やり直さないとダメなイメージがあります。

まとめ

この他、「盗み」「逃げ」「遊び」などなど、普通に使われている言葉が建設現場では異なった意味を持つことが多いので、初めての人には何を話しているのかわからないことが多くあります。現場の職人には荒っぽい人も多く、そういう人が「そっちは殺して埋めとけ!」と大きな声で叫んでいたりするので、なんだか物騒なことをやっているように聞こえがちです。

一般の方が何気ない職人の会話にビックリすることがあるので、リフォーム業者なでは、現場教育をしているところも増えました。これらの言葉を建築の職人が言っていても、人殺しが行われているわけではないので、ご安心ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です